司馬遼太郎『故郷忘じがたく候(こきょうぼうじがたくそうろう)』あらすじと要約!

 

今回紹介する一冊は、

司馬 遼太郎

『故郷忘じがたく候(こきょうぼうじがたくそうろう)』

です。

 

「故郷忘じがたく候」、

「斬殺」、

「胡桃に酒」という3編を

収録した短編集です。

 

司馬遼太郎と言えば、

もはや幾多の説明を必要としない

歴史小説家、随筆家ですね。

 

「竜馬がゆく」「坂の上の雲」などは、

今の50~60代の方に聞くと

バイブル的な存在になっている

ことも多いですね。

ソフトバンクの孫さんも

「竜馬がゆく」に大きな影響を

受けたと言っていますし、

何より今のアイドル的な竜馬像は

「竜馬がゆく」で形作られました。

 

そんな影響ある大作を作る

司馬遼太郎『故郷忘じがたく候』

 

馴染みのない地名や、

人名は確かに読むのに根気がいります。

が、私が思うに今の時代に

あてはめて考えると、

結構面白くなってきます。

それでは、紹介していきましょう。

 

 

 

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司馬遼太郎『故郷忘じがたく候』故郷忘じがたく候

 

 

十六世紀末、朝鮮の役で薩摩軍により日本へ拉致された数十人の朝鮮の民があった。 以来四百年、やみがたい望郷の念を抱きながら異国薩摩の地に生き続けた子孫たちの痛哭の詩「故郷忘じがたく候」他、 明治初年に少数で奥州に遠征した官軍の悲惨な結末を描く「斬殺」、細川ガラシャの薄幸の生涯「胡桃に酒」を収録。

 

 

まず感じるのは、

司馬遼太郎氏のタイトルのセンス。

これが私は好きですね。

今回の3作もそうですが、

『酔って候』『果心居士の幻術』

などなど、

日本語の妙というか、

リズムというか、

言葉選びが秀逸だと思っています。

 

そしてこの短編集の表題にも

なっている「故郷忘じがたく候」

 

司馬遼太郎のエッセイ的な話です。

朝鮮出兵の際日本へ連行された

朝鮮人陶工が話の主題であり、

どことなく今の日韓関係を

考えてしまうようなお話でした。

 

なぜ朝鮮人陶工が連行された

のかと言えば、

当時鹿児島の島津軍は、

優秀な工人を探していたというのです。

陶器を作る専門家ですね。

それだけで連れてこられては

たまったものではありませんが。。

 

彼らが日本に来て住み着いたのは、

鹿児島の苗代川という場所。

この場所は、彼らの故郷である

全羅北道南原城に

似ていたからです。

 

この集落で、最も名高い陶工である

沈寿官という代々続く名家

がありました。

第14代沈寿官に、

私は話を聞くことになります。

 

第14代ともなると、

朝鮮人というよりも

日本人として生きているのが長いですが、

自らのルーツはやはり朝鮮です。

 

だからこそ、200年の時が流れても

「故郷忘じがたく候」なのです。

第14代沈寿官が、

故郷の韓国に招かれ、

大学で講演した時の話が印象的です。

 

当時も今も韓国は、

日本の帝政時代の恨みつらみを

語ります。

「あなた方が36年(日本の圧政時代)を言うなら、私は370年を言わねばならない」

 

朝鮮の血と、薩摩の血。

多くの伝統をその体に

飲み込んでいる第14代沈寿官。

 

司馬遼太郎は、

その戦争での経験から中国人、

韓国人に親近感を持っていた

といいます。

 

だからこそ、司馬にとっては

第14代沈寿官がその体に

多くの歴史を宿らせていること

を感じたのでしょう。

 

 

 

 

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司馬遼太郎『故郷忘じがたく候』斬殺

 

次に「斬殺」。

 

この話の主要人物である

世良修蔵という人物に

私は共感せざるを得ませんでした。

彼は34歳の長州人、

今の山口県の人間です。

 

時は明治元年。

新政府はまだ佐幕の色濃い

東北地方を新政府側に組み込み、

更に会津藩を討とうと目論んでいました。

そこで派遣されたのが、

3人の公家と、2人の参謀。

 

参謀の内の一人が世良修蔵でした。

彼は、会津藩を討つという目的

を果たすため、

仙台藩の協力を得ようとします。

しかし、大政奉還の報も

十分に届いていない仙台藩は、

世良に非協力的でした。

 

世良は、新政府の勅使的な

立場であるため、

仙台藩藩主に対して

非常に高圧的でした。

世良参謀、殿様に対し侮辱の言容ありと、

仙台藩全体から恨みの念を

買ってしまいます。

 

更には、世良が手紙で

「仙台藩は弱腰だ」と記していたのが、

仙台藩上層部に伝わって

しまったのでした。

しかし、世良には想像力がありません。

政治力もない。

想像力に欠け、

自分の目的遂行のために

他の人間をコマのように使う。

 

それでも、働き者ではありました。

結局、仙台藩だけでなく

東北各藩の恨みを買うようになり、

「斬殺」をされるのでした。

 

こんな明治初期の話から、

私は現代社会を投影して

見てしまいました。

クライアントと下請けに挟まれて、

必死に働く会社員。

クライアントの命を果たそうと、

死ぬ気で働き、

下請けには高圧的な態度で

無理な要求を次々と出していく。

下請けには恨みを買い、

クライアントにも愛想を

つかされてしまい、身を亡ぼす。

 

令和2年の今でさえ、

「斬殺」されている人は

多いのではないでしょうか。

 

 

 

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司馬遼太郎『故郷忘じがたく候』読みづらさを超えて本質を見よ

 

久しぶりに、

小説を読むのに

いちいち地名の読み方を調べたり、

その周辺の歴史の流れを

調べたりしてしまいました。

 

そうでもしないと、

中々分かりづらい点が多かった

のも事実です。

他レビューを見ても、

多くの人がどこかで

挫折しているようでした。

 

しかし、上述の「斬殺」のように、

どこか共感の出来る箇所が

ちりばめられています。

それが本質であると思います。

 

「故郷忘じがたく候」には

今の日韓関係、在日問題を

考えるような表現も多く出てきます。

 

「胡桃に酒」は、

薄幸の生涯を送った細川ガラシャの人生が。

 

こういう点で、

司馬遼太郎の作品は年代を超えて

愛されているのでしょう。

この短編の中で、

どれか一つでも自分の気に入ったもの

を見つけて欲しいですね。

私は上記に紹介した2作品が

刺さりました。

 

皆さんはどれになるか?是非ご一読を。

 

 

 

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