【感想】鈴木るりか『私を月に連れてって』本のあらすじ「現役高校生作家」(小学館)

 

今回ご紹介する一冊は、

鈴木るりか

『私を月に連れてって』

です。

 

鈴木るりかさんは

2003年生まれの現役高校生です。

 

彼女はもともと家の近くにある

図書館に通っていて

本を読むことが当たり前で

小さい頃から絵本などを観ながら

物語を考えていたそうです。

 

小学4年生のときに応募した作品が

審査員の石田衣良などの小説を

書き続けてほしいという高い評価があり

『さよなら、田中さん』

『14歳、明日の時間割』

『太陽はひとりぼっち』等の小説を

執筆しています。

 

彼女の作品の登場人物は

私の近くにもいそうで

飾りのない日常が描かれているような

感じがして本を読みながらつい

「そうだよね」などと口にしてしまうくらい

身近な存在のことが描かれている

ように感じて、

ついつい彼女の世界に

ハマってしまいそうになります。

 

はじめこの本を手にしたときに

『私を月に連れてって』なんて

恋愛小説なのかと思ったけど

いい意味で違ったことに

なにか新しさを感じたので、

きっと同じように感じてもらえる

はずです。

 

鈴木るりか『私を月に連れてって』が

こちらからすぐに読めますよ♪↓


鈴木るりか『私を月に連れてって』 遠くへ行きたい

 

現役女子高生作家が紡ぐ、鮮やかな人間賛歌。

★遠くへ行きたい
田中花実は、中学2年生になった。前作『太陽はひとりぼっち』からのバディ、佐知子とは相変わらず仲良し。ある日、二人は少女と出会う。よかれと思って少女のために行動した二人だが、思わぬところから、深い社会問題に踏み込んでしまう結果に。笑いあり、涙あり、生きることへの肯定感を滲ませる「るりかワールド」はより広がり、深みを増す。
★私を月に連れてって
デビュー作『さよなら、田中さん』、前作『太陽はひとりぼっち』でも、常に名脇役として登場する2階の住人・賢人が主役の物語。相変わらずむさ苦しく、世捨て人となっている賢人がある日突然恋に落ちる。そのお相手とは……?そして、その恋が、彼の生活、人格すべてを変えていく。賢人が見つけた鮮烈な「恋」の行方は……?
★夜を越えて
今作の『遠くへ行きたい』を受けて誕生した作品。授業の一環、職場体験で出会った「ぶーさん」。彼女は、花実のお母さん・真千子の昔を知る人物だった。実の娘の花実にすら一切を語らない、真千子の壮絶な過去の一端が紐解かれる。そこで描かれる真千子の少女時代。そして、その時代から続く熱い想い、絆に心が震える一編。

 

「遠くへ行きたい」と

私もそう思うし誰もが一度は

考えることです。

 

特に中学生の頃はそんなことを考えて

友人と話をしたことがあります。

 

養成所に入って漫才師になろうとか、

弟子入りして落語家になろうとかも

考えて口にする中学生は

私の頃にもいました。

 

私はどちらかといえば女優になって

東京に出たいという夢をみた人なので

なんだか共感しちゃいます。

 

佐和子の

「孤独はいいけど、孤独感はたまらない。心がさみしさを感じると自分ではどうにもできない」

「私はじっとしていて寂しさをやり過ごしている。下手に動くとますます孤独感が強くなる」

 

などの言葉に共感します。

 

けれど、人間は悲しいかな

バタバタしてしまい大勢の中にいても

孤独感を感じるものなのだと

反省してしまう私がいます。

 

学校から帰って母に

「どこか遠くに行きたいと思ったことはない?」

と尋ねると

彼女は「漂泊の心」(松尾芭蕉)を

思い浮かべて

娘に「ヒョウハクといっても白くするのではないよ」

と訂正するところに粋な面白さ

があります。

 

人の夢と書いて「儚い」(はかない)と読む、

それはまるで豊臣秀吉の「夢のまた夢」

と同じような切なさを感じます。

 

 

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鈴木るりか『私を月に連れてって』 私を月に連れて行って

 

「無為徒食」は何もせずに

ただいたずらに飯を食うことを言います。

 

賢人は有名高校を中退して

実家のアパートの1室でオーナーとして

暮らしていました。

 

彼はまさに母たちの手を借りながら

「無為徒食」をしている人なのです。

 

ある日、図書館でクレームをつける人を

見ながら自分はそんな寂しい

独居老人になりたくないと思いながらも

生活を変えることなく

暮らしていたのです。

 

そんな賢人は昔から

人が普通にやっていることを

しっかりとできない人間で

なぜか失敗する自信も持っていました。

 

そんな彼は世間が夏休みのある日に

文代と出会います。

 

彼女は北町小学校の先生に会いに来たと知ると

アパートの住人につい最近まで

小学校に通っていたので

彼のことを知っているかもしれない

と話を聞きに行きます。

 

結局、彼女は会う目的の人を

遠くから見るだけでしたが、

賢人という人間を変えるのに

十分な人だったのです。

 

彼女の「私を連れて行って」の言葉に

連れていく約束をし、

その前に彼女の生まれ故郷の大分に

連れていくことを約束します。

 

まずスマホを持っていない賢人は

バイトをしてスマホを購入し、

高校認定試験も受けて大学に行き、

いつか結婚するというまでに

変わっていくのです。

 

どんな人もなにかきっかけがあれば

変われるのだと実感し、

なんだか元気をもらえたような

気がします。

 

 

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鈴木るりか『私を月に連れてって』 夜を超えて

 

「人は会うべき時に会うべき人と出会っている」

は一期一会にも似ている感じがします。

 

小学6年生の頃祖母に育てられていた彼女が

マチに出会ったのは小児外科病棟でした。

彼女は腸閉塞で入院していたのです。

 

マチは難しい病気で、家庭環境も複雑で

退院したら施設に預けられることが

決まっていたのです。

 

そんな2人は相部屋になり

いろんな話をするうちに仲良くなります。

 

マチとは違うけれど、

彼女の両親は離婚して母は出て行ってしまい、

今は彼女の祖母に育てられています。

 

彼女の祖母は大きな病気もせずに

来たのもあり、

病院はあまり好きではありませんでした。

 

でも彼女の入院中に元気をつけてもらおうと

唐揚げを持ってきては食べさせようとする

ところに祖母なりの愛情を感じます。

 

彼女はしばらく消化のいいものを

摂るように言われていたので

唐揚げは食べられなかったけれど

マチに食べてもらっていました。

 

マチのその嬉しそうに食べる姿を

見ていると

なにかしら彼女は幸せな気持ち

になっていたのです。

 

「誰も過去から完全に逃れることはできない」

「夜を超えて、朝日が昇るとまっさらな1日、

陽の光のなか跪いた私は赦しを知る」

 

の言葉にどこまでも重みを感じて

自分はまだまだ甘えた生活をしている

と思い知ってしまいます。

 

 

 

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