今回ご紹介する一冊は、
椹野 道流(ふしの みちる) 著
『最後の晩ごはん
地下アイドルと筑前煮』
です。
椹野道流さんは小説家として
1996年にデビューしたときは
法医学教室に籍を置いて
医療系専門学校で
非常勤講師として
働きながらも
小説を書いていたそうです。
その作品には人間の生と死と食
にまつわるものが多くて
読んでいるだけで
想像して時に笑い、
泣いてしまいなにかしら
感動しちゃいます。
兵庫県生まれというのもあり
関西弁の表現は
なんともうれしい気持ち
になり読んでいて
懐かしさも覚えます。
『最後の晩ごはん』には
ついマネしたくなるレシピ
がたくさん書かれています。
なかでもコロッケ好きの私
が必ず作ってみようと
思ったのは
「初心者向けのコロッケ」で
ジャガイモ茹でてつぶして、
鯖の味噌煮缶を混ぜたら
いいだけの中身で作るものです。
簡単に作れて
おいしいレシピだけでなく
登場する人のそれぞれの
優しさにも注目して
読みたくなるこの作品
についてお話します。
目次
椹野道流『最後の晩ごはん 地下アイドルと筑前煮』 ばんめし屋
びっくりするほど元気が出る「ばんめし屋」。美味しいごはんで癒されて!
夜だけ開店、メニューは1種類。
海里が働く芦屋の定食屋「ばんめし屋」に、迷惑な酔客が現われた。
カラフルな髪色の彼女、レイナは、海里の役者時代のファンだという。
しかし彼を見て失望し、品切れのトンカツを食べたいと言うなどやりたい放題。
聞けば「人生最後の夜に、憧れの人に会い、大好物を食べたかった」らしい。
実は彼女は地下アイドルで、未来に絶望していて……。
海里の新たな挑戦にも胸躍る、青春お料理小説第14弾!
「ばんめし屋」は
日暮れから夜明けまで
営業している定食屋で
メニューは日替わり定食のみ
で客に選択権はありません。
ロイドは齢百年を超える
イギリス生まれの眼鏡で
「付喪神」の一種で
店主の夏神のもとで働く
海里を主と定めて
人間の姿に変身して
店の手伝いをしています。
その関係もあるのか
「ばんめし屋」で死者が
幽霊の姿で店に入ってきて夏神、
海里に何かを伝えようと
やってくるのです。
ただ夏神は彼の恋人には
どうも会えないようでした。
ある日の定食の付け合わせに
コールスローを作る際にも
ロイドは大活躍でキャベツ、
ニンジン、玉ねぎのみじん切りも
上手になり夏神に褒められて
喜ぶところに親近感がわきます。
コールスローは前日に味付けして
1日おくと塩と酢がよく回って
パリッとした一夜漬け
みたいな感じになるようです。
マヨネーズを足してあえると
いい具合になじみます。
缶詰のコーンがあると
甘みのあるものとなります。
今すぐコールスローを
作ってみたいですよね。
その日の日替わり定食は
和風おろしトンカツで
SNSにお知らせしているのもあり
読み以上になくなってしまい
“まかない”の分が
なくなってしまうなんて
SNSの力は本当に
すごいものですね。
椹野道流『最後の晩ごはん 地下アイドルと筑前煮』 地下アイドル
トンカツが欠品した日は
ひどい雨でした。
その日にオオサカ・トクトパスの
レイナがずぶ濡れで
かなり酔った状態で
「ばんめし屋」を訪れます。
かなり酔っているにも関わらず、
もう死のうと考えていて、
「最後の食事」に大好きな
トンカツを食べたいと
やってきたのですが
その日は全く食事ができる状態
ではありませんでした。
次の日も二日酔いで
食事ができる状態では
ありませんでしたが
麦茶と雑炊で元気を
取り戻しました。
その雑炊はみそ汁用の出汁を
ベースに解凍した白飯、溶き卵、
ほんの少しのしいたけ、
三つ葉と海苔だけで
作り味も少量の塩とみりん、
しょうゆをほんの数滴で
仕上げたものです。
付け合わせに海里が作った
胡瓜とワカメ、針生姜の酢の物は
箸休めにとてもうれしい存在
となったのはいうまでもありません。
それまでまともな食事を
していなかったレイラに夏神が
「あんな、食うことは、大事やで」
の一言はさりげないけど
心に刺さり自分自身も
改善したいものです。
レイナの「もう死にたい」には
複雑な理由があり、
それには彼女の母の存在
が関係していたのです。
椹野道流『最後の晩ごはん 地下アイドルと筑前煮』 筑前煮
海里が淡海先生のところに
出前を届けた帰りに
芦屋神社の門柱に
抱きつくレイナに遭遇します。
レイナが石柱に抱きついていた
のは幼い頃に生き別れになった
母のジュナ・カンザキが
亡くなる前に訪れたかも
しれない場所で
会いたい気持ちを
無理矢理発散させるためだと
言っていましたが
海里はただ驚くばかりでした。
レイナは祖母が認知症だし、
母は自分が全国区になったら
会いに行こうと考えていて
そうなる前に亡くなって
しまったので
「もう死にたい」となり
あの雨の日の行動となった
ことを話してくれたのです。
そんなレイナも淡海先生との会話
から
母の想像のする娘の絵のおかげで
「なんや温かいもんで
包まれてる気がする」
と初めての感覚で
もう死のうという気持ち
はなくなったのです。
彼女の思い出の食事は
祖母が母も大好きだったと
話していた筑前煮なのです。
その筑前煮はご飯の上に載せて
食べていたというのもあり
具材は直径2cmくらいの四角
に切られていたそうです。
その具材は大根、ニンジン、
牛蒡、レンコン、蒟蒻、鶏肉
のほかに煮汁入りの甘栗です。
私がいつも食べている筑前煮
とは違って甘みたっぷりだけど
今後作ってみます。
それにしても人には
それぞれ一緒に生きて、
思い出とか、
形見は笑顔になったり
胸にすっと染みこんでいくもの
だと実感します。
この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓