今回ご紹介する一冊は、
本間 洋平(ほんま ようへい)著
『家族ゲーム』です。
1983年に森田芳光が
映画化したことで
一躍有名になった小説です。
映画では
「何か意味合いがあるのでは」
と話題になった
食卓風景が印象的でした。
原作を書いたのは本間洋平さん。
独特の世界観と
リアリティあふれる文章に
ひきこまれた方も
いるのではないでしょうか。
この本の登場人物は、
学校でも家でも問題児の茂之、
怠け者の兄・慎一、父と母、
そして家庭教師の吉本です。
そこまで多い登場人物の数
ではありませんが、
とても濃い内容の本です。
茂之は学校でも問題があり、
一般的にいえば根性が
曲がっています。
吉本は徹底したスパルタで
茂之に勉強をさせていき、
茂之はゆっくりと成績を
のばしていきますが、
家族には適応できていない
イメージがあります。
少し奇妙な文章と、
この『家族ゲーム』を
茂之の家族はどのような役割
をしているのでしょうか。
たやすくはない「家族」
という存在を考えなおしてみたり、
この独特な雰囲気の世界観に
ひたってみるのもいいと思います。
目次
本間洋平『家族ゲーム』 ゲームに負けた茂之という犠牲者
出来のいい“ぼく”と違って、グズな弟は、家庭教師を何度かえても効果なし。高校進学をひかえ、何とかしたいと焦る母。6人目の家庭教師・吉本の出現で、ついに変化が! 経歴も風貌も型破りな吉本は、弟を逃がさず、体育会系ノリで徹底的にしごいていく。両親の期待は弟にうつり、優等生だった“ぼく”は、だんだん勉強をサボリ気味に……。受験に振り回される一家を描く、第5回すばる文学賞受賞作。
この本では茂之の兄である
慎一の目線でほとんど
語られていますが、
慎一も怠け者的な発言もあり、
登場人物のみんなが、
どこかおかしいように
書かれています。
また、父も母も、茂之には
無関心ではないけれど、
父は怒るだけだったり、
母は泣くだけだったり、
やはり機能不全家族の
ような雰囲気があります。
作中に
「家族というものが相互して、いまの茂之がいる」
というようなセリフがあります。
つまり茂之は家族ゲームに負け、
勉強と将来働かなければ
ならないという
プレッシャーを
押し付けられた敗者であり、
犠牲者のような気がしました。
あなたはこの本を読んでみて、
茂之を可哀想と思いますか、
それとも当然のこと
だったと考えますか。
さいきんはとても核家族が
増えているそうですが、
密室のような家庭に
共感できる人もいるかも
しれませんね。
本間洋平『家族ゲーム』 家族とはなにか考えさせられる
この本では、
祖父と祖母は出てきません。
核家族であることを
書いています。
核家族というのは、
世間では良いようにも
悪いようにも言われています。
家族というのは、
一緒にいてどのように
自分に影響すると思いますか。
近頃はDVや虐待など、
外部の人間が家庭に
入り込みにくいような
状態が増えました。
虐待ではないけれども、
茂之はこの家族といて、
楽しくはないような印象
を受けました。
むしろ、
茂之はこの家族の中で
苦しみながらも、
どこかでバカにしているか
のようなところも見て取れます。
慎一も、どこか客観的に
茂之と父母を見ているような
印象を受けます。
まるで他人事のような
雰囲気です。
家族というのは、
ときどき窮屈で苦しいもの
なのかもしれません。
本来、家族ははどうあるべき
なのか読んでいて
考えさせられてしまいます。
家族とは団らんするものなのか、
それとも現代になってからは
駆け引きするものに
なってしまったのでしょうか。
家族とは本来
どうあるべきだと
一度考えてみるために、
この本を手に取ってみても
いいかもしれません。
本間洋平『家族ゲーム』 家庭教師は家族に踏み込むことができない
吉本は家庭教師として、
茂之の家庭に現れますが、
必要なだけ成績をあげますが、
決して家庭の事情に
踏み込むようなことをしません。
もしかしたら、吉本は
茂之の家族を変えてやることは
できないことがわかっている
のかもしれませんし、
いち家庭教師がひとつの家族に
口出しするべきではないと
わかっているのだと思います。
作中では、ただ勉強を
教えるだけではなく、
スパルタ教育というよりは、
茂之のねじ曲がった根性を
叩き直しにきた
サディスティックな家庭教師
という印象を受けます。
それでも、強硬派の吉本でも、
この茂之の家庭には
踏み込めないのかもしれません。
家庭教師でなくても、
さいきんの学校教育では
家庭内に立ち入れないこと
も多かったり、
「家庭」でなくても、
「教育」という視点からも
読めると思います。
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