猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』本のあらすじと書評!総力戦研究所が算出した敗戦とは

 

本日ご紹介する一冊は、

猪瀬 直樹(いのせ なおき)

『昭和16年夏の敗戦』

です。

 

著者の猪瀬直樹氏は、

石原都政の際は副都知事、

その後は都知事として

オリンピック誘致に成功した姿

は多くの人の印象に

残っているところでは

ないでしょうか。

 

しかし作家としての猪瀬氏を

知っている方はそう多くは

ないかもしれません。

 

87年の『ミカドの肖像』で

大宅壮一ノンフィクション賞受賞、

そして96年出版の

『日本国の研究』で

文芸春秋読者賞を獲得

している

ノンフィクション作家です。

 

今回紹介する

『昭和16年夏の敗戦』

1983年に単行本が出版され、

今年2020年に

新版も出されています。

 

現在総裁選出馬の話も出ている

石破茂氏も本作を良本だとして、

この本を参考に安部首相に対し

質問を迫ったことが

あったそうですよ。

 

新版の巻末には、

猪瀬氏と石破氏の対談も

含まれています。

 

そもそも、昭和16年夏の敗戦とは

どういうことなのか?

それでは内容を

紹介していきます。

 

 

 

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猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』 総力戦研究所により算出された昭和16年夏の敗戦

 

 

日米開戦前夜。平均年齢三十三歳、全国各地から集められた若手エリート集団が出した結論は「日本必敗」。それでも日本が開戦へと突き進んだのはなぜか。客観的な分析を無視して無謀な戦争に突入したプロセスを描き、日本的組織の構造的欠陥を暴く。
石破茂氏との対談、新版あとがきを収録。

 

 

第二次世界大戦は

1945年に終焉を迎え、

日本は敗戦国となります。

 

しかし、1945年は昭和20年。

それでは、昭和16年の敗戦とは?

 

昭和16年は1941年。

この年、シミュレーション、

すなわち机上の実践で

対米戦争は敗北を喫すると

算出がされたのです。

 

ではこのシミュレーションは

誰によってなされたのか。

 

それは、総力戦研究所という、

当時30代くらいの若手官僚、

日銀出身者、

海軍陸軍出身者などで

構成された機関に

よるものでした。

 

各出身機関から、

さまざまな客観的数字を

持ってくることが出来たので、

その分正確に戦局を予測すること

が出来たそうです。

 

そもそも、この総力戦研究所

という機関は何のために

作られたのかと言うと、

 

読んで字のごとく総力戦を

研究するために

組織された内閣直属の組織でした。

 

日本が突入せんとしていた

第二次世界大戦は、

今までの戦争と大きく異なります。

 

例えば、直近の大規模な日清、

日露戦争。

これも総力戦と言うまでに

はいかず、

日本国民は通常通りの生活

を送っていたようで、

「今中国大陸で戦争をしているんだな」

くらいの感覚でいたそうです。

 

しかし、来る戦争は経済力、

外交力、情報力、資源力

そして国民力全てを

巻き込んだ国の総合力が

問われる戦争だと

時の内閣に位置づけられて

いたのです。

 

その様々な項目を鑑み、

戦争となった場合の日本の行方を

分析するのが、

総力戦研究所というわけです。

 

そしてその答えは、
タイトルにもあるように

1941年夏、敗戦と出たのです。

 

 

 

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猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』 戦争はなぜ起こったのか?

 

総力戦研究所は、

対米戦争となった場合の

シミュレーションの結果を

東条英機陸軍相(後の首相)など

にも見てもらうのですが、

結果は一蹴。

 

「机上の空論」

「データだけで結果は

分からない」

と判断されてしまうのです。

 

しかし、数値を見る限り

日本に石油が足りなくなり

戦争遂行継続が不可能

になってしまうのは

火を見るよりも明らかでした。

 

戦争をすれば日本は負ける、

と考えていたのが

政府関係者レベル

ではほとんどだったでしょう。

 

それでも、

戦争は始まってしまった。

なぜか?

 

敢えて言うのであれば、

責任の所在があいまいで

会ったこと。

 

当時は文民統制がない時代。

 

軍隊が勝手に動こうと

思えば動けます。

 

たとえ内閣や政府が

戦争反対の立場であっても、

当時権限の強い軍隊が

戦争遂行に傾けば、

「空気」

は戦争開始に

向かっていきます。

 

軍隊も空気に従い、

内閣政府も空気に従った。

 

これでは責任の所在など

あろうはずもありませんね。

 

空気に支配されるというのは、

半世紀以上たった今の日本でも

全く変わらない現象と

言えるでしょう。

 

 

 

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猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』 エピローグ、あとがきから読むのも〇

 

日本組織の構造的欠陥を

描いた本作ですが、

コロナの問題など

予期せぬ問題に対応する時の

日本政府の対応が、

 

もしや昭和16年と

変わっていないのでは

ないかと思わせる場面が

多々出てくるので、

ただの歴史書ではなく

面白かったですね。

 

ただ、戦時中の日本の情勢に

疎いと読んでいてきついかも

しれません。

 

馴染みのない役職名や人名が

序盤からかなり多く

出てくるので、

ある程度の歴史的知識は

必要になってくるかと

思います。

 

まとめ的な役割をしている

「あとがき」あたりから

読むのも吉ですね。

 

終戦の月 8月。

この時期になると、

一冊は当時の事を

思い起こすような本を

読みたくなるものですが、

 

当時を知ることで

現世の問題を再思考できる

本作は、

毎年の一冊に加えても

いいのかもしれません。

 

 

 

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