本田壱成『水曜日が消えた』小説版感想!中村倫也主演で映画化も!

 

今回ご紹介する一冊は、

本田 壱成

『水曜日が消えた』

です。

この世に、

絶対 ということはないにしても、

ありそうで99.9%ありえない

フィクション中のフィクションであるこの物語を、

どんなジャンルに分類したらいいのでしょう。

ファンタジーや近未来小説とも違うし、

サスペンスでもない・・・

あえて言うならミステリーなのでしょうか。

でも私は読んでいるうちに、

それらをも飛び越えた哲学書にさえ

思えてしまいました。

主人公の体に起こった不可思議な異変。

それを通して、終始 自分だったら

どう考えるだろう?どうするだろう?何を選ぶだろう?

と自らへの問いかけの連続でした。

さらには、自分とは何だろう?という自問。

とても複雑で混乱する設定なのに、

ものすごく読みやすくて、

ぐいぐいと物語に引き込まれていくのは、

ありえないことが起こっている背景が、

それと相反して実にリアリティに溢れている

せいかもしれません。

これはきっと本田壱成さんの才能なのだと思います。

ただの閉塞感からの解放ではなく、

悩ましい気持ちでどっぷりと物語に浸った後に

ホッと胸をなでおろして空を仰ぐように本を閉じる、

そんな世界をぜひ味わってみてください。

 

 

スポンサーリンク

 

 

本田壱成『水曜日が消えた』あらすじ

 

僕は1週間のうち、火曜日しか生きていない。

他の曜日は、まったく違う人格の僕が生きている。
でも火曜日は図書館も閉まっているし、飲食店も休みだし、ちょっと退屈だ。
そんなある日、目覚めたらそこは水曜日だった。
火曜日の僕は、水曜日に生きている。つまり、水曜日が消えた。

自分自身とは何なのか。人を愛するとはどういうことか。

中村倫也主演の衝撃作、感動のノベライズ。

※電子書籍には特典として、映画の設定資料を収録。

 

あることをきっかけに、

人格が7つに分かれてしまった主人公。

しかもそれが月曜日から日曜日までの、

1週間の曜日によってきっちり切り替わる

というのですから大変です。

火曜日の僕は火曜日の朝にしか目覚めず、

火曜日をしか生きられず、

他の曜日に他の人格を持った僕が

何を思いどう過ごしているのかを知りません。

とはいえ、元は一人の人間なので、

7つの人格は一つの同じ体や顔、

同じ脳を共有し、一つの同じ家に住んでいます。

情報は、各曜日がそれぞれその日の行動を

報告書に記すことと、

要件やメッセージがあれば付箋にメモをして

部屋に貼っておくことで共有します。

さしずめ、シェアハウスで暮らす、

顔を見たことのない7人といったところでしょうか。

16年間お世話になっている

主治医の先生の指示に従って、

睡眠と薬によりこの状態を維持してきたのですが、

あることをきっかけに火曜日の僕が

水曜日を暮らすことになりました。

そこで見たもの、出会った人は、

これまで閉じ込められていた火曜日からの脱出を

試みる激しい動機となり、

火曜日はついに水曜日を侵食してしまいます。

果たして、バランスを崩した主人公は、

手術によって別の一つの人格に生まれ変わるか、

または月曜日~日曜日の中の誰かひとりに集約

されるかの選択を迫られます。

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

「自分」とは誰なのか?

 

火曜日の僕目線で描かれているこの小説、

読みながら前半ずっと私が感じていたのは

浮遊感でした。

カフェもワゴン販売も定休日、

図書館すらもやっていないハズレの火曜日

にのみ生きる僕は、

日々の楽しみとか目標とか夢とか、

そんなワクワクどころか、

酷く落ち込んだり悩んだりすることもなく、

ただふわふわと当てがわれた火曜日を生きていました。

月曜日担当の僕は音楽活動に勤しみ、

水曜日担当はスポーツ万能、

木曜日の僕はイラストのセンス抜群、

金曜日は園芸の造詣に深く、

土曜日は豊富なプログラミングのノウハウを持ち、

日曜日の釣りの腕前はプロ級です。

でも、火曜日はそれを実感できません。

他の曜日を生きる僕は、

自分でありながら自分ではないからです。

では火曜日は何が得意なのか、といえば・・・

それが何もありません。

他の曜日の自分を羨ましがったり妬んだりする

あたりはまるで他人のようです。

しかしある時ふいに水曜日に潜り込んだ火曜日の僕は、

あこがれの図書館に足を踏み入れ、

素敵な司書さんとも出会い・・・

世界がどんどん広がっていきます。

そのあたりから火曜日の浮遊感は、

目覚めや希望に少しずつ変化して

いったように思います。

実際、誰にでも二面性や多面性はあります。

そのギャップがその人の魅力と

されている場合もあります。

しかし、曜日ごとに確実に分離されているこの状況は、

それをはるかに超え、

自分が誰なのかも見えなくなり、

火曜日は火曜日だけが自分であると捉えています。

フィルターによって7通りに分断されている

脳の境目をなくす手術を主治医から勧められた際にも、

手術なんて嫌だ。

そんなことをして新たな自分が生み出されるくらいなら、

どうにかして火曜日の自分だけが生き残ってやる!

たとえ他の曜日が消えてなくなったとしても。

と苦しみます。

他の曜日に生きる自分も自分なのに・・・。

あなただったら、どう考え何を選択しますか?

 

 

スポンサーリンク

 

 

すべてはつながっている、幸せになろう

 

主治医から、一つの新しい人格を持つ人間

に生まれ変わるための手術を勧められたとき、

火曜日の僕は、完全に他の曜日の自分を敵のように

思っていました。

自分だけ、この火曜日の僕だけがあとの全員を

乗っ取って生き残ってやる!ぐらいの勢いでした。

しかし徐々に気付いていくのです。

月曜日も水曜日も、

そしてすべての曜日の僕はつながっていて、

過去からもつながっていて、あの人とこの人も、

あの時間とこの出来事もつながっていて。

きっかけは、ある動物。

そして僕が選んだ道とは・・・?

つながっていることに気づいてからの火曜日の僕は、

あんなに敵対心むき出しだった他の曜日の自分を、

大切な存在として、愛おしく感じ始めます。

読んでいる私は、

そんな火曜日の僕をとてもとても愛おしく感じ始めます。

そしていつしか一生懸命応援していました。

幸せになれよ!

幸せって、自分を愛するところから

始まるんだなぁと改めて実感もしたりして。

この物語は登場人物が少ないです。

なにしろ月曜日から日曜日までの僕は、

人格が違えどすべて同一人物の僕

あとは主治医の先生に図書館司書の瑞野さん、

花屋のお兄さん、小学生のタカキくん、

そして最も重要な役割を担っているのが、

医療雑誌編集者の一ノ瀬という女性です。

いわば彼女がキーパーソンと言ってもいいでしょう。

彼女にもぜひ幸せになってもらいたいです。

あちこちに落ちている鍵を拾って、

それで次々とドアを開けながら進んでいったら、

最後は気持ちよい風のそよぐ真っ青な大空の下

に立てたような、

そんな感覚が印象に残る作品でした。

中村倫也さん主演の映画のほうもぜひ観てみたいです。

 

 

スポンサーリンク

 

 

本田壱成『水曜日が消えた』映画版

 

『水曜日が消えた』は、映画化されています。

中村倫也さん主演で、

2020年6月19日より全国公開中です!

中村さんが役柄にぴったりでした。

個人的に主題歌もすごく好きです。

 

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

おすすめの記事