目次
『天地明察』(著者:冲方丁)
二十数年という歳月をかけて
日本独自の暦をつくった渋川春海が
主人公のお話です。
この主人公は幕府の碁打ち衆でしたが実は
「算術」や「星」が好きでした。
才能を見込まれて若くして
幕府の改暦事業を任されますが、
苦悩し、挫折を繰り返し成長していきます。
主人公のひたむきで真っすぐなその姿には
感動を覚えるほどです。
天体術、算術、宗教とか様々な学問が絡みあい、
物語は進みます。
読み進めながら、
思わず頭の中に図形や天体を思い浮かべてしまう
人も少なくはないはずです。
主人公を助ける保科正之、水戸光圀、関孝和、
本因坊家などといった
歴史上に名を遺す人物たちが、
主人公を後押しする姿や、
かける言葉も魅力的です。
いつもと変わらない天上の星々。
『からんことん』という神社に奉納された
算術の絵馬の音。
『拍手をもって祈念するとき、
天地が開き、光明が溢れ出る。』
という言葉とともにたくさんの魅力が
この本には詰まっています。
4代将軍家綱の治世、日本独自の暦を作る事業が立ち上がる。当時の暦は正確さを失いずれが生じ始めていた――。日本文化を変えた大計画を個の成長物語として瑞々しく重厚に描く時代小説! 第7回本屋大賞受賞作。
『火星年代記』(著者:レイ・ブラッドベリ)
地球に比較的近く、
大きさなども似通っている火星は、
時に人類が移住する候補として語られたりもします。
そんな火星と地球を舞台にした
『火星年代記』は、
SFの巨匠レイ・ブラッドベリの代表作で、
映画化された作品も人気を博しました。
この長編小説は26の短編で構成されていて、
SFながら当時のアメリカをはじめとした
人類の文明を痛烈に批判した作品です。
もし人類が火星に移住したら、
本当にこんなことが起こるのでは?と
考えずにはいられないようなリアリティに富んでいて、
まるで実際の歴史をたどるかのように読めてしまいます。
火星を題材にした作品は数多ありますが、
その中でも特に傑作であると
言っても過言ではないでしょう。
人類は火星へ火星へと寄せ波のように押し寄せ、やがて地球人の村ができ、町ができ、哀れな火星人たちは、その廃墟からしだいに姿を消していった……抒情と幻想の詩人が、オムニバス中・短篇によって紡ぎあげた、SF文学史上に燦然と輝く永遠の記念碑。新たな序文と二短篇を加えた〔新版〕を底本とする電子書籍版登場。
『三軒茶屋星座館』(著者:柴崎竜人)
アメリカにいたはずの弟が
八歳の娘を連れて帰国します。
三軒茶屋駅の裏手で星座館兼バーを
営んでいた和真と弟とその娘の三人での
生活が始まります。
和真の店は様々な人が訪れます。
なぜか和真の語る神話の物語と
訪れる人々の語る内容がぴたりとシンクロします。
和真の神話を語る語り口は軽妙で気負うことなく
すんなりと心に溶け込んできます。
星座の神話は内容によってはわかりにくく
難解な部分もありますが、
和真の語りで星座や神話がとても身近なものに
感じてくるのは不思議です。
この作品は大変人気がありシリーズ化も
されていて引き込まれるように読んでしまう人も
多いのではないでしょうか。
和真を中心に繰り広げられる人間模様に
ほっこりと暖かな気持ちになります。
この作品を読み終わった後は
ついつい夜空を見上げてしまうこと
間違いなしです。
「和真は俺の兄貴で……そして今日から、月子のもうひとりのお父さんだ」三軒茶屋の裏路地にひっそりと佇むプラネタリウム。店主の和真のもとに、十年ぶりに弟・創真が帰ってきた。娘だという美少女・月子を連れて。常連に闖入者、奇妙な客たちに囲まれ、”親子三人”の共同生活が始まるが……。読めば心温まる、人生讃歌エンターテインメント!
『夜の光』(著者:坂木司)
「主人公の成長」と「日常の謎」を
基本スタイルに執筆されている
坂木司さんの長編小説です。
天文部に所属している4人の高校生が主人公で、
彼らは「スパイ」として活動しています。
一見すると高校生のおふざけにも思えますが、
それぞれがそれぞれの置かれた状況で、
悩み、助けを求めているのです。
この小説は青春小説ですが、
今青春を謳歌している学生たちだけでなく、
大人にも読んでほしい作品になっています。
それも昔あった青春を懐かしむ、というのはもちろん、
これからを生きていく上でも
様々なことを学ばせてくれるのです。
高校生の多感な感情、人と人との距離感を
絶妙な筆致で描いていて、
読み終えると
大切な誰かと星空を見上げたくなります。
約束は交わさない。別れは引きずらない。大事なのは、自分に課せられた任務を遂行すること。正体を隠しながら送る生活の中、出会う特別な仲間たち。天文部での活動を隠れ蓑に、今日も彼らは夜を駆ける。ゆるい部活、ぬるい顧問、クールな関係。ただ、手に持ったコーヒーだけが熱く、濃い。未来というミッションを胸に、戦場で戦うスパイたちの活躍を描く。オフビートな青春小説。
『星へ行く船』(著者:新井素子)
始めて読んだSFは『新井素子』
という人も多いのではないでしょうか。
その頃のSFは少し大人で難しく、
近づきがたい感じがしていました。
新井素子はそんな少女たちを夢中にさせて
くれた作家のひとりです。
普通っぽい女の子の主人公のあゆみが、
地球から家出をして夢をかなえるために
宇宙に飛び立ちます。
しかし宇宙でもいろいろな事件に遭遇してしまいます。
事件を通してあゆみが成長していく姿が
ファンタジックに描かれています。
当時コバルト文庫から登場して、
現在は完全版という形で手直しされて出版されています。
コバルト文庫で読んだ少女は、
時を経てまた違った視点から読みことができると思いますし、
現在の少女たちも、
冒険や胸がキュンっとする出来事に
ワクワクドキドキしながら読める思います。
「星空は、大きくて、寒々としていて、怖くて、そして---そして、とても、美しかった。」
主人公あゆみの言葉に、今この時、
何を感じることができるか
読んでみてはいかがでしょうか。
『後宮に星は宿る 金椛国春秋』(著者:篠原悠希)
こちらの記事で詳しい書評をご紹介しています↓
『星の王子さま』(著者:サン=テグジュペリ)
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