真梨幸子『カウントダウン (宝島社文庫) 』感想とあらすじ!イヤミス女王が描く終活

 

今回ご紹介する一冊は、

真梨 幸子(まり ゆきこ)

『カウントダウン』です。

 

亜希子はひょんなことから

癌が見つかり、

余命半年を宣告されました。

 

残された時間をどう過ごすか。

 

亜希子は身の回りの物の整理を

しようとしますが、

それも中々捗りません。

 

それでもゆっくりと整理を

進めていく内に、

今まで忘れていたあらゆる人

のことが思い出されていき、、、。

 

亜希子がどんな想いを抱えて

どのような人生を歩んだのか。

 

その結果、どのように彼女の人生は

幕を下ろすのか。

 

この本にはそんな刺激的な終活

に取り組む、

一人の女性の姿が描かれています。

 

 

 

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真梨幸子『カウントダウン』 終活

 

半年後までに、邪魔なものはみんな“片付ける”――。海老名亜希子は「お掃除コンシェルジュ」として活躍する人気エッセイスト、五十歳・独身。歩道橋から落ちて救急車で運ばれ、その時の検査がきっかけで癌が見つかった。余命は半年。潔く“死”を受け入れた亜希子は、“有終の美”を飾るべく、梅屋百貨店の外商・薬王寺涼子とともに“終活”に勤しむ。元夫から譲られた三鷹のマンションの処分。元夫と結婚した妹との決着。そして、過去から突きつけられる数々の課題。亜希子は邪魔なものを“片付けて”終活に奮闘するが、マンションのクローゼットに大きな秘密を抱えていた――。イヤミスの女王が放つ二転三転の“終活”ミステリー、待望の文庫化です。

 

 

突然ですが、

あなたは鬼頭模宏様の

『ぼくらの』という漫画を

ご存じでしょうか?

 

平たく言えば、

15人の少年少女たちが、

一週間後に死ぬことが決まって、

それぞれどのように

その一週間を過ごすかという話です。

 

私はこの話が大好きです。

 

そしてこの話から、

死を目の前にして初めて

生と向き合う姿を学び、

そして自分も、自分がいつか死ぬ、

明日にはもう死んでるかもしれない

という事実から目を逸らさずに

真剣に生きようと決めました。

 

『カウントダウン』の主人公、

亜希子も自分が死ぬことが

決まってから、

今まで目を逸らしていた事実

と向き合いはじめます。

 

それは家族とのいざこざであったり、

自分自信の嫌な一面であったり、

手をつけられずにいた厄介事

であったりしました。

 

終活は難航します。

 

例えばゴミ屋敷にしてしまった

部屋の処理。

単純にゴミの処理が

難しいこともありますが、

その部屋には亜希子にとって

大切な思い出が育まれた場所

であることも、

手をつけられずにいた理由

の一つだと私は思いました。

 

思ったというのは、

明確に本の中で、

「思い出があるから手をつけられない」

と書かれているわけでは

ないからです。

 

しかし、最後まで読んで、

私は亜希子にとって

ゴミ屋敷となった部屋は、

何よりも大切なものだったのかも

しれないと思ったのです。

 

あなたがもしこの本を

読んでみたら、

少しだけ気にしてみてほしいです。

 

亜希子にとって、

あの部屋がどんなもの

だったのかを。

 

亜希子は他にも終活として、

家族関係や仕事等に

終止符を打とうと頑張ります。

 

それは、それらのものに対して、

自分はどのような本心を

抱いているか、

素直に自問自答する行為といえます。

 

そうして自分と向き合う終活のはてに、

彼女が行った最後の終活は、

あまりにも衝撃的なものでした。

 

ぜひ読んで確かめてみてください。

 

 

 

 

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真梨幸子『カウントダウン』 亜希子

 

主人公の亜希子を

好きになる人はそう多くは

ないと思います。

 

それには様々な要因があります。

 

一つには、亜希子は

一般的に見たら十分な

社会的成功を修めていながら、

それを自分の大きな見栄でもって、

物足りないと感じる傲慢さがあること。

 

また、旦那様に対して

愚図等の罵倒を浴びせたうえに、

その後の態度も良くないこと。

 

更には、自分より下だと思う人間

を見下し、

上だと思う人間を妬むこと。

 

このように、強く惹かれるような

要素があまりありません。

 

しかし、彼女がなぜそのような人間

になったのか、

どんな人生をどんな思いで

歩んできたのかを知るほどに、

好きにはなれないが嫌いにもなれない、

同情のような気持ちを

抱いていきました。

 

それは、この『カウントダウン』

という小説が、

誰からも好かれる人を描くのではなく、

 

等身大の人間の醜さと

愛らしさを丁寧に描いている

からだと思います。

 

きっとあなたも、

亜希子に好きでも嫌いでもない、

 

けれど冷たい目で見ることのできない、

なんともモヤモヤとした感覚

を抱くことができると思います。

 

そのモヤモヤも楽しんでくださいね。

 

 

 

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真梨幸子『カウントダウン』 終盤は猛スピード

 

この小説は、

あるポイントを境に

テイストが大きく変わります。

 

私はそこに至るまでは、

悲しく、同情の気持ちを

抱きながら読んでいました。

 

しかしこのポイントを越えて

最後まで読み終えると、

私が抱いていた感覚は

恐怖と興奮でした。

 

この物語に隠されていた真実

がどんどんと明かされていき、

また明らかになった真実が

新たな真実へと繋がり、

 

やがて、この物語が一体

どういうものだったかを

形作るのです。

 

恐怖というのは、

タイトルにもある

『カウントダウン』の言葉の意味が、

違った重みを持ち始めるからだと

私は感じました。

 

あまり書くとネタバレになるので、

少し例え話をします。

 

星新一の『処刑』という話を

ご存知でしょうか?

 

死刑囚が水の無い別の星に送られ、

ある機械を渡されます。

 

その機械についているボタンを

押せばコップ一杯の水が出ますが、

低確率で爆発します。

 

最初は主人公も苦悩した末に

ボタンを押して、

 

そして得た水を飲みながら

次にボタンを押すことを

思い怯え続けます。

 

なんとも残酷な処刑法です。

 

しかし、主人公は途中から

臆することなくボタンを押し、

あげくのはてには連打して

水を出してお風呂にします。

 

彼は頭がイカれたのでしょうか?

いいえ、彼は気づいたのです。

 

自分が今置かれている環境は、

地球と変わらないことに。

 

私たちはどこかに出掛けます。

その時、交通事故や落下物などで

死ぬ可能性があります。

 

餅を食べれば、

喉に詰まらせて死ぬ

可能性があります。

 

何もしてないと思っても、

癌で死ぬ可能性があります。

 

僕らはいつもボタンを

押しているのです。

 

そこに気づいた主人公は、

地球に居たときと

変わらないように、

ボタンを押すのです。

 

きっと読めば、

この例えも分かる所が

あると思います。

 

そしてあなたも、

自分のカウントダウンを

考えると思います。

 

そうして恐怖と興奮を

抱きながら、

誰かとこの本について

語りたくなること

間違いなしです。

 

 

 

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