今回ご紹介する一冊は、
高田 郁(たかだ かおる)著
『あきない世傳 金と銀(九) 淵泉篇』
です。
江戸時代の呉服屋同士の
いざこざや人間模様を
描いた作品です。
シリーズ9作目、
待望の新作ということで、
シリーズのファンの方からも
多く読まれているそう。
本作品からいきなり
読み始めても問題なく
楽しめますので、
これまでの作品を
読んだことがある方、
ない方どちらにも
おすすめできます。
目次
高田郁『あきない世傳 金と銀(九) 淵泉篇』 女店主が数々の苦難を乗り越え前に進んでいくストーリー
大坂から江戸に出店して四年目、まさにこれから、という矢先、
呉服太物商の五鈴屋は、店主幸の妹、結により厳しい事態に追い込まれる。
型彫師の機転によりその危機を脱したかと思いきや、今度は商いの存亡にかかわる最大の困難が待ち受けていた。
だが、五鈴屋の主従は絶望の淵に突き落とされながらも、こんこんと湧き上がる泉のように知恵を絞り、新たなる夢を育んでいく。
商道を究めることを縦糸に、折々の人間模様を緯糸に、織りなされていく江戸時代中期の商家の物語。
話題沸騰の大人気シリーズ第九弾!!
物語の主人公は、
呉服太物商の女店主である幸。
もともとは大阪で商売を
広げていましたが、
4年前より東京江戸にも進出し、
着実に顧客獲得してきました。
ある年の暮れ、
何の前触れもなく
幸の妹が手紙を残して
店から姿を消します。
姿を消したのは妹だけでなく、
お店にとってその時
一番大切なものといっても
過言ではないほどの宝物が、
一緒になくなっていました。
宝物の完成に関わってきた
技師たちは幸の手前
明るく振る舞いますが、
幸はそんな人たちを
励ましつつも
妹と宝物の行方を追います。
妹の行動により
窮地に立たされた幸とお店ですが、
実はその宝物を作った
技師たちがある工夫を
していたおかげで、
ピンチを切り抜ける
一筋の光が見えてきます。
幸はお店にとって、
そして姿を消した妹
にとって一番良い結末を考え、
状況をコントロール
していきます。
そのおかげで、
誰もがハッピーと
なるような形で
事件は一件落着となります。
となるはずだったのですが、
次の問題がすぐに起きます。
次から次へと、
自分たちの進む道を
塞ぐような事件が
起きることに幸は戸惑いつつも、
店主として
「状況を打破するのは私しかいない」
という責任感の元に
積極的に行動し、
トライ&エラーを
繰り返していきます。
江戸という狭い街では
いろんな目がある中で、
苦しい立場に置かれた幸たち
に表立って味方をしてくれる人
はほとんどいません。
ですが中には、
幸を信頼し裏でこっそり
支えてくれる人たちがいました。
すぐに窮地から抜け出すこと
は出来なくても、
お店の人たちや支えてくれる人たち
の応援を力にして、
地道にやっていきます。
高田郁『あきない世傳 金と銀(九) 淵泉篇』 この時代ならではの調整や処世術
何か問題を解決しようとするとき、
私たちは「調整」という
行動に出ます。
関わっている人の権利や
メンツを考慮し、
誰かと誰かの利害やメンツが
ぶつかる場合には
うまくやりとりして
文句が出ないようにする、
ということです。
現に私たちが会社や地域の集まりなど
で自分の意見を通したり
何かルールを
変えたりするときには、
いろんな人や物との調整をし、
物事が円滑に進んでいくように
コントロールしていると思います。
本作品は江戸時代の話なので、
同じ「調整」でも考慮すべき
ポイントが違うように思います。
現代は「利権」という言葉が
よく一人歩きするように、
誰かが手にする利益が
重視されることも多いですが、
この時代は何より
「メンツ」を守ることが
最優先だったようです。
「メンツ」を守り、
組織の上下関係を崩さないこと。
持ちつ持たれつ、
助け合いで「恩」を
大切にすること。
そういったことが
行われていたのだと、
読んでいてとても感じました。
大切にするものの
優先順位は違うけれど、
ちゃんと上の人を立て
みんなが納得するように
「調整」を進めていく、
その処世術は現代に
通じるところがあると思います。
高田郁『あきない世傳 金と銀(九) 淵泉篇』 純粋にストーリーを楽しみたい
時代が今と違うこともあり、
読み始めは描写や背景の説明
が続くので微妙に
読みづらいところが
あったように感じました。
ですが読み進めていくと、
いつの間にストーリーに
のめりこんでいってしまう、
この状況が
どう打破されていくのか
気になってしまう、
そんな流れになっている
と思います。
主人公が困難に
立ち向かう姿には
勇気をもらえますし、
読み終わって
「よし私も明日から頑張ろう」
という気持ちになります。
ちなみに、
本作品から何かを学び
生かすのであれば、
「逆境にも負けず、諦めない気持ち」
「困ったときほど冷静に」
といったような内容が
出てくるかと思います。
ただ、はじめから
「この本から何かを得よう」
と意気込むよりは、
単純にストーリーを
楽しんでほしいなと思います。
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