森絵都『最後は臼が笑う』あらすじと感想!「一筋縄ではいかない大人の恋愛」

 

今回ご紹介する一冊は、

森絵都

『最後は臼が笑う』です。

 

森絵都さんは、

児童文学を中心に活躍している

女性の小説家です。

その作品の多くは、

子供から大人まで大きな支持を得ています。

森絵都さんが作家を目指したきっかけは、

高校3年生の進路を選ぶ時。

かつて作文をほめられた経験から

作家になろうと決意をします。

その後、日本児童教育専門学校児童文学科を卒業し、

早稲田大学第二文学部を卒業しています。

児童文学創作の傍ら、

「エースをねらえ!」や

映画「ブラックジャック」など

アニメーションのシナリオ制作

を手がけました。

1990年に「リズム」で第31回講談社児童文学新人賞

を受賞しデビューし、

2006年に「風に舞い上がるビニールシート」で、

第135回直木賞を受賞しています。

その後も続々と人気作品を発表し、

数多くの作品を受賞しています。

 

 

 

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「ダメ男ほど愛しい」という沼

 

とてもひねりの効いた、一筋縄ではいかない大人のための恋愛短編。確かに女と男は〝出会う〟のだが、そこから先が尋常ではない。幸せの形は人それぞれとは言うものの……。

ヒロインは公務員の桜子、39歳。人生このかた、ろくでなしの悪い男にひっかかり続けてきた関西人。妻子持ちに騙され、借金持ちには貢がされ、アブノーマルな性癖持ちにいたぶられる。ところが、桜子は「ろくでなしや、あかん奴や言われとる男に限ってな、どっかしら可愛いとこを持っとるもんなんや」と公言し、好んで吸い寄せられていく。高校時代からの友人の「私」は、悪弊の連鎖を断つべく有志を募り、「桜子の男運を変える会」まで結成したが、当人は我関せずだから、どうしようもない。

ところがある日、解散して早十年を数える会に、桜子から緊急招集がかかる。「一分の隙もない完全な悪」にとうとう出会ってしまったのだという。〝完全な悪〟とはいったい何者か?

 

主人公の「私」の学生時代からの親友、

桜子はいわゆるダメ男に引っかかり続けた結果、

そこに一点の「愛しいところ」

彼らの中に見出すことで生きがいを感じています。

借金持ちの男、DV男、三股、四股をかけられたり、

どんな酷い目に遭っても、

桜子にとっては自分だけしか知らない弱み

や愛嬌や情を見つけることで

すべて許せてしまうのだそうです。

そんな桜子を救うべく結成された

「桜子の男運を変える会」ですが、

本人は男運を変える気もなく、

時は経ち三十代へ突入します。

年々、桜子も年を重ねるごとに

彼女を貪る男たちの質も下がっていき、

「ひどい男」というより「しょぼい男だ」

呆れられるほどになってきました。

桜子の言うダメ男にはまる心理というのは、

きっと暗闇の中に光を見つけた時のような

高揚感であったり、

自分だけにしか分からない

喜びを得たということに

生きがいを感じているのでしょう。

 

 

 

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電車で見つけた最も悪な男

 

ある日、

桜子から「桜子の男運を変える会」旧メンバーに

緊急招集がかかります。

彼女が言うには

「一分の隙もない完全な悪の男に出会った」

と言うのです。

その男は、

毎夕桜子と同じ電車の同じ車両に乗り、

同じ座席に座っていると言います。

容姿はいかにも極悪人という佇まいは全くなく、

気配の薄い地味で平凡な男性

「平凡で目立たない人ほど悪なのか?」

と思い読み進めていくと、

その男の行動が悪だと桜子は話を続けます。

男は目の前の女に席を譲りました。

そのターゲットは年配や妊婦さんではなく、

あくまでも三十代後半から五十代にかけての女たち

私は、ドキリとしました。

その男は見透かしているのです。

「年には勝てない」「もう若くはない」

と心の中で自覚しているものの、

「少しでも若くありたい」と

服やアクセサリーやメイクに

その思いをゆだねている、

そんな年齢層の深層心理を暴くかのような、

「席を譲る」という行為

男は毎夕こうして席を譲ることで

女性の自尊心を傷付けることを繰り返しています。

これにはさすがの桜子も、

一点の愛しさを見出せないことでしょう。

 

 

 

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悪を成敗!決戦の日

 

仮名「八郎」と名付けられた

その男を成敗すべく、

行きつけの居酒屋で作戦会議となりました。

男をいかに懲らしめるのか、

お酒の酔いも入っており、

さるかに合戦のようなコミカルな作戦

となってしまいますが、

その日はノリノリで解散します。

三日後、素面な状態で桜子が利用する

駅の構内に再集結。

本当にやるのか?という戸惑いや躊躇に動揺し、

作戦通りにはいかなかったものの

思わぬ助っ人に救われ成敗成功となります。

八郎が席を譲ろうとした瞬間、

突進したくりくり頭のおばちゃんに

跳ね飛ばされて宙に舞い

床に転がる結末となりました。

おばちゃんは一体どこから

狙いすまして猛進してきたのでしょうか。

八郎の密かな優越感、恍惚心、存在意義

それら全てがもはやおばちゃんにとっては

「どうでもいいこと」

として吹き飛ばされたような、

そんな爽快感に包まれました。

桜子もこれを機に、

もう悪い男に引っかからないよう

生きてほしいですね。

 

 

 

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