天祢涼『希望が死んだ夜に』あらすじと感想!印象的な表紙と「貧困」が鍵

 

今回ご紹介する本は、

天祢涼(あまねりょう)

『希望が死んだ夜に』です。

著者の天祢涼(あまねりょう)は、

デビュー作『キョウカンカク』をはじめ、

新興宗教を描いた『もう教祖しかない!』や

空想によって名探偵が呼び出される

『空想探偵と密室メイカー』、

レンタル家族業を題材にした

『探偵ファミリーズ』など多くの本格ミステリーを

輩出する推理作家として活躍しています。

また、『希望が死んだ夜に』

こども貧困が重要なテーマとなっており、

読み終える最後まで、

こども貧困について考えさせられる作品

となっています。

社会問題について考えながらも、

本格的なミステリーを読んでみたい方には

ピッタリの作品となっているので、

ぜひ読んでいただきたいです。

 

 

スポンサーリンク

 

 

ミステリーのカギを握るのは「貧困」

 

「教えてください。彼女を殺したのは誰ですか?」
本屋大賞2019発掘本で話題になった社会派ミステリー!

神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。
少女は犯行を認めたものの、動機は一切語らない。

県警捜査一課の真壁は“半落ち”のままの容疑者に納得がいかず、所轄の生活安全課の女性刑事・中田蛍とともに捜査を続けると、やがて意外な事実が浮かび上がってきた。

ネガは母親の映子と川崎市登戸のボロアパートに暮らしている。
母はあまり働かなくなり、生活保護も断られた。
まわりに頼れる大人や友人がいないネガだったが、あるとき運命的な出会いがあって……。

単行本刊行時からSNSでじわじわと噂が広まり、本屋大賞2019発掘本でも話題となった隠れた傑作が待望の文庫化。
現代社会の暗部を描いた話題作!

 

同級生殺害の容疑で逮捕された

冬野ネガや、

事件の真相を暴こうとする刑事の一人真壁巧など、

主要人物の大半が貧困にかかわっていて、

作品全体を通して「貧困」がキーワードになっています。

ミステリーだから伏線がつながっていって謎が解けていく、

そんな快感を味わえるのはもちろんですが、

貧困という社会問題にも、

とても深くかかわっています。

なので、貧困をあまり経験していない人が、

この社会問題についてしっかり考えるきっかけを

与えてくれる作品だと感じました。

 

 

スポンサーリンク

 

 

変わり者の女性刑事

 

事件解決を目指す刑事の一人に、

変わり者の女性刑事がいます。

その女性刑事は作中でも変わり者だと言われていて、

年齢や性別を気せず、

物怖じしないで意見を言う姿勢も相まって、

周りの刑事からはあまり好ましく思われていません。

しかし、事件解決率が高いという、

まさしく変わり者の人物だと言えます。

また、この女性刑事は特徴的な行動をします。

それは”想像”です。

一般的に、物的証拠を一番重視すべきな、

刑事にあるまじき行動ですが、

このような奇怪な行動が女性刑事の魅力の一つ

とも言えるでしょう。

私は作品を読んでいて、

この女性刑事は、

強い女性でありつつも刑事という職ではなく、

こどもなどの心理的なサポートをする職

とても向いている方だなと

勝手に思ってしまいました。

 

 

スポンサーリンク

 

 

回想で事件前の当時を追体験

 

話の流れとしては、

二人の刑事が証拠を次々に集めていき、

真相に近づいていく、

刑事ドラマのような流れです。

しかし、この作品の面白いところは、

証拠が集まることによって謎が明らかに

なっていくたびに、

容疑者視点で当時の回想が用意されているところです。

読者は事件を刑事と一緒に、

外から明らかにするのでなく、

実際に中に入り込んで、

事件が起きるまでを容疑者と一緒に追体験

することができます。

容疑者がただの極悪非道な人であれば、

当時の回想で追体験したところで、

同情の余地なしとなるのは明らかですが、

今回の容疑者は貧困状態に身を置いている

中学二年生の少女です。

このことが当時の回想をより良いものにしている

理由の一つだと考えられます。

この追体験を通して私は、

少女に対する周りの対応があまりにも

無責任だなと感じました。

しかし、私が実際に周りの人の立場だったら、

同じような対応をしてしまうだろうと予測でき、

貧困で困っているこどもにベストな対応をすること

はとても難しいことだと実感しました。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

読めばわかるこの読後感

 

あらすじからもわかるように、

容疑者の少女は動機を一切語りません。

話が進むにつれて、

真相が明らかになっていってもなお、

動機だけがいつまでたってもわかりません。

また、私は「希望が死んだ夜に」

という言葉に心を持っていかれました。

まだ読んでいない方にもこの読後感を

体験してほしいです。

読後にぐっとのしかかってくるような

タイトル回収が待っていると思います。

「希望が死んだ夜に」という言葉を

しっかり噛み締めてもらいたいです。

ここまで読んでいただいて、

「真相が気になる!」となってしまった

推理小説好きの方は、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

おすすめの記事