久坂部羊『老乱』あらすじと感想!医師作家が描く「認知症」小説

 

「老乱」は、

久坂部羊(くさかべよう)先生が

2016年11月に朝日新聞に出版された作品

となっています。

久坂部羊先生は、大阪大学の医学部を卒業され、

神戸掖済会病院で実際に医師を経験された

医師作家でもあります。

医師勤務をしながら、

2003年には「廃用身」という作品でデビューされ、

2014年には「悪医」で

第三回日本医療小説大賞を受賞されています。

その後、サウジアラビアや、オーストラリアなどでも

医務官として勤務され帰国後は

高齢者の在宅訪問診療に従事されていました。

老乱の他にも在宅医療の実際の現場を描いた作品、

「いつか、あなたも」などもあり、

久坂部先生の小説の中には医療行為や医療知識について

医師でなれば書けない場面も多数出てきます。

 

 

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久坂部羊『老乱』あらすじ

 

老い衰える不安をいだく老人と、介護負担で疲労困憊の家族。介護する側の視点だけでなく、認知症の老人の心の動きをリアルに描き、親と子の幸せを探る。在宅医療を知る医師でもある著者が描く、書評・テレビでも話題になった認知症小説。

 

本作品は、現代の課題でもある認知症

その介護について現実はどのようなものかを

目の当たりにできる作品です。

薬剤メーカー勤務の知之と妻の雅美は

2人の子供と4人で暮らしています。

知之の父、幸造は78歳で妻を4年前に亡くしたため

現在は独居で、

雅美は心の隅でそのことを気にかけています。

ある日、雅美は「認知症男性、列車事故で遺族に責任」

という記事を目にします。

そんな記事を目にした矢先、

幸造は電車のフェンスを乗り越え

線路内に立ち入ってしまい、

止めに入った駅員と揉め事を起こして

警察を呼ばれてしまいます。

雅美が迎えに行くのですが、

幸造はひどく憤慨しており止められるような

雰囲気でなかったというのです。

幸造のいつもと違う雰囲気を感じた雅美は帰宅し、

知之に幸造が認知症になりかけているのではないかと話します。

幸造は、妻が亡くなってからというもの、

自分の身の回りのことは自分でこなし

ボケないようにと努力をしています。

しかし、だんだんと身の回りの家事が

できなくなっていきます。

はじめは日課の朝ごはんのこと忘れて

鍋をこがしてしまったり、

日記をつけていたが漢字が書けなくなったり…

少しずつ、認知症がはじまる様子が描かれていきます。

 

 

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精神保健福祉士からの視点

 

本作品を初めて読んだ時、

すごくリアルだと感じました。

私は精神科に勤務していたので

認知症の患者さんの受診相談から

病棟の担当までしていたので、

認知症患者の方の病的行動や言動などが

こんなに事細かく書かれていることに

驚きを隠せませんでした。

そして「老乱」では、

認知症患者を持つ家族と

その患者の心境をが書かれています。

そのような心境を読んでいて

すごく胸が痛くなる作品です。

認知症患者さんには自身が認知症である

という実感はありません。

なんで、家族が怒ってるのか、

悲しんでいるのかもうわからないのです。

そんな姿をみて家族は辛くなります。

また認知症という老いの病をあまり知らない方にも

読んでいただきたい作品であると感じます。

 

 

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認知症について

 

あなたも、

そしてあなたの親もいつかは老います。

認知症に必ずかかるということはありませんが

やはり知識などは必要であると感じます。

道端で1人座り込んでいる高齢者がいたら、

それは徘徊で迷子になっているのかもしれません。

スーパーや、コンビニなどでお金を払わず

出ていくことがあれば、

お金の使い方を忘れてしまっている

のかもしれません。

ある日、同じ事を何度も聞くようなことがあれば

それは認知症の始まりかもしれません。

認知症かも、と思った時に受診するのは

認知症の診断や診察を行ってくれる

精神科病院ですが精神科へ抵抗のある方も

少なくはありません。

どうか、認知症かもしれないと思った際に

病院へ連れて行けないからと

先延ばしにするのではなく、

近くの地域包括支援センター保健所

連絡をしてみてください。

「老乱」を手にとってくださることで、

認知症への理解が少しでも深まればと

思っています。

 

 

 

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