【感想とあらすじ】『図書室の怪 四編の奇怪な物語』マイケル・ドズワース・クック著

 

今回ご紹介する一冊は、

マイケル・ドズワース・クック

『図書室の怪 四編の奇怪な物語』

です。

 

東京創元社や創元推理文庫といえば、

少なくともミステリの世界では、

かなりステータスの高い媒体で、

ミステリフリークの御用達

のような印象が

あるんじゃないでしょうか。

 

その反面、紅玉いつきさんや

久住四季さんのような、

狭義のミステリ作家ではない方の

手になる、質の高いパズラーも、

そのリストに含まれています。

 

その他にもミステリを書くのは

これが初めてというような方の

作品もあります(出来はともかく)。

 

実は本書も、

ミステリじゃありませんが、

その系譜に連なる作品です。

 

本書の作者

マイケル・ドズワース・クック氏は

エドガー・アラン・ポーを

初めとしたミステリ・怪奇小説の、

在野の研究者なのだそうで、

 

その方面の著作はすでにあるものの、

フィクションの出版は

これが初めてだとのこと。

 

道理で、見覚えのない作家名

だったわけです。

 

さて、こうした経歴を持つクック氏が

上梓した作品は、

おそらく研究者としての関心の対象も

その辺りなのでしょう、

 

古式ゆかしいというか、

古典的でもある

ゴースト・ストーリーです。

 

それでは個々の作品を

見ていきましょう。

 

『図書室の怪 四編の奇怪な物語』は

こちらからすぐに読めますよ♪↓


マイケル・ドズワース・クック『図書室の怪』「図書室の怪」

マイケル・ドズワース・クック (著), 山田 順子 (翻訳)

 

 

図書室に現れる騎士の幽霊、
呪われた丘に立つ灰色の影
怪奇小説やポオを研究しつくした著者が贈る、
クラシックな香り高い英国ゴーストストーリー短編集

中世史学者のジャック・トレガーデンは、オクスフォード大学時代の友人サイモンから、久々に連絡を受けた。サイモンが住むアシュコーム・アビーの図書室の蔵書目録の改訂を任せたいというのだ。稀覯本に目がないジャックはふたつ返事で引き受ける。だが、アシュコームに到着したジャックを迎えたのは、人が変わったようにやつれ、衰えた友人の姿だった。そこで彼に見せられた、彼の亡き妻の手記には騎士の幽霊を見た体験が書かれていた。表題作「図書室の怪」を始め4編を収録。ポオの研究家でもある著者が描く、クラシックな香り高い英国怪奇幻想譚。

 

 

冒頭に置かれているのは、

分量的にも本書の半ば以上を

占める中編『図書室の怪』です。

 

本編の主人公は、

作者がかなりな自己投影を

しているのはないかと思われる、

中世史学者のジャックです。

 

労働者階級の産まれながら、

苦学をしてオクスフォードに

進学したジャックは、

そこで大貴族である

サイモンと知り合い、

水と油の境遇ながら、

親友となります。

 

サイモンの地所であるアシュコームには、

ジャックのように

古籍に関心のある者にとっては

垂涎と言ってもよい図書室があり、

ジャックはその話をせがむのですが、

サイモンは「今はだめだ」と

奇妙な返事をします。

 

そして卒業後、相次ぐ身内の不幸、

ことに最愛の妻を亡くしたことで、

打ちひしがれたサイモンからジャックに、

今こそ図書室を探検しようと

連絡が入ります。

 

駆けつけたジャックにサイモンは、

妻が図書室で亡霊を見たこと、

そして亡霊のために心身を

すり減らしたことが、

彼女に死をもたらしたことを告げます。

 

そして亡霊に導きによって

見いだされた古文書を

解読してくれるよう、

ジャックに依頼するのですが……。

 

こうして物語は、

アシュコームがかつて修道院

だった時代に起きた、

おぞましい犯罪の記憶に遡り、

サイモンの祖先が残した暗号を

ジャックが解き明かす

過程に寄り添います。

 

貴族の財政問題とか、

現代的な話題もないではないのですが、

お話の主眼はあくまでも

古き世からの因縁話。

 

先祖の罪が子孫に祟ってと、

陰惨な物語が続きます。

 

とは言え描写はクラシックでノーブル。

 

腐った海産物みたいな旧支配者とかに

慣れてしまった向きには、

単に昔死んだだけの人が、

なんでそんなに怖いんだ的な不満も

あるかも知れませんが、

これはこれでいいんです。

 

あえて、の描写や物語を

楽しめる人向きのお話ですね。

 

 

 

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マイケル・ドズワース・クック『図書室の怪』「六月二十四日」

 

本編の主人公もまた、学者です。

 

ハーグリーヴスは二十世紀詩の

研究者だったのですが、

愛妻を事故とも自殺とも

付かない状況で失ってしまいます。

 

父が駅長を務めていた、小さな駅が、

合理化のために閉鎖されたという、

幼い頃の思い出を持つ彼は、

熱烈な鉄道愛好家で、

生前の妻が残してくれた詩集を手に、

列車での旅に出かけるのですが……。

 

そもそも妻が詩集を

手に入れた経緯が不可解で、

それを手に旅をしたハーグリーヴスは

得体の知れないところへ攫われていきます。

 

この物語はバッドエンドなんでしょうか、

それとも一種のハッピーエンド

なんでしょうか?

奇妙なお話です。

 

 

 

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マイケル・ドズワース・クック『図書室の怪』「グリーンマン」

 

グリーンマンとは

「東宝制作の超絶低予算特撮番組」

(出典:ピクシブ百科事典)ではなく、

 

「中世ヨーロッパの美術に現れる、葉で覆われた、あるいは、葉で形作られた人頭像」(出典:ウィキペディア)

のことです。

 

教会の廃墟で、

このグリーンマンを見たことから、

奇妙な世界へ誘い込まれてしまう、

名もない青年の物語です。

 

「六月二十四日」と続けて、

異界に誘い込まれてしまう人の物語ですが、

本書の中で本編は幻想味が

突出して高く、

半ば散文詩を思わせる作です。

 

 

 

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マイケル・ドズワース・クック『図書室の怪』「ゴルゴダの丘」

 

そして末尾を飾る本編は

『図書室の怪』に似た凄惨な怨霊譚です。

 

本編の主人公は貴族の子孫である

フィリップ。

 

失われた父祖の地を取り戻すことを

天命と感じていた彼は、

金融界で成功を収め、

その目的を果たします。

 

けれど数百年前に不可解な

唐突さで先祖が手放した地に戻った彼は、

そこにそれまで意識しなかった、

不気味な丘があることに気付きます。

 

かつて処刑が行われていたといい、

村人に畏れられて誰も登らないはずの、

その丘に彼は自分をさしまねく

人影を見るのですが……。

 

直球の怪談ながら、

描写は例によって抑制が効いていて、

好きな人はたまらないでしょう。

 

クック氏はポーの研究者だったそうですが、

どちらかと言えば英国正統の

ゴースト・ストーリー、

M・R・ジェイムズや

アルジャナン・ブラックウッド、

アーサー・マッケンを思わせる作風です。

 

あえて、の物語は人を選ぶでしょうが、

ハマれば最強と言う感じ

じゃないでしょうか。

 

 

マイケル・ドズワース・クック (著), 山田 順子 (翻訳)

 

 

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