今回ご紹介する一冊は、
大木 毅(おおき たけし)著
『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』
です。
数ある新書の中で
遂に独ソ戦について
書かれている本が本書になります。
著者はドイツ戦史で
数多くの本を出されている、
大木毅さんです。
その他の著書では
『「砂漠のキツネ」ロンメル』
(角川新書,2019)、
『ドイツ軍事史』
(作品社,2016)
などがあります。
第二次世界大戦の
ドイツを知るためには
欠かせないと思います。
本書は第二次世界大戦下で
ドイツとソ連の戦いは
どういうものだったのか
一から説明している本です。
実はこれまで日本では
独ソ戦について
通読できるような本は
専門書を除く、
一般向けの本は
あまりありませんでした。
独ソ戦の中での一点の出来事、
例えばホロコーストで有名な
『アンネの日記』など
しかなかったのです。
しかし、本書は独ソ戦を
学問としての戦史・軍事史
の成果を踏まえ
提示した本となっています。
目次
大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 独ソ戦とは
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。日本人の想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、この戦いが顕現させた生き地獄を見過ごすことになるだろう。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。
みなさんは独ソ戦とは
どういった戦いだったのか
ご存知でしょうか。
日本から遠く離れた
ヨーロッパの話ですから、
小学校や中学校でも
事実のみで
“ドイツがソ連を侵略しようとした”
としかご存知ないかも
しれません。
他のイメージとしては
『アンネの日記』や
“ユダヤ人の迫害”、
ホロコースト、ヒトラー
というイメージかも
しれません。
ですが、
日本にとっては
他人事ではないのです。
当時、日本は
ドイツ、イタリアと
三国同盟を結んでおり、
第二次世界大戦が
始まった際には
ドイツと同じ枢軸国側として
太平洋戦争を始めたのですから。
1941年6月22日ドイツは
独ソ不可侵条約を破って
ソ連に侵攻を始めました。
それから1945年まで
続きました。
第二次世界大戦の中では、
西欧の視点から
「東部戦線」と呼ばれる
ドイツとソ連の
戦闘のことを指します。
大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 最新の歴史的資料の上に
本書ではまずどうして
ドイツはソ連を攻めるに
至ったのか、
そしてどのような理由で
ユダヤ人は迫害されたのか、
そして戦場では
どのような作戦がなされ、
ドイツまたはソ連本国の
作戦本部では戦場で
起こった結果を
どのように受け取り、
次の作戦を実行するに
至ったのか、
詳細な歴史的事実の資料を
つぶさに調べ記載されています。
ドイツとソ連の戦いは
日本人が思っている前述に
上げたようなものだけでは
ないことがよく分かる
と思います。
近年の新たに発見された
資料に基づく事実として
多くの参考文献が
載せられております。
その中には英語で
書かれたものやドイツ語で
書かれたものもありますが、
これらを集約したものが
日本語の本として
出版されているということ
はとても素晴らしく、
とてつもない苦労の上に
書かれた本であると
思いました。
また、写真と地図を
載せることで
どういった作戦だったのか、
文頭で説明されるだけでなく
地図を用いて説明も
されているので
非常に分かりやすいです。
私も読みながら
何度も地図を見直したので
とても助かりました。
大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』 独ソ戦=絶滅戦争?
私が本書を手に取った時、
帯に
「呉座勇一氏推薦 戦場ではない地獄だ」
(呉座勇一氏は『応仁の乱』(中公新書)の著者)
と大きな字で
書かれていました。
はじめはなんと
大仰な謳い文句だろうと
思い読み始めましたが、
実に正しい謳い文句だと
読んでから実感しました。
確かに戦争とは人が
たくさん死ぬという点と
学校で学んだ“よくないこと”だ
というイメージはありました。
ですが、ドイツの行ったユダヤ人、
スラブ人(中欧・東欧人)は
劣等民族である
という考えから、
絶滅戦争へと発展し、
東部戦線は泥沼と化したと
感じました。
その泥沼状態がまさに
血で血を洗う地獄である
と思いました。
まず初めにヒトラーは
ドイツが第一次世界大戦で
負った経済状況の困窮を、
ドイツ国内にいる
流浪の民族であるユダヤ人に
敵意を向けることによって
ドイツ国民を束ね、
ソ連や他国をも劣等民族
だとして侵略をはじめたのです。
またドイツ側の奇襲攻撃である
バルバロッサ作戦において
双方に大勢の死者を出したこと
から憎しみによる徹底的な殺戮を
生んだと読んでいて感じました。
この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓