チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』あらすじと感想!映画化決定「女性たちの絶望を訴える」

 

今回ご紹介する一冊は、

チョ・ナムジュ

『82年生まれ、キム・ジヨン』

です。

 

2016年刊行以来、

韓国で100万部を超える

ベストセラーとなった「キム・ジヨン」

その後、台湾で翻訳出版され、

たちまちベストセラー1位に。

日本で出版されたのは2018年冬ですが、

じわじわと人気を博し、

さらにはベトナム、中国、イタリア、

チェコ、フランス、インドネシア、

スペインでも出版が決まっています。

全世界に向けて発信されていく「キム・ジヨン」

1982年に韓国で生まれ韓国で育った

一韓国人女性の物語が、

なぜこれほどまでに大反響なのでしょうか。

日本では韓国ドラマのブームや

韓流スターの活躍もあり、

お隣の国なのでなんとなく様子も

ニュースなどで見聞きすることもでき、

わりと韓国という国は

身近なイメージがありますが、

その歴史や文化、風習などは

本書を読むと改めてなかなかに強烈で、

中でも「女性性」に焦点を当てて

臭いものの蓋を思い切って外した本書は、

ぜひ、唸ってため息をつきながら、

女性にはもちろん

男性にこそ読んでいただきたい一冊です。

 

 

 

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チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』あらすじ

チョ・ナムジュ (著), 斎藤真理子 (翻訳)

 

チョン・ユミ、コン・ユ共演で映画化
2020年10月9日(金)より
新宿ピカデリー他全国ロードショー決定!
社会現象を巻き起こした大ベストセラー小説

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2019年間ベストセラー(「単行本 文芸書」部門第8位/トーハン調べ、「単行本 フィクション」部門第10位/日販調べ)
6か月連続売上第1位! (2019年1-6月 海外文学部門/トーハンTONETS i調べ)

日本でも圧倒的共感の声! 「これはわたしの物語だ」
異例の大ヒットで、ついに16万部突破!!

ある日突然、自分の母親や友人の人格が憑依したかのようなキム・ジヨン。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児…彼女の人生を克明に振り返る中で、女性の人生に立ちはだかるものが浮かびあがる。女性が人生で出会う困難、差別を描き、絶大な共感から社会現象を巻き起こした話題作!

 

まだまだ男の子の誕生の方が

手放しで喜ばれていた1982年、

キム・ジヨン氏はソウルで女の子として

生を受けます。

公務員の父と主婦の母、二つ上の姉と、

5年後に生まれる弟、

そして父方の祖母の6人家族で

暮らしていきます。

小学校、中学校、高校、大学へと進学し、

卒業後は広告代理店で働き、

大学の先輩と結婚して30歳の時、

女児を一人もうけます。

IT関連企業に勤める夫と、

3歳になった娘と3人家族で

ソウル郊外のマンションに住むキム・ジヨン氏は、

しかし壊れ始めていました。

思い起こせば小学校時代から、

彼女のこれまでの人生の一つ一つの選択は

常に切実で悩ましく、

疑問に疑問を重ねながら

慎重におこなわれてきました。

小さな喜びとどうにもならない

絶望のはざまでずっと生きてきました。

それは、「女性だから」という理由なき理由

に因る理不尽がほとんどでした。

そんな、これまでの人生での

あきらめとうんざりの繰り返しが

積もり積もってこのような結果を

もたらしたのですが・・・

 

 

 

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韓国独自の歴史と風潮のなかで女性が生きることの難しさ

 

読み終えて、本を閉じた瞬間に大きなため息。

キム・ジヨン氏は実在するのではないかと思う反面、

どうか実在してほしくないと願う気持ち、

その二つが見事に交錯しました。

韓国。

なんと封建的で古い体質の国・・・。

妊娠してもお腹の子が女の子なら、

申し訳ありませんと謝り、

泣きながらでも当然のように

中絶をするという状況が、

90年代まで続いていたというのですから

もう本当に驚きです。

生まれた瞬間から女の子は負い目を感じて

生きていかなければならないという事実。

歓迎されない生きづらさから始まって、

一生、生きづらいまま終えるなんて・・・。

しかしこの本を読んだ女性の大半が、

私もキム・ジヨンだ、これは私のこと、

とあまりにも自己と重なりすぎる共感を

抱いて声を上げている現実を見ると、

これは小説でありながら思い切った告発であり、

韓国の未来を揺るがす警鐘であり、

ようやく、書かれるべくして書かれた作品

なのではないかと思わずにはいられません。

こうして世に出てきたことを喜ばしく思い、

韓国のこれからに期待するばかりです。

 

 

 

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社会と向き合い闘う女性への賛歌

 

今のこの世の中においてもなお、

男女差別や女性蔑視がここまで日常的に

酷いのかと思わず目をそむけたくなる背景には、

この国独自の「徴兵制があることは否めません。

男性だけに課せられる兵役。

それがあるからこそ男性は、

社会において有利で当然!男子こそ宝!

という風潮がはびこり続けているのでしょう。

そしてそれを裏返したのが女性嫌悪というもの。

 

「女があんまり賢いと会社でも持て余すんだよ。」

 

これは就活中にキム・ジヨン氏が出くわし、

絶望をもたらされた一言です。

一生懸命頑張って優秀な成績を収めても、

女性である限りそれはなんの意味もなさない

というこの現実の壁。

結婚後も、やむなく仕事を辞め、

孤独に日々子育てに奮闘し、常に睡眠不足で、

たまたまベビーカーで眠った子どもを隣において、

公園のベンチで安いコーヒー一杯飲んで

一息ついただけでも

「ママ虫(夫の給料で優雅に暮らす妻を揶揄するスラング)」

と見知らぬ他人に皮肉を言われる始末。

ドラマなどで見る韓国人女性は強くて

賢いイメージでしたが、

そうであるためには厳しい現実を乗り越えて

のことだったのですね。

韓国では、女性は男性のために

存在する生きものとして扱われていた時代が長く、

そんな話が本書でもキム・ジヨン氏の母オ・ミスク氏

の体験談として登場します。

しかしオ・ミスク氏は、

それらを踏み台にして生きてきた強さがあります。

突き抜けて、気持ちがよいほどたくましいのです。

母の代からキム・ジヨン氏の代へ、

そして娘の代へと移り変わるなかで、

どうか社会と向き合う女性の未来が

輝かしいものであるように、

祈るほかありません。

 

チョ・ナムジュ (著), 斎藤真理子 (翻訳)

 

 

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