私が大好きな作家である有栖川有栖さん。
いわゆる「フーダニット」の作品が多くて、
ザ・推理小説!という感じがして落ち着くのですよ~。
有栖川さんの小説は定期的に読みたくなってしまいます。
その有栖川有栖さんの人気シリーズには
『学生アリスシリーズ(江神二郎シリーズ)』と
『作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)』があります。
『学生アリスシリーズ(江神二郎シリーズ)』というのは、
主人公である推理作家を目指す有栖川有栖(ありすがわありす)が
大学生の設定です。
京都にある英都大学の「英都大学推理小説研究会(EMC)」
の部長・江神二郎(えがみじろう)が探偵役なのですが、
この江神さん、カッコいいのです( *´艸`)
アリスをさておき、江神ファンの女性もいるくらいですからね。
今回ご紹介するのは、
『学生アリスシリーズ』の第3弾
「双頭の悪魔」です。
有栖川さんの代表作でもあって、学生シリーズでは最高傑作!
との呼び声が高いです。
『学生アリスシリーズ』の
第1弾『月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)』
第2弾『孤島パズル (創元推理文庫)』
上記の作品を未読でしたら、先にそちらを読んでから読むと
より一層楽しめること間違いなしです♪
目次
有栖川有栖『双頭の悪魔』あらすじ
四国山中に孤立する芸術家の村へ行ったまま戻らないマリア。英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図るが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された江神・マリアと、望月・織田・アリス――双方が殺人事件に巻き込まれ、各各の真相究明が始まる。読者への挑戦が三度添えられた、犯人当ての限界に挑む大作。
有栖川有栖たち「英都大学推理小説研究会」のメンバーは、
推理研究会メンバーの一人・マリアの父である有馬竜三に
このような依頼を受けます。
「皆さんに、娘を連れ戻してほしいのです」
マリアがクセが強い個性あふれる芸術家たちが集まる村
「木更村」に行ったきり、戻ってこないと言います。
マリアの居場所は突き止めましたが、
たまに連絡が取れるだけで帰ってくる気配がなく要領を得ません。
何かあったのでは!?と心配する推理研究会メンバーたち。
よし!マリアを連れ戻しに行くぞ!ということで出発です。
大学生の青春と大阪弁がいい!
大学生ですから、ところどころに「青春だな~」と
いう会話や描写が出てきて、若いっていいなぁなんて思っちゃうんです。
「運転変わるよ」とか一緒にごはん食べたりとか。
作者である有栖川有栖さんが生まれも育ちも現在のお住まいも
大阪ということで、関西を舞台にした作品が多く、
会話が大阪弁なんですよね。
雰囲気が人懐こくて、ほのぼのします(*^^*)
二つの事件が別々の場所で起こる・・・事件を並行して追う!?
無事、四国の村についた一行。
しかーし!!来ましたーーーー!
クローズドサークル
「木更村」と「夏森村」という二つの村に分かれているのですが
大雨による濁流で村をつなぐ橋が崩壊します。
なぜか大体大雨が降るお約束の展開(笑)
しかもただのクローズドサークルではありません。
二重のクローズドサークルです。
このとき、メンバーも離れ離れになってしまいます。
「木更村」には、部長の江神二郎&マリア
「夏森村」には、アリス、望月、織田
なんて面白い展開なんでしょう~
この作品のユニークなポイントです。
あ、もちろん電話も不通です。鉄板です(笑)
そして、案の定
「木更村」と「夏森村」の両方の村で殺人事件が起きます。
場面ごとに切り替えながら、両方の村を追う形になっています。
この「木更村」は変人の芸術家たちが集まる
山深いところに存在する排他的な村なんです・・・
怪しすぎるでしょ?
登場人物は「画家」であったり「音楽家」であったり「詩人」であったりと
まあ色んなジャンルの方がいます。
この住人たちも、なかなか一筋縄ではいかない連中です。
木更村の観光資源に目をつけた住人の一人が、鎖国状態であった
木更村のレジャーランド化を目論み、
それに他の住人たちが難色を示すという住人内部でも対立があるようです。
読者への挑戦状!受けて立つ!
この作品には、読者への挑戦が3つも挿入されています。
その1:「木更村」で起きた事件の犯人を求めよ
その2:「夏森村」で起きた事件の犯人を求めよ
その3:事件の全貌にまつわる・・・(おっと秘密)
我こそはという推理マニアの方は、
ぜひとも挑戦してみてください!
え?私??
残念ながら一つも解けませんでしたが何か?
両チームそれぞれ知恵を絞って解決!
「木更村」の部長の江神二郎&マリアチームは、
もちろん部長の江神さんの論理的な謎解きによる
天才的な探偵ぶりにより、犯人を特定していきます。
もはや、美しすぎる・・・芸術作品のようです。
一方、こちらは問題です。
「夏森村」には、アリス、望月、織田チーム。
探偵役が不在で、3人で集まってあーでもないこーでもない
と頑張って推理して少しずつ核心に迫っていく地道な作戦です。
とりあえず、発言してみるか!感がすごいです。
当然のように的外れな意見が飛び出すのですが、
それが他の人へのひらめきに繋がったりもして、
こちらはこちらで面白いチームです。
ただのミステリ好き大学生ですけどね(笑)
懸命に3人で知恵を出し合う素人っぽさが逆に好きです!
それにしても、私も参加してこんな推理合戦をしてみたいな~
二つの村で同時に起こる殺人事件というユニークな設定、
芸術家たちが集まる排他的で孤立した村、
読者への挑戦状、
それから事件解決・・・
あらゆる要素から、この「双頭の悪魔」はシリーズ最高傑作の
名にふさわしい内容となっています。
ぜひ、お手に取って楽しんでみてください。