今回ご紹介する一冊は、
松村 涼哉(まつむら りょうや)著
『15歳のテロリスト』
です。
『15歳のテロリスト』は
新宿駅に爆弾を仕掛けたと
実名を名乗って
宣言した15歳の少年と、
少年犯罪を専門に
記事の執筆を行なっている
記者を巡る物語です。
この小説は2019年に
制定された少年法に関する
法改正をもとに書かれており、
著者の松村涼哉さんの
少年犯罪に関する思いが
とても伝わってくる小説でした。
ページ数がそこまで多くなく、
非常に読みやすい文章
だったにもかかわらず、
この『15歳のテロリスト』が
世の中に訴えている内容は
非常に濃いものなので、
ぜひ読んでいただきたい
小説になります。
それでは、少年犯罪を
テーマにした数少ない
小説である
『15歳のテロリスト』
の書評をしていきます。
目次
松村涼哉『15歳のテロリスト』 少年犯罪の被害者家族、加害者家族の辛さを知ることができる
なぜ少年はテロリストになったのか――衝撃と感動が迫りくる慟哭ミステリー
「すべて、吹き飛んでしまえ」
突然の犯行予告のあとに起きた新宿駅爆破事件。容疑者は渡辺篤人。たった15歳の少年の犯行は、世間を震撼させた。
少年犯罪を追う記者・安藤は、渡辺篤人を知っていた。かつて、少年犯罪被害者の会で出会った、孤独な少年。何が、彼を凶行に駆り立てたのか――? 進展しない捜査を傍目に、安藤は、行方を晦ませた少年の足取りを追う。
事件の裏に隠された驚愕の事実に安藤が辿り着いたとき、15歳のテロリストの最後の闘いが始まろうとしていた――。「ページをめくる度、常識が裏切られていく。手を触れたら指が切れてしまうような物凄い小説」――佐野徹夜(『君は月夜に光り輝く』著者)も大絶賛!
心に突き刺さる衝撃と感動――空前の衝撃作『ただ、それだけでよかったんです』で話題を呼んだ松村涼哉が描く、慟哭ミステリーが登場!
この小説は、
少年犯罪によって
家族が殺害された被害者遺族、
身内が少年犯罪を犯して
世間から非難され続けている
加害者家族の感情について
丁寧に描写しています。
そのため、被害者家族、
加害者家族がどの様な状況
に追い込まれるかを
知ることができ、
その状況について
深く考えさせられます。
主人公は、妻が少年の暴力
によって殺害された記者で、
その経験をもとに
少年犯罪専門の記者になった
という過去があります。
その少年犯罪専門の記者に
なって書いた記事によって、
少年院を出所して穏やかに
暮らしていた少年犯罪犯が、
その街で暮らせなくなる様な
記事を書くことをしていました。
そうすることで復讐をしたと
考える一方で、
むなしさを感じている描写があり、
復讐することが本当に
良かったのか悩んでいました。
また、少年犯罪の加害者家族
についても、
その家族が周りから
迫害されることや、
加害者の妹が学校で
いじめられており、
遺族への賠償金で生活が
非常に苦しい現状が
生々しく書かれていました。
犯罪というのは、
被害者加害者にかかわらず、
多くの人を不幸にすることだと、
再認識するとともに、
加害者家族の現状を
読んでいた時は
本当にやるせない気持ち
になりました。
松村涼哉『15歳のテロリスト』 爆破予告の少年の本当の目的とは
この小説では爆破予告をした
少年の本当の目的や
どのような感情で爆破予告を
行ったかを、
記者の主人公や
その周りの人たちが、
暴いていくという物語です。
そこには巨大な陰謀や、
少年犯罪を犯してしまい
人生が狂った人達の負の感情、
メディアの報道などが
複雑に絡み合っていました。
爆破予告をした少年の過去を
探っていくうちに、
どんどん真相に
近づいていくのですが、
その過程で貼られた伏線は
少しわかりやすかった
ので残念でした。
しかし、少年の真の目的が
分かったときは、
とても感動して、
そうするしかなかった少年に
対して
とても残念な感情を抱きました。
つらい家庭環境に育った人に
追い打ちをかけるように
つらい出来事が起こり、
私は何不自由なく生きている
ということに対して、
これは普通の事ではなく
幸せなことなんだと
認識することができました 。
松村涼哉『15歳のテロリスト』 ネット上の声がもたらす影響
この『15歳のテロリスト』では
ネットでの誹謗中傷に対して、
苦しんでいる登場人物が
描かれています。
爆破予告を行った
15歳の高校生は、
逃亡中に凄まじい量の
誹謗中傷を受けると
いうことはまだ理解
できるのですが、
その高校生が通っていた
中学や高校、
暮らしていた施設までも
凄まじい量の誹謗中傷に
さらされており、
その当事者たちが
憔悴しきっている様子の描写
が書かれている内容を
読んでいた時は、
私自身もとても苦しかったです。
メディアのワイドショー
などでも少年が過去過ごしていた
学校や施設などの責任を
一緒になって追及しており、
視聴率のためだけに
人を不幸にしていること
に対しての報道の姿勢が
描写されていた場面では、
少し憤りを感じました。
この誹謗中傷については、
何人かの芸能人の
自殺の原因になった
と言われており、
ネット上の声の怖さを
改めて実感しました。
この誹謗中傷については、
裁判などの訴訟で
SNSで誹謗中傷している人
が罪に問われているなどして、
良い方向に向かっていると
感じています。
しかし、犯罪者などには
容赦なく投げかけられている
誹謗中傷についても、
問題として解決していかなければ、
根本の解決にはならないと
強く感じました。
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