沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』あらすじと感想!映画版も「登場人物全員最低」

 

今回ご紹介するのは、

沼田まほかるさんの

『彼女がその名を知らない鳥たち』

です。

作者の沼田まほかるさんの経歴に

少し触れたいと思います。

 

大阪府の寺に生まれる。

1985年4月より大阪文学学校昼間部に学び、

在籍中には小説作品(40枚)で大阪文学学校賞も受賞した。

若くして結婚し主婦をするが、

堺の母方祖父の跡継ぎを頼まれ、

夫がその住職となる。

その後離婚、得度して自身が僧侶となる。

40代半ばで知人と建設コンサルタント会社を創設するが

10年ほどで倒産する。

50代で初めて書いた長編『九月が永遠に続けば』で

第5回ホラーサスペンス大賞を受賞し、

56歳で遅咲きのデビューを果たす。

デビュー以降も作品を発表し続けるも

書評家には評価されながらヒットにはつながらなかった。

しかし2012年、『ユリゴコロ』で第14回大藪春彦賞を受賞し、

本屋大賞にもノミネートされると

既存の文庫が一気に売れ出し、

『九月が永遠に続けば』の文庫版は

半年で60万部が増刷された。

その他、『彼女がその名を知らない鳥たち』、『猫鳴り』、『アミダサマ』

の文庫計4冊で発行部数は120万部を超える。

湊かなえや真梨幸子らとともに

イヤミス(読んだ後にイヤな後味が残るミステリー)の女王とも呼ばれる。

 

『彼女がその名を知らない鳥たち

ミステリーとなっております。

この記事を執筆するにあたり、

作者の沼田まほかるさんの経歴を調べたところ、

なかなかすごい人生を歩んだ方の作品と知って驚きました。

こういう作品を書けるのも人生経験なんでしょうか。

遅咲きながらも鮮烈な作品を多く執筆されています。

私としては今回の作品は読んでいると

イヤミスと複雑な気分になる作品でした。

 

 

 

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共感度ゼロの最低な女と男

 

 

昔の男を忘れられない十和子と人生をあきらめた中年男・陣治。淋しさから二人は一緒に暮らし始めるが、ある出来事をきっかけに、十和子は陣治が昔の男を殺したのではないかと疑い始める。

 

 

この作品は映画化されたことで

興味を持って読んだのですが、

映画のキャッチコピーが

『共感度ゼロの最低な女と男』

と謳っていました。

読んだ感想としては、

まさに誰にも共感できない最低な女と男の物語でした。

まず、登場人物がとにかく全員最低です。

中心人物の十和子は

陣治の家にヒモのように何もせずに居座っているのに、

陣治に対して強い嫌悪感を抱き、

罵倒して憂さ晴らしをしています。

そしてそのうえで十和子は不倫をします。

それでも昔付き合っていた

黒崎のことがずっと忘れないでいるというのです。

それでいて自分に対しての自尊心が低いことから

誰も幸せになれない。

物語の中心でもある

十和子ですらあまり楽しそうでもなく、

不倫人生を謳歌している風でもないのです。

そのため、十和子がかなりクズだなと最初感じました。

彼女がすべての中心人物的な立ち位置にいて

それに巻き込まれた人間(3人の男)は

幸か不幸か十和子に引き寄せられたような作品です。

最初の水島との出会いも

クレームをしたことで出会う訳ですから。

後半はいいスピード感を持って

読むことができました。

多くの人も感じるように

あまりよくないモヤモヤとした後味が残りました。

 

 

 

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恋愛観が変わる

 

ミステリーという分類に入るのでしょうが、

あまりミステリーという感じがせず、

ラブストーリーの要素が強めに感じました。

十和子の昔の男である黒崎が

行方不明であったと警察によって知らされた十和子は、

黒崎を陣治が殺したと疑います。

その間にも水島という男と不倫をしていました。

現実でもそうそう起きないであろうドロドロの修羅場に

少しだけ現実感からかけ離れた感覚を

読んでいて感じました。

また、人の汚い部分が露わになっている面でも

気持ちが沈む人もいるかもしれません。

私は人間不信になりそうなレベルですごく沈みました。

私は登場人物への感情移入をしやすいタイプなのですが、

この作品を読んでいる間は特に感情移入してしまうことはなく、

どこか他人事のようにドラマを見ている

感覚が近かったかもしれません。

そして、表題の通りに自分の恋愛観が

変わりそうになりました。

人によって異なる本当の恋愛とはなんなのでしょうか。

 

 

 

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不倫 究極の恋愛とは

 

私はこの作品を読んでいて

究極の恋愛とはどういうものかと

考えてしまいました。

十和子は自分の好きなように人生を

歩んでいるように感じますが、

読んでいて自分のことが嫌いで

うちに黒く汚い感情を渦巻かせているように感じました。

他の人物も十和子に歪んだ愛を向けているから

すべての人物に救いがないです。

そういった不倫や嫉妬、依存

どこまでも人間の負の感情

詰め込んだ作品だと思いました。

そしてミステリーということですから、

本当に黒崎を殺したのが陣治なのかは

読んで確認してみてください。

そして究極の恋愛とはなんなのか

皆さまが考えるきっかけになれば幸いです。

現実ではこういった修羅場を

誰しもが味わうわけではないので

ある意味フィクションチックな話で、

究極の恋愛とはどんなものなのか

考えるきっかけになったと思います。

 

 

 

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『彼女がその名を知らない鳥たち』映画版

 

『彼女がその名を知らない鳥たち』

は、映画化されています。

2017年10月28日に劇場公開されました。

女優の蒼井優さん、

阿部サダヲさん主演です。

「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の

白石和彌監督の作品で、

沼田まほかるの世界観を描いていました。

 

 

 

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