北森鴻『凶笑面』蓮丈那智フィールドファイル「民俗学×ミステリ」はおすすめシリーズ!

「花の下」「春」「死」の言葉を本のタイトルに推理小説家が用いた本を見ると、

推理小説が好きな人は誰でも、どんな事件が起きるのか思わず手に取ってみたくなります。

そんな気になる言葉を使う作家「北村 鴻(きたもり こう)」氏は1961年に山口県で生まれました。

1995年に「狂乱廿四考」でデビュー、

「花の下で春死なむ」で日本推理作家協会賞を受賞しています。

著書に凶笑面を含む「蓮丈那智フィールドファイル」シリーズ、

「旗師 冬狐堂」シリーズ、「香菜里屋」シリーズなどがあります。

しかし北森氏は2010年1月心不全によりこの世を去りました。

もっともっとたくさんの作品を読みたかったと惜しむファンも少なくはないでしょう。

現在も死を惜しむとともに北森氏の作品はファンに愛されています。

 

今回は、北森鴻氏の『凶笑面(きょうしょうめん)』をご紹介します。

 

 

 

 

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「凶笑面(きょうしょうめん)」あらすじ

 

 

 

《異端の民俗学者》蓮丈那智。彼女の研究室に一通の調査依頼が届いた。ある寒村で死者が相次いでいるという。それも禍々しい笑いを浮かべた木造りの「面」を、村人が手に入れてから――(表題作)。暗き伝承は時を超えて甦り、封じられた怨念は新たな供物を求めて浮遊する……。那智の端正な顔立ちが妖しさを増す時、怪事件の全貌が明らかになる。本邦初、民俗学ミステリー。全五編。

 

 

「凶笑面」は蓮丈那智フィールドファイルシーズの1冊目になります。

大学助教授(作品が発表された当時。現在は準教授と名称が変更されました)

で民俗学者の蓮丈那智と助手の内藤三國がフィールドワーク中に事件に遭遇、

巻き込まれていきます。

「民族学」と「ミステリー」見事に融合した作品になっています。

本には「鬼封会(きふうえ)」「凶笑面(きょうしょうめん)」

「不帰屋(かえらずのや)」「双死神(そうししん)」「邪宗仏(じゃしゅうぶつ)」

の5作品が収められています。

主人公の蓮丈那智は今でいう「クールビューティ」でプラス「中性的」「妥協を許さない言動」

民族学界では異端児と評されています。

反面城主の内藤三國は少し頼りなくてコンプレックスをもつ青年に描かれています。

那智がホームズならば三國はワトスンといったところでしょうか。

物語は民俗学に関しての知識が幅広く紹介されて民族学にも興味が湧いてきます。

さらには事件が起こり那智の鮮やかな推理に驚きます。

ふたりのキャラや関係性にも注目してしまいます。

 

 

 

 

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「民族学」×「ミステリー」ふたつの謎

 

作品の中の「鬼封会」は学生が送ってきた「修二会」のビデオに

興味を惹かれた那智が三國を伴ってフィールドワークに出かけます。

そこでビデオを送ってきた学生が殺されたと警察から連絡が入ります。

「修二会」「鬼」「鬼封会」をポイントに那智が三國と共に、

民俗学的謎も解きながら事件の解明に迫ります。

表題作の「凶笑面」は悪徳商売をしていると噂されている「安久津圭吾」から

那智に手紙と資料が届きます。

そこには見る人が不快感を持つような「凶笑之面」の写真も同封されていました。

興味を持った那智は三國とともに長野県を訪れます。

そこで相変わらず不快感を与える安久津と対面します。

しかし後日安久津はビー玉が巻き散らかされた中で遺体で発見され、

「異人」「面」をポイントに那智が民俗学、事件の両方の謎を解き明かしていきます。

 

 

 

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助手は飛び立てず、そして学者のキレのある仮説と推理

 

その他にも「不帰屋」では「女の家」「嫁ごろし」「人身御供」「家」

をポイントに、殺人のトリックが謎ときされています。

「双死神」では三國が思い切って那智の手のひらから飛び立とうと

行動を起こしますが、殺人事件に巻き込まれてしまいます。

やはり三國の力ではどうにもならず那智に助けを求めることに。

「だいだらぼっち」「古代製鉄」の仮説を証明していきながら、

那智が鮮やかに謎を解明します。

三國が那智から羽ばたけるのはまだまだ先のようですね。

「邪宗仏」は「聖徳太子はイエス・キリストだったんだ」という那智の言葉から

物語は展開。

やはり殺人事件に巻き込まれてしまい「イエス・キリスト」と「仏像」

というように、一見結びつかない言葉を民俗学的にも仮説を展開しながら、

事件も解き明かしていきます。

蓮丈那智フィールドファイルシリーズはミステリーも民俗学的興味も

同時に満たしてくれます。

冬狐堂、香菜里屋を知る人には「お?」という楽しい展開も垣間見られて

思わずニンマリしてしまいます。

この本やシリーズを読んで、民俗学とミステリーのふたつを

楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

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