八木沢里志『純喫茶トルンカ』あらすじと感想!心温まる素敵な喫茶店

 

今回ご紹介する一冊は、

八木沢 里志(やぎさわ さとし)

『純喫茶トルンカ』です。

 

著者「八木沢里志」は

代表作ともいえる

『森崎書店の日々』で

2008年に東京千代田区が

主催する

「第3回千代田文学賞」を受賞

しています。

 

本の街、

神田神保町を舞台にされた

この小説は、

ひとりの女の子の成長が描かれ、

2010年には

映画化もされていて、

2011年には

『続・森崎書店の日々』を

発表しています。

 

今回紹介する

『純喫茶トルンカ』

2013年に発表された作品です。

 

著者は「神田伯剌西爾」という

喫茶店に訪れ、

珈琲を嗜んでいるようです。

 

とても趣のある喫茶店で

思わず『純喫茶トルンカ』

の店内はこのような感じなのかな。

と思いを馳せてしまいます。

 

2015年には

『純喫茶トルンカ』の続編

『しあわせのかおり:純喫茶トルンカ』

も発表されています。

 

気になる方は是非お手に

とってみては

いかがでしょうか。

 

 

 

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八木沢里志『純喫茶トルンカ』 人は誰でも心に何かしら問題を抱えて生きている

 

「純喫茶トルンカ」は美味しいコーヒーが自慢のレトロな喫茶店。
東京の下町にひっそり佇む店には、魔法にかけられたようなゆっくりとした時間が流れ、高校生の看板娘・立花雫の元気な声が響く。
ある日バイトの修一と雫が店に出ていると、女性客が来店。突然「あなたと前世で恋人同士だったんです」と修一に語りだし……。
孤独や悲しみを抱えた人々の心がやわらかくドリップされていく……。

 

 

『純喫茶トルンカ』

谷中にある喫茶店。

この喫茶店を舞台に

物語は語られます。

 

寡黙で強面で、

でも絶品の珈琲で

もてなしてくれる

トルンカのマスター、

 

マスターの娘で

人懐っこい雫、

店員で大学生の修一、

そして常連の人々。

 

トルンカは素敵な雰囲気を

醸し出しています。

 

一話目は

「日曜日のバレリーナ」

大学生の店員、

修一のお話です。

 

二話目はとある初老の男性

のお話で「再会の街」。

 

三話目はマスターの娘、

雫のお話で「恋の雫」。

 

この三つのお話が

おさめられています。

 

どのお話も派手さは

ないけれど、

どれも人の優しさや切なさ、

悲しさ、寂しさ、

誰でも心の中に

「傷」を抱えていること

がわかります。

 

初老の男性は

以前この街である女性と知り合い、

別れ、病気になり

この街を再訪します。

 

そしてトルンカの

常連の女性と関わっていきます。

 

マスターの娘、

雫も心に傷があり

その傷の内容がとても重いもの

として現れます。

 

悲しいくらい切ない

雫の恋のお話です。

 

しかし決して悲しさ、

切なさだけでは

終わることはなく物語は進みます。

 

ここに八木沢里志の

優しい世界観が

『純喫茶トルンカ』

の中にも存在しています。

 

 

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八木沢里志『純喫茶トルンカ』 人に優しくできるのは、自分も心に傷を持っているから

 

この『純喫茶トルンカ』

優しくて、温かくて、

心地よい本だと思いました。

 

人は誰でも心に多かれ少なかれ

自分や家族の問題を

抱えています。

 

その内容は誰にも

言えないことかも知れないし、

死ぬまで心にしまい込んで

しまおうと思っていること

かもしれません。

 

しかし何かの拍子で

その問題が表に出てしまった時、

人はどのような行動を

とるのでしょうか。

 

トルンカはマスターや雫、

常連をはじめ、

決して出しゃばったりは

しないけれどいつでも優しく、

温かい心で気にかけて

いてくれます。

 

それはマスターも、

マスターの娘、

雫も常連たちも

何かしら心に傷や問題を

抱えているからだと思いました。

 

切なくて、悲しくて、

寂しい「心」を

抱えているからこそ

自分以外の人に

優しく接することができる

のではないかと思いました。

 

著者はそんな傷を抱える人々

を静かに丁寧に描いています。

 

「日曜日のバレリーナ」の

「シルヴィー」には

出てくるたびに

クスリと笑わせて

もらいました。

 

修一は

『あなたと前世は恋人だったのです』

 

と言われます。

 

突然、初対面の人に

言われたら

あなたならどうしますか?

 

 

 

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八木沢里志『純喫茶トルンカ』 珈琲のおいしさは心の傷を乗り越えてきた証

 

「再会とは、人生における一番身近な奇跡である」

 

二話目の初老の男性

のお話の中に出てくる言葉です。

 

二話目はまさにこの言葉が

生きてくる内容となっています。

 

人は失敗や後悔をすることも

一度や二度あるでしょう。

 

この初老の男性も

そんな思いを抱えながら

トルンカを訪れます。

 

切なく悲しく、

男性の孤独さがひしひしと

伝わってきますが

 

この言葉や男性と

関わる常連の女性、

変わらぬマスターの佇まい、

言葉には出さないけれど

温かく見守る常連たち。

 

この様々な思いと

人々のおかげで

男性は前向きに

なっていきます。

 

物語の中のことなのに

読後感はどこかホッと優しく

温かなものに

心が包まれています。

 

こんな居心地のよい喫茶店

が存在していたら

いいのになぁと

思ってしまいます。

 

谷中の街にたたずむ

純喫茶トルンカの扉を

カランと開ければ、

 

琥珀色のランタンに

迎えられて寡黙で強面な

マスターが入れる珈琲

が待っている。

 

そこは素敵な人々が集う喫茶店。

 

珈琲が飲みたくなって

しまうこと

間違いなしの

『純喫茶トルンカ』

ぜひ堪能してみては

いかがでしょうか。

 

 

 

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