百田尚樹『カエルの楽園2020』内容と感想!コロナがテーマの寓話「何度もすぐ読みたくなる本」

 

今回ご紹介している一冊は、

百田 尚樹(ひゃくた なおき)

『カエルの楽園2020』です。

 

「今のこの状況下で、小説家として何かできることはないか。

そして、どうせ読んでいただくなら、今この時を描いた作品にしたい。」

 

そう思った著者が、

新型コロナウイルス騒動をテーマに『寓話』

という形で発表した作品です。

元々は、2020年5月6日から11日にかけて、

インターネットで無料公開をするという方法で

世に出されたものなのですが、

それがあっという間に多くの反響を呼び、

出版希望の声も多数あがったことで、

約1か月という短期間で修正や更新を加え、

2020年6月12日に小説として発売される

こととなりました。

このコロナ禍において、

誰もが一度は考えたであろう

「なぜウイルス拡大を防ぐことができなかったのか?」

「日本の感染拡大防止対策は正解だったのか?」

「この問題は今後どのように収束していくのか?」

といった内容について何かしらの答えを

導いてくれる、そんな本です。

「続編は書かない」という自分の中での

決まりがあった著者が、

あえて2016年発売の『カエルの楽園』

という本の続編として、

自らその禁を破ってでも書きたかったこと、

読者に伝えたかったことはなんだったのでしょうか。

前作を読んでいない方でも十分に楽しめるこの作品は、

昨今たくさん発売されている

コロナウイルス関連の本とは明らかに一線を

画したものであり、

百田尚樹の独特な世界観にどっぷり浸れる作品でも

あることは間違いありません。

 

 

 

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百田尚樹『カエルの楽園2020』寓話

 

二匹のアマガエルがたどり着いた夢の楽園は悲劇的な末路を迎えたはずだったが、悪夢から一夜明け、二匹はなぜか再び平和な地にいた。
今度の世界では、ウシガエルの国で「新しい病気」が流行っていたものの、楽園のカエルたちは根拠なき楽観視を続ける。
しかし、やがて楽園でも病気が広がりはじめ……。

国難を前に迷走する政治やメディアの愚かさ、滑稽さを浮き彫りにし、衝撃の三通りの結末を提示する。

『カエルの楽園』の続編として新たに書き下ろしされた寓話小説。
ネット公開時に大きな反響を呼んだ作品に加筆修正を施した完全版。

 

この本は「寓話」という形をとっています。

寓話とは、人間社会の営みを動物や虫を

擬人化して描くことで、

読者の興味を惹き、

また人間関係や物語の構造を簡潔に

理解しやすくするというスタイルです。

言論弾圧を避けるためによく用いられた

このスタイルですが、

著者は、表現の自由が大いに認められている

この時代でもあえてこのスタイル

選んだと言います。

その理由とは・・・。

実はそれは本の「あとがき」を

読むと分かるのですが、

その理由というのが妙に

納得させられてしまうものなのです。

新型コロナウイルスの問題は、

高学歴で知識や教養も豊富な専門家や

コメンテーターが意見を述べているところを

多くのメディアで見たり聞いたり

読んだりしているため、

気が付くと私たちは、

「この人が言っているから正しいのだろう」

「あの人が反対意見を言っているから

間違っているのだろう」

という様々な先入観や固定概念というフィルター

を通して判断していたのかもしれません。

ところがこの本では、高学歴のこの人やあの人が

すべてカエルという生き物なのです。

果たして、ただのカエルが言っている言葉でも

私たちはそのようなフィルターを通して

物事を見てしまうということがあるのでしょうか。

 

 

 

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百田尚樹『カエルの楽園2020』終章Ⅲ

 

この本の最後に書かれている終章Ⅲは、

「グッドエンディング」と題し、

著者自身が荒唐無稽なファンタジーと位置づける物語です。

あとがきには

「この終章は多くの書評家や評論家に叩かれることでしょう。」

とも書かれており、

あくまでも著者の願望や潜在意識は

どこにも存在しないと断りを入れています。

ところが

「そんなでたらめなファンタジーが現実であってほしい」

とこの本を読み終えた多くの読者は

そう感じるのではないでしょうか。

少なくとも私はそうでした。

物語の中のナパージュという国の代表である

プロメテウスが、

すっと頼りなく決断できないリーダーであったのに、

終章Ⅲではまるで別人のように覚醒をし、

次々と一大決心をしていったように、

この日本という国でもそのような覚悟を持った

決断のできる人物が現れ、

自分の利害など関係なく

日本のためそして日本国民のために

必死に頑張り、

このコロナウイルスと上手く付き合っていく

道筋を明確に示してくれる、

そんな理想的な結末を現実でも味わいたいものです。

 

 

 

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読み終わった後すぐに、また読みたくなる理由

 

前述しました通り、

この本は現実をそのままなぞった「寓話」

であるため、

カエルが住む世界や出てくる

それぞれのキャラクター達も

現実に存在する何か、

誰かをなぞっているのです。

例えば、元老会議で居眠りをし、

新しい病気が蔓延している国にも関わらず、

その国の王様をなんとしてでも

自分の国に呼ぶと頑なな

『ツーステップ』という名の元老カエル。

移動の制限を強いられている状況下で、

思うようにエサであるハエを

捕まえられず餓死寸前な状態でも、

「ハエを十匹食べたら一匹をナパージュという

国に差し出さなければならない」

という強引な制度。

そして、常に批判的に物事を見ているが

それは実は的を得たものであり、

誰にでも素直な意見をぶつけるために

周りからは変な奴だと思われている

『ハンドレッド』という名のカエル。

それぞれのカエルの名前を日本語に訳してみると・・・、

十匹に対して一匹の割合

というと・・・。

このように想像をしていくと、

まるで謎が解けていくように

この物語上に存在しているものと、

現実に存在しているものが面白いほど繋がり、

重なっていきます。

個人差もあるかもしれませんが、

それが物語の終盤で分かってくるため、

「もう一度現実と照らし合わせ

ながら読み直したい」

という衝動に駆られ、

その勢いのまま2回目に突入してしまうのです。

 

 

 

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