エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの新冒険』感想と短編集あらすじ!

 

今回ご紹介する一冊は、

エラリー・クイーン

中村有希 翻訳による、

『エラリー・クイーンの新冒険【新訳版】』です。

 

 

エラリー・クイーン氏は、

本格ミステリの巨匠として、

ことにパズラーと呼ばれる

タイプの

ミステリを語る上では

欠かせない存在として、

 

没後半世紀近い現在の日本

においても高い人気を

誇っています

(クリスティ氏には

さすがにおよびませんが)。

 

長編での代表作は

国名シリーズの

『エジプト十字架の謎』や

『Yの悲劇』などの

悲劇四部作(バーナビー・ロス名義)

ですが、

 

『エラリー・クイーンの新冒険』

そんなクイーン氏の

第二短編集です。

 

このたび中村有希氏による新訳版が、

創元推理文庫から発刊

されたのを機にご紹介です。

 

旧訳版は翻訳があまり

良くなかったようで、

ネットで評価を漁ると

「読みにくい」

「訳のために挫折」

などと散々なので、

ミステリファンとしては

慶賀とすべきところでしょう。

 

実際に読んでみても、

なめらかな訳文で、

読みにくさは全く

感じられません。

 

では内容に入っていきましょう。

 

 

 

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エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの新冒険』「神の灯」

エラリー・クイーン (著), 中村 有希 (翻訳)

 

エラリーの名推理のつるべ打ち。
謎解き小説の醍醐味がこの一冊に。有栖川有栖(作家)
この推理は100年後も色あせない。青崎有吾(作家)
巨匠の本格ミステリ名作短編集、新訳版
名作ミステリ新訳プロジェクト

荒野に建つ巨大な屋敷“黒い家"が、一夜にして忽然と消失するという強烈な謎と名探偵エラリーによる鮮やかな解明を描いて、著者の中短編でも随一の傑作と評される名品「神の灯」を巻頭にいただく、巨匠クイーンの第二短編集。そのほか、第一短編集『冒険』同様「……の冒険」で題名を統一した4編に、それぞれ異なるスポーツを題材にした連作4編の全9編からなる本書は、これぞ本格ミステリ! と読者をうならせる逸品ぞろいである。

 

 

冒頭クイーン――

 

おっと、作家ではなく

探偵のエラリー・クイーン――は、

 

旧知の弁護士に理由も

告げずに呼び出されます。

 

そのままクイーンが

巻き込まれたのは

富豪の遺産争い。

 

別れた妻と英国に渡った

一人娘に、

巨額の遺産を送ると

決めていた富豪が

亡くなったのです。

 

アメリカに着いたばかりの

娘を護衛して、

クイーンと弁護士は遺族の住む、

人里離れた邸宅に向かいます。

 

その旅路の果てで、

一行が見たものは

邸宅と車路を挟んで建つ

黒い館でした。

 

山火事に焼かれてどす黒い、

荒れ果てたその館に、

富豪は最後まで

住んでいたのです。

 

そして娘に送られる遺産は

金貨に換えられて、

館のどこかに

隠されていました。

 

その翌朝、

一行を驚愕の出来事が

襲います。

 

黒い館が跡形もなく

消えてしまっていたのです……。

 

残念ながら、

今となっては驚天動地の

トリックとは言えません。

 

ミステリ好きの読者の多くは、

どこかで類似の謎と

その解明を目にして

いるんじゃないでしょうか。

 

「この建物消失に

『神の灯』のトリックは使えないんだ」

 

などとやって、

ネタバレまでやって

しまっている、

 

とんでもない

国産ミステリも

あるそうですから。

 

それでも元祖はこの作品です。

 

そうした作品たちは

みーんな本作があったから

書かれたんです。

 

それだけでなく、

雰囲気の盛り上げ方とか、

中編ミステリとしての

完成度も極めて高い。

 

建物消失の謎だけを解いて、

いい気な読者の足下を

かっさらうような、

別の仕掛けもあります。

 

この一本だけで短編集の元が

取れると言われる傑作を

楽しんでみてください。

 

 

 

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エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの新冒険』 新たなる冒険

 

クイーン氏の第一短編集

『エラリー・クイーンの冒険』

に納められた短編のタイトルは

全て「~の冒険」の形式で

そろえられていました。

 

率直なことを言うと、

クイーン氏の短編集は

『冒険』も評価が高く、

『新冒険』はイマイチです。

 

前項でも触れたように

「神の灯」のおまけのような

言い方をされることも多い。

 

この評価は正しいでしょうか?

 

このブロックには

『冒険』同様「~の冒険」の

形式でタイトルをそろえた

短編が四本並んでいます。

 

少し比べてみましょう。

 

『冒険』の短編は

物語のコアである謎を

完結に表せるようなものが多い。

 

たとえば何故、

猫嫌いの老婆は

六匹もの黒猫を買ったのか?

 

とか何故、

被害者は女の肖像画に

髭を描いたのか? とか。

 

この要領で

『新冒険』の短編を

表してみましょう。

 

まず『宝捜しの冒険』は、

いわば巨大な密室である邸宅から、

犯人はどうやって盗品を

持ち出すつもりなのか?

になります。

 

『がらんどう竜の冒険』は何故、

大した価値もない

ドアストッパーは盗まれたのか?

 

で、『暗黒の家の冒険』では

真っ暗なお化け屋敷の中で、

離れた位置から犯人は、

どうやって被害者を

射殺できたのか?

になります。

 

トリックもその謎解きも

少し軽い気はしますが、

悪くはない。

 

問題は次の

『血をふく肖像画の冒険』でしょう。

 

なんだこれ? うーん。

 

本作辺りの評価が全体の脚を

引っ張ってるのかも

知れませんね。

 

 

 

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エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの新冒険』 エラリー・クイーンの異色なスポーツミステリ連作

 

最後のブロックに

まとめられているのは

クイーンが、

ポーラ・ハリス嬢なる

妙齢の美女と

いちゃつきながら、

野球・競馬・ボクシング・

カレッジフットボールと

言ったスポーツにまつわる

事件を解決していく連作です。

 

巻末解説から引用すれば

「当時の映画によく見られたスクリューボール・コメディの味を狙っている」

 

そうで、

今で言うライトミステリです。

 

ミステリとしてみた場合、

多少アンフェアだったり

もしますが、

出来は決して悪くない。

 

ただクイーン氏と言うことで

がちがちの本格を期待すると

当てが外れるかも知れません。

 

これはこれでいいと思いますが。

 

いかがでしょうか。

 

ミステリマニアが

眉間にしわを寄せて、

人物相関図とか作成しながら

読むと言うより、

もっと気楽に楽しむ感じ

の作品集です。

 

多少困った作も

混じってはいますが、

決してレベルが低いわけ

ではありません。

 

ただこの感じだと

ミステリマニアの評価は

どうしても低めに

なるでしょうね。

 

エラリー・クイーン (著), 中村 有希 (翻訳)

 

 

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