二宮敦人『裏世界旅行』本の感想とあらすじ!おすすめ小説「不思議な世界」

 

今回ご紹介する一冊は、

二宮 敦人(にのみや あつと) 著

『裏世界旅行です。

 

「裏世界とは?」と

タイトルからすでに

「?」となってしまう小説。

 

地球の裏側なのか、

アングロな世界を指すのか、

それとも誰も訪れない

ような秘境を指すのか。

 

実際に読んでみると、

このどれも当てはまらない、

 

でも誰もが実は旅した

ことのある、

不思議な世界でした。

 

 

 

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二宮敦人『裏世界旅行』 誰もが持つ、表と裏

 

 

誰かの夢の中に入り込めるとしたら?

毎晩、同じ世界の夢を見ることができるツキコ。一本の巨大樹を中心に、豊かな緑が広がるその広大な夢の世界には、ツキコ以外は誰もおらず、鯨や怪獣に似た不思議な生き物だけが静かにのんびりと動き回っている。現実世界――通っている高校でツキコは少し浮いた存在で、友人と呼べるのは幼馴染みのヒナタだけ。相手を和ませる性格のヒナタは皆に好かれているが、誰ともかかわろうとしない自分は孤立気味だ。そんなモヤモヤする現実に比べ、誰の目も気にせずのんびりと過ごせる夢の世界は、ツキコにとって癒しの場。心からリラックスできる空間なのだ。
ところがある晩、ツキコの大事な夢の世界に見知らぬ青年が入り込んでくる。ギョッとするツキコに青年は名乗りもせず、なぜか不機嫌そう。不遜な態度の彼を問い詰めたところ、彼は「裏世界」と呼ぶ他人の夢の世界を旅しているらしい。青年とともに「裏世界」を巡ることになったツキコは、ミステリアスな世界の謎を解き明かしていくが…?
『最後の医者は桜を見上げて君を想う』の著者が描く、感動と発見の青春ファンタジー!

 

 

本作品で言う「裏世界」とは、

その人の「内面」のこと。

 

本音と建前で言う

ところの本音部分、

とも言えると思います。

 

表では良い顔をしているけど、

腹の中ではドス黒いモノを

抱えている、

 

なんて人がたまにいますが、

そういう人は現実世界は

綺麗だけれど、

「裏世界」はドロドロ、

というわけです。

 

主人公の月子は、

何かのきっかけで自分の

「裏世界」を旅行できるように

なりました。

 

何故かはわからないけれど、

「あの世界に行きたい」

と望むと夢の中で

「裏世界」が繰り広げられるように。

 

月子自身は気付いていませんが、

それはつまり自分自身の内面

を旅行していること

になります。

 

本心や、潜在意識で

考えているようなことが

具現化された世界です。

 

ある日、月子はいつものように

自分の「裏世界」を旅していると、

知らない男の人に出会います。

 

その彼によると、

実は他人の「裏世界」に

入り込むことが可能なのだそう。

 

月子は彼に、

自分でもその彼でもない

赤の他人の「裏世界」に

連れて行ってくれるよう

頼み込みます。

 

「小指さん」と名付けた彼と

月子による、

赤の他人の「裏世界」研究が、

丁寧に描かれていきます。

 

 

 

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二宮敦人『裏世界旅行』 恋愛中の葛藤が「裏世界」描写でよりリアルに

 

月子と小指さんが入り込む

「裏世界」では、

付き合ったばかりの

学生カップルの恋愛模様が

描かれています。

 

付き合ったばかりというと、

まだお互いに相手の

知らない部分をどんどん発見

していく新鮮な時期。

 

「本当はどう思っているのかな」

と悩んだり、

「本当はこうしたいけど

相手に嫌われないかな」

と悩んだりするものです。

 

本作品ではそんな

付き合いたての二人、

主に男性側の悩みや葛藤が、

「裏世界」の描写をすること

で手に取るようにリアルに

描かれています。

 

読みながら、

自分がまだ若かったころの

甘酸っぱい気持ちが

蘇るような感覚がありました。

 

自分自身と向き合ったり、

自分の中で葛藤したり、

そういったシーンが

描かれた小説はたくさんあります。

 

ですがその多くは、

すべて一人称で描かれている

ことが多いです。

 

それ故に表向きの状態がより

多く描かれていたり、

また主人公自身が

気付いていないようなことは

描かれずにいたりします。

 

ですが本作品では

「裏世界」の描写を通して、

本人の本心がより

ハ強調された描写になっていますし、

 

本人が気付いていないような

感情も見事に盛り込まれています。

 

感情がリアルに伝わってくる、

そんな形に仕上がっている

と思います。

 

 

 

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二宮敦人『裏世界旅行』 パラレルワールド的なストーリー

 

本作品は現実世界、

いわゆる「表世界」と、

その逆の「裏世界」の描写

が交互に出てきます。

 

それゆえ、

パラレルワールド的な感じ、

 

「いまどっち?」と

立ち位置が一瞬分からなくなる

ようなことが何度か出てきます。

 

パラレルワールド的な

ストーリーには、

どんでん返しがありがちです。

 

ふたつの側面からの描写を

行ったり来たりしているうちに

思い込みや錯覚を起こし、

 

それが最後にパッと種明かし

されるような内容は

良くあります。

 

本作品は、そういった点でも

似ている所があるかなと

感じました。

 

特にやりたいこともなく、

大学の進路に悩んでいた

月子でしたが、

 

「裏世界」の面白さに惹かれ

進学後はこの「裏世界」に

ついて研究していくことを

決めます。

 

他人の心が覗ける面白さも

もちろんあると思いますが、

このパラレルワールド的な

不思議さもまた、

 

月子の興味をひいた

ポイントの一つ

だったのだかな、

と思いました。

 

 

 

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