雫井脩介『望み』映画化!小説あらすじと感想(角川文庫)

 

今回ご紹介する一冊は、

雫井脩介(しずくい しゅうすけ)

『望み』です。

 

『望み』は、

心理サスペンス小説です。

 

初出は2016年ですが、

2020年に映画化されたこと

で人気が再燃しています。

 

雫井脩介は、

2000年に『栄光一途』で

新潮ミステリー倶楽部賞

を受賞しデビュー。

 

その後2004年に刊行された

『犯人に告ぐ』を初めとして、

『クローズド・ノート』や

『検察側の罪人』などの

ベストセラーを世に

送り出しています。

 

この作品は家族愛を

一つの大きなテーマとして、

複雑な人間の心理を

見事に描いているのが特徴です。

 

「心理サスペンス」と

銘打たれている通り、

読んでいるこちらも

登場人物たちに感情移入し、

ハラハラせずには

いられない作品となっています。

 

それもそのはず、

作者ですら執筆時には

大きく苦悩させられた

というのですから、

その内容がどれほど

私たちの心に訴えかけるのか

と想像できます。

 

雫井脩介渾身の力作にして、

ストーリーも描写も美しい、

傑作と呼ぶにふさわしい

作品です。

 

 

 

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雫井脩介『望み』 のあらすじ

 

 

息子は殺人犯か被害者か――。究極の一気読みミステリ。

年頃の息子と娘を育てながら平穏に暮らしていた石川一登・貴代美夫妻。9月のある週末、息子の規士が帰宅せず連絡が途絶えてしまう。警察に相談した矢先、規士の友人が殺害されたと聞き、一登は胸騒ぎを覚える。逃走中の少年は二人だが、行方不明者は三人。息子は犯人か、それとも……。規士の無実を望む一登と、犯人でも生きていて欲しいと願う貴代美。揺れ動く父と母の思い――。心に深く突き刺さる衝撃のサスペンスミステリー。

 

 

東京近郊に暮らす、

何の変哲もない四人家族が

この物語を織り成す主人公です。

 

建築デザインで生計を

立てる石川一登と、

その妻で校正者の貴代美、

高校一年生の息子、

規士と中学三年生の娘、

雅の四人が、

平和な日々を過ごしていました。

 

ただ、中学生のころから

反抗期を迎えた規士の

周囲に対する態度はあまりよくなく、

また無断外泊なども

度々していましたが、

そういう時期だと

夫妻はあまり気に

留めていませんでした。

 

そんな中、9月のある週末に

事件は起こります。

 

規士が2日経っても

家に帰ってこず、

音信不通となるのです。

 

さらには、息子の友人が

複数人に殺害されたという

ニュースを見て、

二人はいよいよ心配を強めます。

 

息子はなぜ行方不明なのか、

友人を殺害したからなのか、

あるいは被害者なのか……

 

様々な憶測が脳内をめぐる中、

一登は息子の無実を望み、

一方の貴代美はたとえ殺人を

犯していたとしても、

生きていてくれることを

望みます。

 

交錯する二人の思い、

家族それぞれの苦悩、

人間の心理を見事に

描き切った傑作です。

 

果たして二人の「望み」は

どのような形で実現

されるのでしょうか。

 

 

 

 

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雫井脩介『望み』 の魅力

 

この作品の魅力は、

何と言っても描かれる家族愛、

そして見事な心理描写です。

 

雫井の作品では他に

『クローズド・ノート』などでも

洗練された心理描写が

味わえますが、

 

この作品でもさながら

純文学のように、

人間の心理を完全に

描ききっています。

 

そうして描かれる

「家族が殺人犯かもしれない」

という極限の状態で

繰り広げられる家族の苦悩と、

それでもなお家族を

思い続ける愛には、

思わず胸を打たれるもの

があります。

 

ただ、家族愛を描いている

といっても、

この物語は終始ハートフルに

展開されるわけ

ではありません。

 

「サスペンス」

と表現されるとおり

読んでいる間は常に、

行方不明の規士が

どうしているのか、

 

事件の真相は一体

どうなっているのか、

そういったことが

気になってハラハラして

ばかりです。

 

そして、それにあまりに

リアルな一登や貴代美の

心理描写が拍車をかけるのです。

 

家族愛が輝くのは、

あまりに過酷で極限の状態

だからこそ、

逆説的にそれが際立って

美しく見えるからでしょう。

 

厳しい冬の寒さを

知っているからこそ、

春の暖かさが

身にしみるのです。

 

 

 

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雫井脩介『望み』 映画『望み』

 

この小説は

2020年に堤真一さんと

石田ゆり子さんの主演で

映画化されました。

 

監督は『TRICK』シリーズ

が有名な堤幸彦で、

他に『金田一少年の事件簿』や

『天空の蜂』、

『十二人の死にたい子供たち』

などのように、

サスペンスやミステリものを

得意とされる方です。

 

さらに主題歌を

森山直太朗さんが歌うなど、

明らかに制作側の

「本気」が伝わってくる

ような布陣ですね。

 

この小説は心理描写が

優れていると何度も

述べましたが、

それが映像化作品

となったとき、

問われるのは

役者さんの技量です。

 

キャストを見ると、

期待せずにはいられない

名だたるメンバーが

名を連ねており、

思わず映画館に足が

向いてしまいそうですね。

 

近年小説が映画化されること

がかなり多いですが、

人間の心理に重きを

置いているだけに、

文章と映像とでとても違った良さ

が味わえることが

予想されます。

 

原作を読んでいないかたも、

読まれた方も、

どちらも楽しめるに

違いありません。

 

ですが、二つの作品の

それぞれの良さを

味わうためにも、

ぜひとも一度書店で

お手にとってみてください。

 

 

 

 

 

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