アーサー・ランサム『ツバメ号とアマゾン号』舞台はどこ?あらすじと感想!

 

今回ご紹介する一冊は、

アーサー・ランサム

『ツバメ号とアマゾン号』です。

 

八月も半ばを過ぎ、

夏休みも残り少なくなりました

(コロナ禍でもう終ったところもあるようですが)。

 

仮に夏休み文学とでも

言うべきものが存在したなら、

その筆頭は本書

『ツバメ号とアマゾン号』でしょう。

 

作者のアーサー・ランサム氏は

英国の著名なジャーナリストで、

ことにロシア革命の詳細な

取材記事で評判を取りました。

 

このためボルシェヴィキの

シンパだったとも、

MI6の諜報員だったとも

言われています。

 

そのランサム氏が

ジャーナリストしての

多忙の合間を縫い、

 

少年時代にイングランド北部の

湖沼地方に遊んだ思い出を

元に書き上げたのが

本書に始まる十二冊の児童文学書

(所謂ランサムサーガ)でした。

 

まさに休暇に書かれた

休暇の物語というわけです。

 

サーガの中には案外と暗いトーンの

お話も含まれているのですが、

 

『ツバメ号とアマゾン号』

に関して言うなら、

なんの憂いもないお話、

一日遊びほうけてもかまわない(え?)

夏休みのお話です。

 

 

 

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アーサー・ランサム『ツバメ号とアマゾン号』 ツバメ号の乗組員たち

 

 

夏休み,ウォーカー家の4人きょうだいは,小さな帆船「ツバメ号」に乗って,子どもたちだけで,無人島ですごします.湖を探検したり,アマゾン海賊を名乗るナンシイとペギイの姉妹からの挑戦をうけたり,わくわくするできごとがいっぱい! 40年にわたって親しまれてきた冒険の物語,全12巻改訳,刊行スタートです.

 

 

舞台となる湖は、

お話の中では明言されていませんが、

イングランド北部にある

ウィンダミア湖であるとされています。

 

このウィンダミア湖で休暇を

過ごしているウォーカ家の四兄妹

(上からジョン、スーザン、ティティ、ロジャー)

の元に、

 

航海に出ている父親から

一通の電報が届くところから

物語は始まります。

 

実は彼らが宿泊している農場の

艇庫にはツバメ号という

小さな帆船があって、

湖には無人の島が浮かんでいるのです。

 

父親からの電報は

兄妹がツバメ号を駆って、

島でキャンプをすることへの許可でした。

 

お話の内容としてはこれで全部です。

 

兄妹は大まじめに

船員雇用契約書を作ることから始め、

ツバメ号で帆走をし、

島でキャンプをして、一夏を過ごす、

 

これだけです

(屋形船の窃盗事件や、

ジョンがその犯人扱いされたり

なんて事件も起きますが)。

 

ただ、そのそれだけのことの

なんと瑞々しいことか。

 

イングランド湖沼地方の美しい自然や、

手触りさえ感じ取れるような、

帆船の操作の、端正な描写。

 

そして異常なくらいおいしそうな

食事の描写

(筆者は小学生の頃、本書に出てくるのと

同じものが食べたいと駄々をこねて、

母親を困らせた思い出があります)。

 

デティールだけ取り上げれば、

彼らの休暇は少し恵まれすぎ

のような気もします。

 

けれど休暇というのは、

夏というのは、

本来誰にとってもこうしたもの

じゃないでしょうか。

 

 

 

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アーサー・ランサム『ツバメ号とアマゾン号』 アマゾン号の女海賊たち

 

本書で活躍するのは

ツバメ号の乗組員たちだけ

ではありません。

 

そう、あの!

 

冷酷非情で知られる

アマゾン号の女海賊たちです。

 

その正体はナンシイとペギイの

ブラケット姉妹。

 

湖に注ぎ込む小さな河

(海賊たちによりアマゾン川と命名)

沿いのお屋敷に住むお嬢様方です。

 

この二人がなかなかいいキャラで、

ことに姉の方は、

ホントはルース(慈悲)なのに、

アマゾン海賊は無慈悲だからというので、

ナンシイを名乗ると言うほど、

気合いが入ってます。

 

今風なら

「我が右手に封印されし、暗黒邪神の力」

とかボソボソやってる

中二病キャラにあたるでしょうか。

 

押さえきれない美少女感と

お嬢様感があるし、

ましてやいじられ役ではないんですが。

 

ペギイの方はけっこう冷めてる

突っ込み役で、いいコンビです。

 

 

 

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アーサー・ランサム『ツバメ号とアマゾン号』 夢見るAB船員

 

AB船員とは一人前の甲板員のこと。

 

船員雇用契約書を作ったとき、

ウォーカ家の四兄妹は

それぞれ船での肩書きを定めました。

 

ジョンが船長、

スーザンが航海士になり、

次女のティティはAB船員

となったのです(ロジャーはボーイ)。

 

本書でいちばん印象に残った

キャラを問われたなら、

ティティを挙げる人は

多いのではないでしょうか

(ナンシイもがんばりそうですが)。

 

彼女のユニークなところは

きょうだいたちに混じって、

湖に乗り出していく冒険愛好家なのに、

 

どう見てもインドアタイプ

の夢想家であること。

 

世界に、愛読書から採った、

新たな名前を与える彼女は、

仲間たちが世界をほんとうの名で

呼ぶことをひどく嫌う。

 

空想と現実の区別が曖昧などと

言われますが、

それは違う気がします。

 

自分たちがしていることが、

所詮はごっこ遊びであることに

気付いていないわけではなくて、

むしろよく解っているからこそ、

空想が破れることに

より怯えているような感じでしょうか。

 

どんなにきょうだいや仲間と

はしゃいでいても、

彼女だけは少し孤独なのかも知れません。

 

 

 

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アーサー・ランサム『ツバメ号とアマゾン号』 さらば夏

 

どんなに楽しくても、

休暇はいつか終ります。

 

本書に、どこかノスタルジックな

空気感が漂っているのは、

ほとんど一世紀前に書かれた本で

 

いろんな物事が変わって

しまっていると言うだけでは

ないでしょう。

 

 

 

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