【感想】折原一『傍聴者』あらすじと書評!おすすめ新刊

 

今回ご紹介する一冊は、

折原 一(おりはら いち)

『傍聴者です。

 

本作品で描かれるのはひとつの殺人事件。

でもその裁判を傍聴する人たちによって、

さらにストーリーがつくられていきます。

 

江戸川乱歩賞ノミネート、

日本推理作家協会賞受賞など、

実力にはお墨付きの著者が

6年ぶりに世に送り出す「〇〇者」シリーズ、

とても読み応えのある作品に仕上がっています。


折原一『傍聴者』 ひとつの殺人事件を2つの視点から描いたストーリー

 

彼女は女神か、悪魔か――。〇〇者シリーズ最新作!
複数の交際相手を殺害した牧村花音。彼女の公判の傍聴に通う女性たち。
事件の全貌が見えた時、いつしか「傍聴者」たちが主役になる。

交際相手に金品を貢がせ、練炭自殺に見せかけて殺害した牧村花音。
平凡な容姿の彼女に、なぜ男たちは騙されたのか。
友人を殺されたジャーナリスト・池尻淳之介は、真相を探るべく花音に近づくが……。

彼女の裁判は”花音劇場”と化し、傍聴に通う女性たちは「毒っ子倶楽部」を結成。
花音は果たして、毒婦か? 聖女か?
人気ミステリシリーズ最新刊。

 

ある晩、突然友人から

電話を受けるジャーナリストの主人公。

 

そのときはただふざけて荷電してきたのか

と流していましたが、

実はその電話の直後に友人が

亡くなっていたことを知ります。

 

友人が電話で訴えてきたことを

冗談だと流してしまった罪悪感と、

幸せの絶頂だったはずの友人の突然死

に疑いを持つ気持ち、

そして友人の母親からの懇願に負け、

主人公は友人の死について調べ始めます。

 

もう片方の主人公たち。

それは、友人を殺した犯人の裁判を

「傍聴者」として楽しむ女性4人組。

 

それまで知り合いでもなんでもなく

「この裁判を傍聴している」という

共通点だけで繋がった4人です。

 

ただし彼女たちのうち一人は、

ジャーナリストの手記を

入手できる立場にあり、

さらにもう一人はライターとして

その手記を小説風に書き起こす作業

を担当する、という形で、

彼女たちは実際の裁判とサイドストーリー

としての手記の両方を楽しみます。

 

裁判が進むにつれ、

そして手記を読み進むにつれ、

ちょっとしたほころびが増えていきます。

 

犯人はもう犯人ということが

ほぼ決まっている状態で、

どんな主張をしてくるのか、

どのように追及をかわしてくるのか。

 

そして関係者たちの真実が分かっていくうちに、

いつのまにどんでん返しに

巻き込まれているような形で結末を迎えます。

 

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折原一『傍聴者』 フェイントからの真実

 

殺人事件に限らず、

小説では「主語を意図的に省く」という手法

がよく使われます。

 

主語を書かないことで、

あえて誰の話をしているのか

分かりにくくして読者に勘違いを起こさせ、

真犯人を分かりにくくします。

 

本作品でも途中でこの手法が使われています。

 

主語を書かないことで別の人、

別のシチュエーションだと勘違いさせ

「おっと著者のワナにはまるところだった」

と思わせる。

 

そうするとそこから先は注意深く読むように

なりますが、同時に

「なるほど著者はこういう手法で騙してくるのね」

とちょっと分かった気になってしまいます。

 

ところが読み進めていくと、

実は本当に注意すべきポイントはここじゃない、

ということに気付きます。

 

どんなワナが待ち構えているのかはぜひ、

実際に読んで確認してみてほしいのですが、

その2段構えの秀逸さには

唸らされることと思います。

 

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折原一『傍聴者』 裁判傍聴という楽しみ方

 

裁判員制度という制度が導入されてから、

裁判に興味をもたれる方は増えたように思います。

 

また世間をにぎわせるような怪奇事件も増え、

裁判傍聴が抽選となるような事件が

年に数件は起きています。

 

とはいえ、

「事件と関係のない第三者が裁判を傍聴する」

ということはまだまだ誰もが参加するというには

至らない昨今ですが、

本作品は事件に対して傍聴者という形で関わる、

という道を広く知らしめる作品

になったかな、と思います。

 

事件の概要や裁判の様子を字面だけで

追っていると、

犯人はただの極悪人に見えるし、

被害者はかわいそうな被害者の一面

しか見えてきません。

 

ですが実際に裁判を傍聴してみると、

犯人も人間だったと気付きます。

ふてぶてしい様子を見れば、

きっとこの人が犯人に違いないと感じますし、

 

裁判官や弁護士の質問に誠実かつ真摯に

答えている様子を見れば、

きっとこの人にも何かやむに已まれぬ事情

があったのかもしれない、

なんて思ったりします。

 

本作品では、犯人の女性はふてぶてしく

堂々と法廷に立ちます。

その様子も含めて、

傍聴者の女性4人組は今後の展開を

予想していく形でストーリーが進みます。

 

ただ事件の様子を客観的に聞くのと、

実際に裁判を傍聴するのとでは

受ける印象が全然違う、

ということも本作品を読んで感じていただき、

実際に裁判傍聴に出かけてみるのもまた、

おもしろいと思います。

 

残念ながら、本作品の事件を

傍聴することはできませんが…。

 

 

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