【あらすじと感想】『吹上奇譚 第三話ざしきわらし』吉本ばななのおすすめ新刊

 

今回ご紹介する一冊は、

吉本ばなな

『吹上奇譚(ふきあげきたん)

第三話 ざしきわらし』

です。

 

実は私は、一話・二話を

読まずにいきなり

三話から突入したのですが、

やはり少しは前の知識を

頭に入れておいた方が

良いかと思いますので、

 

すべて読んでいる方には

ただのおさらいになってしまうかも

しれませんが、

まずは一話・二話の

主な内容をご紹介いたします。

 

2017年10月に第一話が発売になり、

2019年1月に第二話、

そして2020年10月に

待望の第三話が発売されました。

 

おおよそ1年に1話のペースで

世に出され、

5話で完結の予定という

長期スパンに渡り楽しみ続けられる

作品となっています。

 

舞台となっている吹上町は、

主人公・ミミと双子の妹・こだちの故郷

であり、

昔、異世界と通じていて、

死んだ人の体を異世界に送って

家畜のように使役していたらしく、

今のその名残で町の外れを

屍人が徘徊していることがある

という何とも奇妙な町です。

 

第一話では、

ミミとこだちの母親が

交通事故で寝たきりになり、

こだちはその看病に行くと

いって行方不明になってしまいます。

 

ミミはその妹を探し出すため

吹上町の「虹の家」を訪れ、

そこでかなり個性的なメンバーに出会い、

物語が展開していくというお話

でした。

 

続いて第二話は、

行方不明になっていたこだちは

無事に戻ってきて、

寝たきりだった母も目を覚まし、

一緒に暮らすようになります。

 

平穏な日々かと思いきや

同じアパートに住んでいる

除霊師の美鈴、

そしてその恋人の墓守くんとの

出会いがまたさらに

波乱万丈なストーリーへと

巻き込まれていくのです。

 

そして、今作の第三話。

 

著者自信「哲学ホラー」と称する

この物語の三話目をご紹介していきます。

 

 

 

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吉本ばなな『吹上奇譚 第三話 ざしきわらし』 ざしきわらしというタイトル

 

 

生きていてほしい。それだけでいい。
人智を超えた世界の理がしみじみと胸をうつ、大好評の傑作哲学ホラー。

吹上町に夏が来て、引きこもりの美鈴がミミのもとを訪れた。
「部屋の中に子どもの霊がいるんだ。いつも夜になると出てくる」
生も死も、過去も未来も溶け合う吹上町に、新たな風が巻き起こるーー。

吹上町の住人紹介
ミミ 夢見と屍人使いの才能を持つ。双子の姉
こだち 怪力の人気服飾デザイナー。双子の妹
墓守くん 町の墓守兼フラワーアーティスト
美鈴 墓守くんの彼女。腕利きの霊媒師
まなび ミミとこだちの母。異世界人

この町には「少し違う」形の人がたまに混じっている。

 

墓守くんの恋人であり、

除霊師の美鈴が、

突然ミミを訪れにミミの家に

来るところから物語は始まります。

 

「今、わしの部屋の中に子どもの霊のような
ものがいるんだ。いつも夜になると出てくる。姿は見えない。小さい子だから、黒美鈴ではない。あと、わしをいつも見守ってくれている。」

 

プロの除霊師である美鈴は

このざしきわらしのような存在を

自分が妊娠をしていることを

知らせてくれている霊だと思い込み、

 

念願の妊娠に喜ぶものの、

ある夜生理が来て妊娠ではないという

現実を知ってしまいます。

 

プロの除霊師さえも欺く、

この子どもの霊のようなものは

一体何なのでしょうか。

 

タイトルの通り、

ざしきわらしなのでしょうか。

 

 

 

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吉本ばなな『吹上奇譚 第三話 ざしきわらし』 私たちも幽霊なのか?

 

ある日、美鈴に誘われ、

ミミはざしきわらしが

住んでいるという美鈴のお部屋

にいくことになります。

 

霊感なんてまったくなかった

ミミなのですが、

美鈴の部屋では何かしらの存在感や

何者かが立てる音を

感じてしまうのです。

 

「ほんとうは幽霊も明け方にも部屋にいるなにかも、生も死も、過去も
未来も、あらゆる可能性がいっしょに存在しているのがこの世なんだと思う。一度この視点を持ってしまったら、もう元には戻れない。いつもあらゆる
ものの存在を空間に感じながら生きていくことになる。」

 

哲学的な悟りに近い美鈴のこの言葉は、

読んでいる私さえも

今生きている時間や空間が本当に

存在しているものなのかなどと

急に考えさせられる深いスト―リー

に発展していくのです。

 

 

 

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吉本ばなな『吹上奇譚 第三話 ざしきわらし』 エレメンタル

 

エレメンタルというのは、

人がものに対して特殊な思い入れ

を強く持つとそのものに魂が宿り、

命のようなものを

持つようになるという

概念のことだそうです。

 

美鈴の家に住んでいる

ざしきわらしは、

美鈴の思い入れ故の

エレメンタルなのではないか、

ミミはそう考えるように

なっていくのです。

 

このざしきわらしのような存在は、

ミミだけでなく、

読者である私たちに、

子どもの存在についてや

親と子の在り方、

そして親と子のきずななどについて

深く考えるきっかけを与えてくれます。

 

加えて、身近にいてすぐに

会えることの大切さ、

いつも心の中にいて思い出として

残ってくれている

存在のかけがえのなさなども

教えてくれるのです。

 

 

 

 

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