戸田山和久『哲学入門』要約と書評!現役哲学者が語る「過去の哲学者は登場しない本」

 

今回ご紹介する一冊は、

戸田山 和久(とだやま かずひさ)

『哲学入門』です。

 

『哲学入門』は哲学者である戸田山和久に

よって書かれた、現代哲学の入門書です。

戸田山和久は哲学の中でも

「科学哲学」を専門としており、

哲学と科学のシームレス化という

現代の社会に根差した研究を行っています。

本書も、主に現代のタイムリーな哲学を扱っていて、

他の哲学の入門書とは一線を

画しているのが特徴です。

哲学の入門書といえば、

大半はオリエントの哲学からカント、

そしてニーチェなどの近代哲学を網羅した

「哲学史」の解説書であることが多いですよね。

しかし本書にはそういった、

言わば「過去の存在」はほとんど登場せず

代わりに現在も現役で哲学という学問を

究めている人々の思想が紹介されます。

今を生きている私たちだからこそうなずける、

勉強になる、

そんなぜひとも一度読んでほしい哲学書です。

 

 

 

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戸田山和久『哲学入門』のあらすじ

 

神は死んだ(ニーチェもね)。いまや世界のありようを解明するのは科学である。万物は詰まるところ素粒子のダンスにすぎないのだ。こうした世界観のもとでは、哲学が得意げに語ってきたものたちが、そもそも本当に存在するのかさえ疑わしい。「ことばの意味とは何か」「私たちは自由意志をもつのか」「道徳は可能か」、そして「人生に意味はあるのか」…すべての哲学問題は、根底から問い直される必要がある!科学が明らかにした世界像のただなかで人間とは何かを探究する、最もラディカルにして普遍的な入門書。他に類を見ない傑作です。

 

「意味」という言葉は私たちが

普段よく目にしたり、使ったりする言葉です。

では、その「意味」とはいったいなんだろう、

と深く考えることから本書は始まります。

現代では科学も発展して、

大抵のことは解明された世の中になりました。

物質の構造、などというのもその中の一つですよね。

しかし、「意味」というのは物質として確かに

この世界に存在しているわけではありません。

では、存在しない架空のものなのかというと、

決してそんなこともありませんよね。

本書ではこの「意味」のような、

あるかどうか曖昧なものを、

「ありそでなさそでやっぱりあるもの」と呼び、

私たちに分かりやすく解説してくれます。

そして「意味」に始まる本書は、

様々な視点からこの

「ありそでなさそでやっぱりあるもの」を分析し、

やがて「人生の意味」という

壮大な議題に帰着するのです。

 

 

 

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『哲学入門』の特徴

 

本書は間違いなく哲学の入門書ですが、

冒頭でまずこう語られます。

「本書には歴史上有名な哲学者はほとんど出てこない。プラトンもアリストテレスも、デカルトもヘーゲルも、ニーチェもフッサールもハイデガーも出てこない。」

 

哲学入門と銘打っておきながら、

有名な哲学者が出てこないというのは

一体どういうことかと、

首をかしげてしまいそうですが、

実はこのことこそが本書の最大の特徴なのです。

著書である戸田山和久は、

東京大学文学部哲学科を卒業したのち、

名古屋大学で教鞭を執っている

現役の哲学者であり、

これからの哲学を担う第一人者です。

ただの哲学史の解説書とは一線を画し、

今現在アクティブな哲学、

これから主流になっていくであろう哲学を

分かりやすく説明する、それが本書だと言えるでしょう。

事実、哲学史をテーマとした解説書は、

キリスト教世界の価値観にもとづいた哲学を

紹介しているなど、

あまりピンとこないことが多いものです。

しかし本書は、現代に即した哲学の解説書

であるからこそ、

今を生きる私たちにとって、実感しやすく、

理解のしやすいものになっています。

 

 

 

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『哲学入門』で語られる思想

 

イデア論やスコラ哲学といった

遥か昔の思想ではなく、

現代で主流かつ、

現代に即した哲学が本書では

語られると述べました。

では、具体的にそれはどういった

哲学なのでしょう?

一つの例が、「情報」に関する哲学です。

ITが発達し、情報化社会と呼ばれて久しいですが、

果たして「情報」とは何なのか。

私たちが普段気にも留めないようなことを

深く掘り下げ、

私たちに新たなインスピレーションを

与えてくれるのが本書です。

本書で解説される哲学の中で、

もう一つ紹介すべきなのが

「自由」に関する哲学でしょう。

香港と中国政府の関係性といった問題は、

今現在非常にアクティブな問題ですよね。

しかし、どうにも複雑で難しい問題

であるというのは事実です。

そもそも自由とは何か、

日本という民主主義国家に住んでいれば

私たちは自由なのか。

今実際に起こっている問題について

考えるときにも、

本書は大いに助けとなってくれます。

その他にも、

現代人が生きていくうえで

必要な思想が詰まった一冊です。

それでいてコミカルな文章で、

ジョークを交えながら解説しているので、

とても読みやすく仕上がっています。

ぜひ一度読んでいただけたら、

社会を見る目がきっと変わることでしょう。

 

 

 

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