辻堂ゆめ『あの日の交換日記』小説内容あらすじと感想!王様のブランチで紹介本

 

今回ご紹介する一冊は、

辻堂ゆめ

『あの日の交換日記』です。

 

交換日記を

したことはありますか?

 

SNSが蔓延し、

通信もそのほとんどが

デジタルというこの時代に、

あえて手書き手渡しの

交換日記という、

 

超アナログの

コミュニケーションツール

に着眼した作者の辻堂ゆめさん。

 

1992年生まれで今、

最も将来を期待されている

若手作家のうちの一人です。

 

東京大学在学中に

『いなくなった私へ』で

第13回

「このミステリーがすごい!」

大賞優秀賞を受賞し、

作家デビュー。

 

『あの日の交換日記』では、

第一話「入院患者と見舞客」

第二話「教師と児童」

第三話「姉と妹」

第四話「母と息子」

第五話「加害者と被害者」

第六話「上司と部下」

第七話「夫と妻」

 

といったそれぞれの

二人の間で交わされた

日記についてが

書かれているのですが、

 

それぞれの物語に

微妙に接点があり、

最後はすべてつながっていく

連作短編スタイルです。

 

全話に共通するのは

素敵な小学校の先生。

 

ちょっと気になりませんか?

 

 

 

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辻堂ゆめ『あの日の交換日記』 あらすじ

 

先生、聞いて。私は人殺しになります。お願いだから、じゃましないでね?「教師と児童」

私は彼女に合わせる顔がありません。毎日不安でいっぱいです。「上司と部下」

交換日記を始めるにあたって、一つだけ、お願いごとがあります。
このノートの中でだけ、今まで話してこなかったようなことを振り返ってみる。
それって、なんだか素敵じゃないですか?「夫と妻」

嘘、殺人予告、そして告白……。大切な人のため綴った日記に秘められた真実とは?
気鋭の若手ミステリ作家が記すのは、驚くべき仕掛けとその後訪れる感動。

 

白血病を患い、

つばめが丘総合病院に

入院する愛美は、

本来は4年生なのに

まだ学校へ一度も行ったこと

がありません。

 

学校を知らない愛美は

一人の学校の先生と

交換日記をしていました。

 

その日記の中で架空の友達と

空想上の勉強や遊びを

したことをつづり、

 

先生はそれに合わせながら

現実の学校生活の様子を

知らせるようなお返事を書く、

といったやりとりです。

 

ある日、愛美が骨髄移植を

受けるために無菌室に

入ることが決まり、

その日を境に交換日記は

終わりました。

 

6年生のクラス全員の

子どもたちと

1対1で交換日記をする

先生の元には、

 

「私は人殺しになります。犯罪者になります。大きらいなあの子を、めちゃくちゃにして、人生を終わらせてやる。」

 

こんな脅迫めいた告白

をしてくる日記も

届いたりしました。

 

先生はその子に

どうお返事するのでしょうか…。

 

また、双子の姉と妹が

いがみ合う内容を

互いにつづった交換日記は

収束するのか、

母は息子を理解できるのか、

夫と妻はわかりあえるのか…

などなど、

 

満載の読みどころを

一つずつ越えていくと、

その先にまさかの驚きが

隠されています。

 

 

 

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辻堂ゆめ『あの日の交換日記』 秘密の共有を通して相手との関係性を深める・・・

 

本書に登場する交換日記は

普通のノートのようですが、

昔、女子中学生などの間で

流行った交換日記には、

ハードカバーのものやケース付き、

中には鍵付きなどといった

タイプもあって、

 

ただでさえ秘密めいた

交換日記の秘密性

というものがさらに

強調されていました。

 

手書きなので文字からも

気持ちが表出されます。

怒っている時は力のこもった

荒ぶった字になりますし、

優しい気持ちの時は

文字や行間からも優しさが

溢れていたりします。

 

そういった手書きの文字を

介した思いの伝え合いは、

その二人の間だけで

行われる特別な儀式のように

思ったものです。

 

相手からのお返事を開くときの

ドキドキ感や期待感もまた

交換日記は特有のものがあり、

学校で接している友だちの

違った一面がそこに見えると、

 

「私だけが知ってる」感が芽生え、

学校などの日常でどういう顔で

会ったらいいのか逆に照れ臭い

ような気持ちになったりもします。

 

「文章って、不思議ですよね。本心を隠すことも、さらけだすことも、自由自在にできます。相手を癒す薬にもなれば、心臓をえぐるナイフにもなります。」

「でも、私は思うのです。一文字一文字をノートに書き記すために使った、その時間だけは本物なのだと。内容がどうであろうと、手書きの文章の中には、相手への愛が絶対的に存在するのだと。」

 

 

こうして、相手との関係性を

深めていくのが

交換日記なのでは

ないでしょうか。

 

 

 

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辻堂ゆめ『あの日の交換日記』 素直さを吐き出すと楽になる人間という生き物

 

本書を読むと、

人間というのは、

本来素直でいることが

一番幸せで、

素直になれない時ほど

苦しいものはなく、

 

素直さを吐き出してしまえば、

とたんに楽になる生き物

なのだということが

わかります。

 

その一つの手段として

交換日記は最高のツール

であるといえるでしょう。

 

文字にして吐き出していく時

の気恥ずかしさや、

それを読まれる時の勇気を

乗り越え、

 

読む方は読む方で

自分が前回吐き出した内容に、

相手がどう反応してきて

くれているか

期待と緊張の入り混じった

複雑な気もちでノートを開く。

 

こうした行為の連続が、

どこかで素直さを生むようです。

 

作中に登場する

小学校の先生は、

心底やさしく

素晴らしい先生で、

 

クラスの子どもが

書いてくる内容に、

一つひとつとても誠意をもって

お返事しています。

 

読者の私たちが

「え?私ならどう返すかな?」

と考えてしまう内容でも、

 

子どもの心をいたわりながら、

さらっと素敵にお返事を

書いてきます。

 

そこから相手の素直さを

しゅと引き出してしまう・・・。

 

まったくもって作者の辻堂さん

ご本人のお人柄が偲ばれます。

 

次の作品も楽しみにしています。

 

 

 

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