イェジーコシンスキ『ペインティッド・バード』本の内容あらすじと感想!映画は退場者続出

 

今回ご紹介する一冊は、

イェジーコシンスキ

『ペインティッド・バード

(東欧の想像力)』

です。

 

ヴァーツラフ・マルホウル監督の

映画『異端の鳥 / ペインティッド・バード』

がようやく公開されました。

 

完成までに十一年を要した、

三時間近い大作で、

ヴェネツィア国際映画祭で上映された際には、

あまりに凄惨な内容に

大勢の退場者を出したと伝えられています。

 

マルホウル監督はチェコの人ですが、

映画の舞台は東ヨーロッパのどこかと

曖昧にされていて、

言葉さえ汎スラブ語とでも

言うべき人工語が使われているそうです。

 

これは悲劇を〝あそこで起きた〟

ことではなく

〝ここでも起きえた〟

〝今でも起きうる〟出来事とするため、

物語を閉ざさないためでしょう。

 

もっとも今回ご紹介する、

映画の原作ペインティッド・バード』

舞台はポーランドの片田舎と

はっきり規定されています。

 

作者であるポーランド出身の

亡命者イェジー・コシンスキ氏が

目指したものは、

映画のような、普遍的な寓話ではなく、

いわば「自伝」だったのですから、

それは当然なことと言えるかも

知れません。

 

ただ、この「自伝」というレッテルは、

その後、「インチキ」という評価

をぶら下げて、

作家の元に舞い戻り、

後にはシャロン・テート事件

まで登場する、

彼のスキャンダルまみれの

後半生の口火を切ることになります。

 

けれども作者のことは

ここまでにしましょう。

まずは物語です。

 

 

 

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イェジーコシンスキ『ペインティッド・バード』 黒い瞳の少年

イェジー コシンスキ (著), Jerzy Kosinski (原著), 西 成彦 (翻訳)

 

第二次大戦下、親元から疎開させられた6歳の男の子が、東欧の僻地をさまよう。ユダヤ人あるいはジプシーと見なされた少年が、その身で受け、またその目で見た、苛酷な暴力、非情な虐待、グロテスクな性的倒錯の数々―。

 

 

最初に一つだけ言っておくと、

物語の主人公であり、

語り手である〝ぼく〟は

ユダヤ人ではありません。

 

少年はオリーブ色の肌に

黒髪と黒い瞳のせいで、

ジプシー(原文まま)か

ユダヤ人に見えただけです。

 

コシンスキ氏自身はユダヤ人の

両親を持っていますから、

これは文学的な仕掛けでしょう。

 

ユダヤ人に見えるというだけで、

災厄に見舞われる少年という設定は、

人集差別という行為が本質的に

帯びている理不尽さを際立たせます。

 

先に両親の云々の微妙な

書き方をしたように、

ユダヤ人のアイデンティティ問題は、

今日でもイスラエル国家が

頭を悩ませるほどの、

錯綜した問題です。

 

それを強引に人種と解釈すること

によってナチスの弾圧は

開始されたわけで、

ここはそのばかばかしさを

考えるべきなのかも知れません。

 

 

 

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イェジーコシンスキ『ペインティッド・バード』 ポルノグラフィ

 

戦争の災禍を逃れる、

それが最上に手段だと

信じた両親によって

〝ぼく〟はただ一人、

へんぴな田舎町に

疎開させられることになります。

 

混乱の中で両親との連絡は途絶え、

さらに里親に死なれてしまった

〝ぼく〟は、

無知と貧困が支配する戦乱の地で

4年に渡って地獄巡りをすることなる

 

――これが『ペインティッド・バード』

の大まかな筋です。

 

 

〝ぼく〟が見ることになる暴力は

凄惨なものです。

 

たとえば村の男たちの

性欲の処理場になっていた、

知的障害の女性が女たちによって

嬲り殺しにされる場面や、

ぼくが残忍な大工を飢えたネズミで

いっぱいの穴に落として、

食い殺させるシーン。

 

ただ現在ではどこか見慣れたような

シーンであることは否めません。

 

巻末に置かれた解題で

訳者の西成彦氏はこれを

ポルノグラフィと呼んでいます。

 

本来ホロコーストの災禍を

告発するためだった表現が、

ホラー映画の見せ場と変わりがなくなり、

同じように消費されてしまう。

 

そうした状況下に於いて、

読者はポルノグラフィの共犯者の

立場に否応なく追い込まれてしまいます。

 

ここで読者がどう抗えるか、

あるいは抗う必要があるのかは、

『ペインティッド・バード』

を読む人が、

心のどこかに置いておいていい

問いかも知れません。

 

 

 

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イェジーコシンスキ『ペインティッド・バード』 異端の鳥

 

『ペインティッド・バード』

の原著は

アメリカに亡命した

コシンスキ氏によって、

英語で発表された小説です。

 

ですから

『ペインティッド・バード』

原題(The Painted Bird)

そのままなわけです。

 

けれど映画の邦題も最初は

『ペインティッド・バード』

使っていたようですが、

途中から『異端の鳥』に変わった。

 

なぜかと言えば、

やはりこちらの方が

秀逸だからでしょう。

 

『異端の鳥』

1972年に角川書店から、

青木日出夫氏の訳で刊行されたとき

のタイトルです。

 

タイトルが変更された理由は

分かりませんが、

版権的な問題でもあるんでしょう。

残念な気がします。

 

この作品には『異端の鳥』という語の、

不穏な響きがふさわしい気

がしますから。

 

学生だった頃、

内容を全く知らないまま、

タイトルだけを聞いた時に覚えた、

身体の芯が震えるような感覚を

ただ忘れていないという、

個人的な理由かも知れませんが。

 

 

イェジー コシンスキ (著), Jerzy Kosinski (原著), 西 成彦 (翻訳)

 

 

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