小野不由美『ゴーストハント1 旧校舎怪談 (角川文庫)』リライト小説文庫化【あらすじと感想】

 

今回ご紹介する一冊は、

小野不由美

『ゴーストハント1 旧校舎怪談』

です。

 

まず怖い話を一つ。

今からわずか三十年ほど前こと。

 

当時の人たちは、

スマフォはおろか携帯電話さえ

持たずに暮らしていたのです……なんてね。

 

それはともかく、三十年前と言うと、

パソコンはMS-DOSの時代、

スマフォどころかインターネットさえ

まだ黎明期でした。

 

今回ご紹介する

『ゴーストハント1 旧校舎怪談』

が刊行されたのが、

1989年と言いますから、

およそ三十年前のこと。

 

いくらリライトを経ているとは言え、

スマフォもネットもなかった頃に

書かれた高校生たちの話が、

違和感もなく、

今も現役で通じるすごさを感じますね。

 

 

 

 

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小野不由美『ゴーストハント1 旧校舎怪談』ラブコメ?

 

リライトされた単行本がついに文庫化。シリーズ全7巻、刊行スタート。

主人公・麻衣(まい)の高校にある旧校舎には、取り壊そうとすると祟りがある、夜になると窓に幽霊の姿が浮かぶなど、怪奇な噂が絶えない。だがその原因と言えば、地縛霊や戦災にあった浮かばれぬ霊の仕業説、霊などいないと断言する者など諸説あり……。果たして旧校舎には悪霊が巣食っているのか? それとも単なる根も葉もない噂? ある日、麻衣はひょんなことから、校長から旧校舎の調査依頼を受けたという、心霊現象の調査研究所・渋谷サイキックリサーチ(SPR)の仕事を手伝うことに。なんとその所長は、とんでもなく偉そうな自信家の17歳の美少年、渋谷一也(しぶやかずや:通称ナル)。ナルと麻衣が出会い、個性的な霊能者たちが登場する、大人気ミステリ&ホラーシリーズ第1弾。

 

物語の語り手・麻衣が通う高校には

半壊状態のまま放置されている、

不気味な旧校舎があった。

 

旧校舎には取り壊そうとすると

祟るという噂があるのだと言う。

 

事実、前の年に行われた取り壊し工事は、

死傷者を出した事故のために

中断されていた。

 

噂を聞いた翌朝、

旧校舎をのぞきに行った麻衣は

トラブルを起こしてしまう。

 

工事を再開するため、

学校当局は調査を心霊現象の調査会社

・渋谷サイキックリサーチ(SPR)に

依頼していたのだが、

 

麻衣はその機材を壊しただけでなく、

助手に怪我をさせてしまったのだ。

 

SPRの所長である傲慢な

美少年・渋谷一也は

怪我をした助手の代理を務めるよう、

麻衣に強要してくる。

 

機材の賠償金なんか払えない麻衣は

渋々それを受け、一也にこき使われながら、

傲慢不遜な彼にナルシストのナルちゃん

などとあだ名を付けて

憂さを晴らすのだが……。

 

容姿・学力・体力など特に飛び抜けた

ところのなさそうな、フツーの女のコが、

超絶美形にしてドSの男子に、

弱みを握られるなりして、

彼にこき使われる羽目に陥ってしまう――。

 

お話はこんな具合に始まるのですが、

これはもうホラーでもミステリでもない、

誰が見たってラブコメの王道です。

 

しかし、どうして、

こうもみんなSの異性に

罵倒されるのが好きなのかなあ。

 

みんながみんな、

ザッヘル・マゾッホの遺伝子を

受け継いでるわけでもなかろうに。

 

この辺実にラノベっぽいんですが、

本作が書かれた当時はまだラノベ

いう言葉さえなかったって言う。

 

 

 

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小野不由美『ゴーストハント1 旧校舎怪談』ホラーミステリ

 

調査を開始するナルと麻衣だが、

学校側が問題解決を依頼したのは、

しかしSPRだけではなかった。

 

ケバい巫女さんと高野山を

追い出された(?)ぼーさん、

オーストラリアから来た、

変な関西弁を話す美少年エクソシスト。

日本人形めいた美少女は有名な霊媒だった。

 

更に麻衣のクラスメートの

自称霊感少女までが押しかけてくる。

 

けれどこれだけの陣容を持ってしても、

旧校舎の祟りは手強い。

 

霊媒少女も、ナルの機材も

霊を捕えることができず、

巫女さんらの除霊は逆に事態を

悪化させるしかできない。

 

この事態にナルは、

旧校舎で起きたことは全て物理現象で、

霊の仕業ではないと断言するのだが――。

 

一口にホラーと言ってもタイプは

いろいろありますが、

王道はやはり恐怖の対象が

はっきりしていて、

名前を持っているタイプ。

 

怨霊・亡霊・悪霊から始まって、

悪魔や魔女、吸血鬼や狼男のような人外、

それからゾンビに旧支配者といった

とんでもない存在がもたらす恐怖を

描くわけです。

 

いちばんわかりやすくてストレート、

かつ視覚的。

 

単にホラーというとこういうタイプを

連想する方が多いんじゃないでしょうか。

 

けれどホラーにはもう一つの柱があって、

それがホラーミステリ

 

こちらの恐怖は得体が知れない。

謎めいた凶事が出来して、

その正体を探る過程を

ミステリ的な手法で描くタイプ。

 

何でもありの王道タイプと違い、

推理ができるように、

こちらのタイプは超自然現象にも

最低限の法則性や合理性の箍(たが)が

はまっています。

 

『ゴーストハント1 旧校舎怪談』

まさにこのホラーミステリ。

 

基本科学的なアプローチを

するナルはもちろん、

霊能者たちも合理的な推論を積み重ねて、

祟りの正体に迫ろうとします。

 

この辺、純粋なホラーファンより、

横溝正史的なミステリが好きな

ミステリ好きにむしろアピールする

かも知れません。

 

 

 

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小野不由美『ゴーストハント1 旧校舎怪談』シリーズ一作目

 

ホラーミステリというお話の

性格を考えても、

描かれる祟りや怪現象は少しおとなしい

超心理学や心霊科学の用語で記述できる、

抑制の効いたもので、

 

だからこそ謎解きが成立するんですが、

もっと王道ホラーっぽい展開を

期待する向きは当てが

外れるかも知れません。

 

だからといって怖くないわけでも、

つまらないわけでもありません。

 

得体の知れないもの特有の

ジトッとした恐怖が、

キャラの濃すぎる霊能者たちが演じる

ドタバタやナルの傲慢に

突っ込みを入れまくる、

麻衣の明るい言動の裏に

張り付いてるわけで。

 

ちなみに霊能者たちもシリーズの

レギュラーらしく、

あと六作残ってるのが楽しみです。

 

 

 

 

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