小池真理子『異形のものたち(角川文庫)』感想!大人のホラーおすすめ作品

 

今回ご紹介する一冊は、

小池真理子

『異形のものたち』

です。

 

直木賞をを受賞した

『恋』は映画化もされましたし、

ドラマスペシャルにも

なったので

 

著者の小池真理子さんに

恋愛小説家のイメージ

を持たれている方も

多いかと思います。

 

主軸はその流れもありますが

初期にはなかなか

ホラー仕立ての作品も

目立ちます。

 

実はホラーのジャンル

だけではくくれない

様々な要素を含み

読者の想像の翼を

広げておられます。

 

本著はさらには

短編の名手と言われる

小池さんの

久々のホラー短編集です。

 

小池さんと言えば

日常のふとした瞬間に

感じる艶めかしさを

一枚の絵画に収めるごとく

 

作品を書くことで

官能の世界を

現実に留めたいとの

後書きを読んだこと

があります。

 

小池さんのいうところの

官能絵画が確かに

存在していますので

その片鱗だけでも

お伝えできたらと

紹介させていただきます。

 

 

 

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小池真理子『異形のものたち』 あらすじ

 

甘く冷たい恐怖と戦慄――大人のための幻想怪奇小説集。

母の遺品整理のため実家に戻った邦彦は農道で般若の面をつけた女とすれ違う――(「面」)。“この世のものではないもの”はいつも隣り合わせでそこにいる。甘美な恐怖が心奥をくすぐる6篇の幻想怪奇小説。

 

「面」

主人公は

両親の不仲な姿が

記憶にあります。

 

幼いころ母親に

行ってはならない

と言われた場所に

今立っていて

 

そういえばなぜ

そんなことを

言われたのだろうかと

考えて恐怖する。

 

「森の奥の家」

思春期にとても

仲良くしてもらった親子

との懐かしい記憶

をたどるお話。

 

「日陰歯科医院」

少し臆病な主人公が

見つけた歯科で

不遇な家庭の

気配を感じるお話。

 

「ゾフィーの手袋」

夫の死後夫への執念を

至るところで目にし

恐怖するお話。

 

「山荘奇譚」

よく語られるところの

恐怖体験のお話です。

 

「緋色の窓」

姉を気遣って

家にしばらくお手伝いで

行ったところ

隣の家の怪しげな雰囲気

にのまれるお話。

 

 

 

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小池真理子『異形のものたち』 感想とお勧めポイント

 

「面」

和服に般若の面

率直に

「怖い思いをするから」

と理由を言わない母親

 

恐怖を演出する小道具

としては十分です。

 

先に書きましたが

小道具たちが重なって

官能を醸し出している

気がするのです。

 

「森の奥の家」

主人公も言っていますが

怖いというよりも

懐かしい感情の方が

先立ってしまう。

 

実際あまりにも

愛しすぎて

いきなり死別してしまったら

誰もがそういう気持ち

になるのではないか

と思うのです。

 

「日陰歯科医院」

何も害がない系の

悲しいお話です。

 

異形の者たちは

存在することで

何を訴えたいのか

と考えました。

 

救いがない難しい恋愛

の結果ですが

ここにも官能が見えました。

 

「ゾフィーの手袋」

読んですぐに設定が

全く違うのに

小池さんがかなり前に

書いた「妻の女友達」

を思い出しました。

 

この作品に

登場する主人は誠実な方で

清廉潔白なところが

違いますが、

 

魅力ある人はこんなにも

異形のものでさえも

惹きつけてやまないのか

と思うと罪だなとも

思うのです。

 

実は異形のものを

まるで信じていない私ですが

人の思いというものは

存在がなくなってもあっても

おかしくないものだ

と思います。

 

「山荘奇譚」

本当の偶然から

女将の話を聞くことに

なるのですが

話を聞くまでの過程が

なんとも

なまめかしいのです。

 

特に話す必要もなかったのに

うっかりというか

話さずにはいられなかった

のだろうなと思うのです。

 

そして衝撃のラストですが

だからどうしたで

終わってしまうのは

本当にもったいなかったです。

 

小池さんには珍しく

余韻がないお話でした。

 

「緋色の窓」

本著中一推しの作品です。

状況描写が何より素晴らしいのと

茜色とせず緋色とすることで

官能の世界を

作品に留めていると

感じました。

 

ただの印象ですが

どちらも鮮やかな赤色を

表すのですが

緋色とする方が

よりなまめかしく

激情を秘めている気

がするのです。

 

お妾さんという立場も

また様々なシーンで

それを想像させるからだ

と理解します。

 

この名称も小池さんの

小道具の一つかと思うと

憎らしい演出です。

 

主人公が目にしてしまった

緋色の窓

主人公だからこそ

そう見えたのだとも

思いました。

 

どうか同じ目線で

鮮やかな緋色を

目にしてほしいです。

 

 

 

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小池真理子『異形のものたち』 あとがき

 

やはり小池さんの

ホラー的な作品は

いいなと思いました。

 

怖いだけでは終わらない

後々残る

ふとした時に鮮やかに蘇る

 

そんなイメージがあります。

そして何度も何度も

触れてみたくなる。

完全に中毒です。

 

 

 

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