柚月裕子『凶犬の眼 (角川文庫)』あらすじと感想!映画化も

 

今回ご紹介する一冊は、

柚月 裕子(ゆづき ゆうこ)

『凶犬の眼』です。

 

 

どうして手に取って

読み始めたのかは

全く覚えていませんが

活字に吸い寄せられるように

読み進めたことを覚えています。

 

以来著者柚月裕子さんの作品を

読み倒していますが

やっぱり個人的に

このシリーズが好きです。

 

『孤狼の血』『凶犬の眼』

残り5分の1くらいで

嫌な予感がしてきて

泣けてきます。

 

1作目『孤狼の血』は

映画化もされた作品ですが

発表の時点で

次回作『凶犬の眼』は

制作が決定していたそうです。

 

ビジュアルインパクトも

大切で魅力もありますが

小説ならではの楽しみ方、

注目ポイントを紹介します。

 

 

 

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柚月裕子『凶犬の眼』 あらすじ

 

悪徳刑事・大上章吾の血を受け継いだ日岡秀一。広島の県北の駐在所で牙を研ぐ日岡の前に現れた最後の任侠・国光寛郎の狙いとは?日本最大の暴力団抗争に巻き込まれた日岡の運命は?『孤狼の血』続編!

 

 

日本最大の暴力団「明石組」と

それに牙をむく「心和会」

の抗争である明心戦争。

 

仁義の世界では

盃を交わすことで親子、

兄弟等の血のつながりを

もつとされますが

 

たいていの場合が

そうであるように

明新戦争も親の仇うちが要因でした。

 

心和会の中核人物国光と

前作に登場した

刑事大上の最後の相棒であり

本作では後継者となった

主人公日岡との偶然の出会い

があります。

 

その出会いでお互いが

誰であるか瞬時に悟りあいますが

 

なすべきことがあり、

最後には必ず日岡の手に下ると

国光は男の約束をします。

 

そんな昔気質の国光の男気に

惚れてか指名手配犯でもある

国光と警察官である日岡は

あろうことか盃を交わすのです。

 

事態は一件落着の体を見せます。

最後はやはり

言葉にもありますが「巡り合い」。

 

そのことを作中の人物も

読者も同時に意識させられます。

 

 

 

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柚月裕子『凶犬の眼』 日岡の成長

 

しかし、大上ならどうするか………。
目を閉じて、しばらく考える。

 

 

おそらくシリーズを通して

登場する主人公ですが、

前作では大上の

駆け出しパートナーとして

のっけから盛大に

殴られまくられて

大上のやり方に不満たらたらでした。

 

理不尽な思いも

たくさんしたのです。

 

小料理屋志乃の晶子に

大上の息子について

聞いた時もなんとなく

聞いただけに

とどまっていたりで

 

大上の死をもってしか

心に響くところが

ないくらいでした。

 

その日岡が上に引用した感情

を持つようになったのです。

 

師と仰ぐ姿勢が見えますよね。

 

人間関係を円滑にするには

相手の立場にたって

考えるのが肝要とは

よく言われるところです。

 

これは言わば社会的ルールから倫理、

道徳の範疇だと考えます。

 

さらには、他の人ではなく

「この人だったらどう考えるだろうか」

と個人レベルで想像するのが

仁義なのではないでしょうか。

 

つまり日岡は引用文通り

大上ならどうするか、

 

社会、倫理、道徳を超えて

国光個人を考えて

仁義を切ったのです。

 

正しいかどうかは誰にも

わからないところですが

大上は喜んでいると思います。

 

盃を交わすシーンで

事態の演出のため

国光からあえて傷を受けます。

 

演出ではありますが

社会的ルールを破って

仁義を切ったことの象徴と

解釈しました。

 

 

 

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柚月裕子『凶犬の眼』 国光の魅力

 

「なあ、あんた。わしと兄弟分にならへんか」

 

 

『凶犬の眼』から

登場する人物です。

 

大上がいなくなってしまった

日岡にとっては

それに変わる存在と言えます。

 

ただ決定的に大上と違うのは

大上が師であるなら

国光は兄弟の盃を交わしている

のであくまで

日岡と対等の立場にいる、

もしくはそうありたいと

国光は考えての仁義の通し方

であったという点です。

 

作品を読み進めていくと

主人公でなくても

敵役であったとしても

どうしても感情移入して

惹きつけられていく

登場人物がいます。

 

国光がまさにそれで

読みながら登場すると

何かかっこいい粋な事を

してくれるのではないか

 

堅気には手を出さず人情に

厚い面を見せてくれるのでは

ないかと期待してしまうのです。

 

そして知らず知らずこの人に

認められたいと日岡に

心を重ねているのです。

 

 

 

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柚月裕子『凶犬の眼』 二人の人間の「覚悟」

 

国光を逮捕する功労として

日岡は刑事に復帰します。

 

全てやりとげて晴れ晴れと

刑務所で過ごす国光は

どこにいようとも国光らしさを

見せながら日々を送っていましたが…。

 

最後に長編警察シリーズ2作目

『凶犬の眼』

 

著者である柚月裕子さん

述べたかったこととは

 

相容れない世界に生きる

二人の人間の「覚悟」

だったのではないかと思います。

 

頬の傷に触れながら、日岡は思う。
国光と盃を交わした自分は、刑事という名の極道だ。
国光同様、目的のためなら外道にでもなる『凶犬』だ。

 

 

 

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