黒川博行『疫病神シリーズ』第一弾「疫病神」書評!アウトローな男達の欲望が渦巻く!

 

イケイケのヤクザ桑原保彦と、

建設コンサルタントである二宮啓之

のコンビが大暴れする

黒川博行の代表作「疫病神」シリーズ。

2020年現在、

『疫病神』『国境』『暗礁』

『螻蛄』『破門』『喧嘩(すてごろ)』

『泥濘』まで7作

出ていることからも、

その人気の程は抜群ですね。

今回ご紹介するのは、

シリーズ記念すべき第一作「疫病神」です。

今から23年前の1997年の作品で、

その当時世間で話題に上がっていた

産業廃棄物処理場問題がメインテーマとして

取り上げられています。

今ではほとんど使わない公衆電話が

多く出てきたりと、

若い人が読むと分かりずらいという所もあるのですが、

それでも黒川作品特有の疾走感は抜群。

桑原と二宮。

超人気凸凹コンビの快進撃は、

この「疫病神」からスタートします。

 

 

 

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産廃処理場建設をめぐるアウトロー達の闘争

 

黒川作品共通ですが、舞台は大阪

父親がヤクザだった二宮啓之は、

便宜上は「建設コンサルタント」として、

建設現場でのヤクザ絡みのトラブルを解決する

事を生業としていました。

所謂「前捌き」というやつで、

工事を妨害するヤクザを、

ヤクザを以て追い出すというものです。

悪を以て悪を制すですね。

その伝手で、二宮は小畠という男から

産廃処理場建設に関する相談を受けます。

産廃処理場建設には、無数の申請書及び許可書

といった書類が必要でした。

当然ながら、絡んでくるもでかい。

その中で、産廃処理場建設を目論む小畠に対し、

水利組合の橋本という人物が、

処理場建設同意のための補償金の吊り上げ

を要求します。

その額なんと2,000万

元々3,000万に加えての更に2,000万です。

小畠の交渉に対し、橋本は素知らぬ顔。

そこで、小畠は二宮に対して橋本の同意書を

もらってくるよう依頼をするのです。

手段は問わない、すなわち弱みを握り、

脅す。成功報酬は500万

しかし、これが全てのトラブルの始まりでした。

橋本を追う中で、ヤクザに絡まれ、

ボコボコにされてしまう二宮。

元々建設現場での仕事「前捌き」を頼んでいた

桑原保彦にそのヤクザの情報を求め、

ここに二宮と桑原のコンビが誕生するのです。

水利組合の補償金の吊り上げに加え、

小畠総業の放火も発生。

そして小畠は失踪。

小畠の産廃処理建設を妨害する大きな力

裏に存在した、巨大な大元締めの存在と金

二宮と桑原は、それを暴き大金を手に入れようと、

抜きつ抜かれつ大阪の街を疾走します。

 

 

 

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黒川作品人気一番のコンビ誕生

 

大阪を舞台にした、

産業廃棄物処理場をめぐるヤクザ達の金と権力の争い。

そう聞くととっつきにくそうな作品の印象を受けますが、

この作品を機に爆発的人気を得る桑原と二宮のコンビが、

その空気をどこかユーモラスにしてくれます。

桑原と二宮ですが、決して協力関係ではありません。

「金」という目的が同じなだけで、

何もかも違う2人。

だからこそ、その大阪弁の掛け合いも

ボケとツッコミのように進んでいきます。

セリフのみでの描写が多く、

勢いよく読めてしまうのも

口数の減らないこの2人のおかげでしょうか。

二宮は一応堅気なので、

読者はこの二宮の立場になって

読み進めることになると思います。

本当に二宮であれば、

桑原のような喧嘩っ早くイケイケの性格、

しかもヤクザなら当に「疫病神」

しかしその喧嘩の強さと怖いモノなしの性格は、

男なら絶対に憧れます。

男が惚れる漢とでも言いましょうか、

底知れぬ魅力を持つ人物です。

二宮は口の達者なうだつの上がらない

建設コンサルタントですが、

その金に対する執着は凄い。

作品の中で計4回ヤクザに捕まり、

殴られ、吊るされ、どぶ川に飛び込み、

時計も鍵も免許証もなくしてしまうのですが、

桑原の助けもあり何とか凌いでいくのです。

普通だったらあきらめてしまいますよね。

自分のシノギは最後までやり遂げる。

こう考えると、二宮もです。

お互い離れたいと思いつつも、

必要な時は利用し合い共働する腐れ縁

それが2020年まで続いているのです。

多くの人を魅了している証拠ですね。

 

 

 

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複雑な利害関係を理解するために、メモの用意を!

 

あくまで中心は桑原と二宮ですが、

そこに企業や暴力団、更に所属する人物が多く登場し、

どの団体がどことつながっていて、

誰と誰が敵対しているのか

読んでいるうちにわからなくなってしまう

事があると思います。

しかもテーマは多くの人に

馴染みがないであろう産業廃棄物処理場問題

中々難しいですね。

せっかく桑原と二宮が疾走感あふれる

テンポ良い会話で進んでいくのに、

それが理解できなければ勿体ないと思います。

そこで私は、登場人物の名前と所属をメモし、

どの一派なのか、誰の味方なのか、

誰と誰がつながっているのかを

理解するようにしていました。

話の中心となるのは、

小畠が産廃処理場を作ろうとした

三沢谷という土地の利権をめぐる争いなのですが、

そこに絡んでくる団体、

人物がとにかく多くて複雑。

しかし、理解するとより楽しめるようになりますよ。

あとお勧めは、ドラマから入る事。

現に私もそうでした。

北村一輝演じる桑原、

濱田岳演じる二宮はドハマりです!

これ以上の配役はないというくらい。

これでイメージを作り、

小説版「疫病神」を読んで理解を

深めるのもいいでしょう。

『泥濘』まで七作出ている疫病神シリーズの第一作。

これを読まずに疫病神シリーズは語れません。

最凶コンビの誕生を、お楽しみください。

 

 

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