今回ご紹介する一冊は、
石田 衣良(いしだ いら) 著
『獣たちのコロシアム
池袋ウエストゲートパークXVI』
です。
ドラマ化、映画化もされている
大人気シリーズの新作です。
作品のファンも多く、
多くの方に読まれ続けています。
今までIWGPシリーズに
触れたことがある方も、
今回が初めての方も、
楽しく読める作品です。
目次
石田衣良『獣たちのコロシアム 池袋ウエストゲートパーク16』 マコトが街の面倒ごとを解決していく物語
主人公のマコトは、
池袋西口にある果物屋の息子。
ダークサイトの奴らとも仲が良く、
マコトの元には毎日さまざまな人
がやってきます。
正義感が強く、
しかも人望と行動力と少しの勘の良さ
を持ち合わせており、
マコトを頼るとなぜか問題が
解決するというジンクスが
出来るまでに。
当の本人は損得勘定ではなく
「何とかしてやりたい」
という気持ちだけで動いているため、
問題が解決したところで
マコトは儲かるわけでも
偉くなるわけでもないのですが、
池袋の街が少し良くなったこと
に気を良くして、
また次のトラブル対応に
進んでいきます。
本作品は、タイトルにもある
「獣たちのコロシアム」を含めて
5つのストーリーが収録されています。
肩たたき部屋に押し込まれた
冴えないサラリーマンに、
彼氏ナシで誕生日を迎えた寂しい女性、
親からの虐待を受けながら
育った子供たちなど、
弱い者ほど犯罪者に狙われがち。
そんな状況を目の当たりにするたび、
黙っていられなくなるマコトが
解決に乗り出し、
ダークサイドの仲間たちの共感
と協力を得ながら鮮やかに事件
を解決していくストーリー
となっています。
石田衣良『獣たちのコロシアム 池袋ウエストゲートパーク16』 後味の良い爽快さ
――闇の虐待ショーをぶち壊せ!
ダークウェブの深奥にある「逆隊コロシアム」。
通常の手段ではアクセスできないサイトでは、
競うように児童虐待動画がアップされている。「逆隊コロシアム」を潰して、
その一部始終をドキュメンタリーにしたいという
テレビ・ディレクターの梅原から依頼を受け、
3人の虐待サバイバーの若者とともに
調査に乗り出したマコトは、
ある日テレビで見た子どもの虐待死のニュースが、
「逆隊コロシアム」の動画に映っていた少女のことだと気づく。小さな命を救えなかった悔しさと怒りを胸に、
マコトはタカシや仲間たちと
巨大なウェブに巣くう獣たちに戦いを挑む。表題作のほか、
池袋の路上で繰り広げられたタピオカ抗争の顛末、
日本屈指のラブホ街を狙った強盗団との闘い、
恋人のいない若い女性を狙ったバースデイコール詐欺を描いた4編を収録。
累計430万部突破のIWGP16弾!
弱い者いじめをする奴を見ると
黙っていられないマコトと、
そんなマコトが好きで
応援したくなる仲間たちの奮闘ぶり、
そして最後は悪いヤツが
懲らしめられ街に平和が戻る様子は、
読んでいて後味の良さ、
爽快感を感じます。
何となく、細かい設定は違えど
大きな流れがどの話も似ていて
ワンパターンな印象はありますが、
読み終わってのスッキリ感が
「まあいいか」という気分に
させてくれます。
ウエストゲートパークシリーズを
初めて読まれる方は、
この読後の余韻とスッキリ感に
「また読みたい」ときっと
思われることと思います。
初めてではない方だと、
ワンパターン故に最後まで
読む前にオチが分かってしまうこと
もあるかもしれませんが、
何か嫌なことがあったときや
心のモヤモヤを飛ばしたいとき
などにオススメしたい作品です。
なお、ドラマや映画、
そして原作を読んで
マコトたちのファンに
なられた方ならば、
今回もその気持ちを
裏切らない作品になっている
と思います。
マコトの人間味あふれるカッコよさ、
マコトの周りにいる
癖のある人たちのナイスアシストぶり、
そして普段はみんなマイペースな
くせに土壇場で発揮される
チームワークのレベルの高さは、
本作品でも健在でした。
石田衣良『獣たちのコロシアム 池袋ウエストゲートパーク16』 時事ネタや地元ネタもしっかり
これも本シリーズの特徴かと
思いますが、
今回も設定や描写がとても
リアルに描かれています。
特に今回は、政府のお花見に
関するゴタゴタやコロナなど
日本中で大きな問題になった
トピックが多い中での
新作でしたので、
そういった時事ネタが
多く取り込まれています。
といっても既存の読者さんは
お分かりかと思いますが、
トピックそのものを大々的に
取り上げるわけではありません。
背景描写の中でチラリと
匂わせる程度です。
また、池袋ならではの
ネタもあります。
タピオカのお店が乱立する様子が
繁華街の象徴として描かれていたり、
世論を賑わせたひき逃げ事故を
とりあげ
「大きな事故のあった交差点」的な
表現がなされたりしています。
当たり前ですが、
実際の池袋にはマコトもいないし
他の登場人物もいません。
ですが時事ネタや地元ネタが
ふんだんに取り込まれている
おかげで描写がとても臨場感の
あるものになっています。
とくに池袋の街に来たことがあり
登場するスポットに馴染みのある方
にとっては、
事件がそこで実際に起きている
様子を想像してしまう
ことでしょう。
本作品を読んで気になった方
がいれば、
池袋の街を実際に訪れてみると、
ストーリーがさらにリアルに
感じられると思います。
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