今回ご紹介する一冊は、
佐野徹夜 著
『君は月夜に光り輝く』
です。
佐野徹夜さんは京都出身の
小説家です。
『君は月夜に光り輝く』は
デビュー作で幸運にも
実写版映画化・アニメ化も
されています。
2019年3月に永野芽郁と
北村匠海主演にて映画化された
『卓也君のせい生きたくなった』
というセリフに
感動したことを思い出します。
発光病という不治の病で
亡くなった作家の作品
『一条の光』よりも
夜空に光が解けていくのを
みて思っていたよりも
きれいだとの
卓也の気持ちにそんな風に
見てもらうのもいいかも
と思いました。
この小説の中では登場人物
それぞれの生と死に
向き合っています。
作品の中での中原中也の詩や
「ロミオとジュリエット」からも
死ということから
どう生きていくかを
書かれているのです。
まみずの卓也を思う気持ちは
純愛以外の表現はありません。
この素敵な作品について
話していきます。
目次
佐野徹夜『君は月夜に光り輝く』 発光病
選考に関わる全ての人の心を震わせた、第23回電撃小説大賞≪大賞≫受賞作
この圧倒的感動に、山口幸三郎、綾崎隼も大絶賛!
読む人すべての心をしめつけ、4,878作品の頂点に輝いた、最高のラブストーリーがここに――。大切な人の死から、どこかなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」で入院したままの少女がいた。月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。
余命わずかな彼女に、死ぬまでにしたいことがあると知り…「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」「本当に?」この約束から、止まっていた僕の時間がふたたび動きはじめた――。「しっとりと心に染み渡る、美しい恋物語」「参りました。泣きました。生きていく――そのための力を読者にプレゼントしてくれる」と、なみいる選考委員も涙した、第23回電撃小説大賞≪大賞≫受賞作。
刊行にたずさわったみんなの心を揺さぶった、“今を生きる”すべての人に届けたい感動のラブストーリー。
発光病は不治の病で
原因も治療法も
確立されていません。
感知することは
基本的になく
たいていの場合
一生を病院で過ごす
ことになります。
成長するにつれて
病気は進行して
ある日突然発症します。
多くの場合、
十代や二十代前半に
発症すると致死率は
高くなるといわれています。
その症状の特徴は
皮膚の異変が起こり光ります。
それは夜、月の光に
照らされると
体が蛍光色のように
ぼんやりと淡く光と
放っていくのです。
病状の進行により
その光は徐々に強さを
増していくと言われています。
この発光病は実際の病気では
ありませんが
まるで蛍のようで
儚さを感じる
架空の病気です。
その発光病を発症した
まみずは卓也に
「死ぬまでにしたいこと」
のリストを作って
代わり実行してもらうことで
自分がまだ生きていることを
確認していたのです。
どちらかといえば
インドアの卓也は
まみずのリストがなければ
経験できない
バンジージャンプを
体験したりするなんて
ある意味いい経験が
できていたようです。
特に自分よりも
長生きするだろう亀を
飼いたいといったときは
生きるということに
本当に向き合っているので
尊敬の気持ちしかありません。
佐野徹夜『君は月夜に光り輝く』 中原中也
卓也の姉鳴子は
彼氏が亡くなるまでは
とても活発な女性でした。
そんな彼女も自殺してしまい
生前使用していた
国語の教科書を
手に取ってみると、
中原中也の「春日狂想」
という詩の最初の1行目
に赤線が引かれていました。
「愛するものが死んだ時には自殺しなきゃあなりません」
と書かれていたのです。
卓也はそれを初めて
目にしたときは
そんなわけないだろうと
理解することができ
なかったのです。
まみずの死期が近づくにつれ
鳴子の気持ちが
なんとなく分かるように
なってきました。
春から夏に季節も移り変わり
卓也がお見舞いに通うようになり、
いつもまみずは元気そうだが
検査の結果も芳しくなく
病状は進行しているようでした。
彼女が母に会いたくないときも、
卓也に会って天体観測をしたいと
お願いします。
それならば病院の屋上でも
できると彼女を誘い出します。
まみずが発光病だということを
忘れていた卓也は
彼女の体はうっすらと、
ぼんやりと、
淡く光を放っているのをみて
驚くというより綺麗だと
思ったのです。
その日は天気も良くて
望遠鏡からみる星も
はじめて万華鏡をみた子供
のように
新鮮な驚きに
満ちていたのです。
そんな2人の距離は
自然と近い存在と
なっているようでした。
佐野徹夜『君は月夜に光り輝く』 君とロミオとジュリエット
高校の文化祭での
ジュリエット役を
卓也は勝ち取りました。
そのことをまみずに
報告すると
「好きな小説家のお墓参りに行って欲しい」
と言われます。
彼女の好きな作家は
静澤聰で『一条の光』
の作者です。
その本には発光病に
おかされて主人公が
描かれていた私小説で
作者は20代で発症して
亡くなってしまっています。
そのお墓は随分と辺鄙な
ところにあり
墓碑には「無」と
書かれていたのです。
その小説には火葬場の煙突から
上る煙がかすかな光と
放っていたのをみて
「人の死は美しいと感じる」
と表現されて
話は終了します。
まみずの症状は進行していて
彼女自身が希望を
なくしていたところで
ロミオとジュリエットの幕
が上がったのです。
最後のシーンで
ジュリエットはまだ
死んでいないからと
言いながら泣けるシーンを
面白いものとしたのでした。
文化祭から数日して
お見舞いに卓也が出かけると
面会謝絶となり死期が
近いことを知ります。
死なない人間なんていない
生きることへの執着を
1つ1つなくして
いきたかっただから
「死ぬまでにしたいこと」を
リストにしたのだと
伝え始めました。
卓也に出会う前は
自分が死ねばそれで終わりで
自分には認識できないこと
だと思っていたとも
話してくれました。
まみずは最後に
「私の代わりに生きてください…」
と告げてから14日間生きた彼女は
きっと幸せだったに
違いありません。
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