今回ご紹介する一冊は、
千早 茜(ちはや あかね) 著
『ガーデン』です。
帯に「言葉が怖い植物が怖い」
とあったので
一体どんな内容なのかと
興味を惹かれて
手に取りました。
初めて千早さんの作品
に触れましたが
情景描写から雰囲気まで
読みやすく
好きな世界観だったので
一気見してしまいました。
著者である千早茜さんは
自ら幼少期に海外で
生活された経験があるので
多分に本著にそれが
生かされていると感じます。
誰もが内に持っているガーデン。
千早さんが見せてくれた
羽野君のガーデンが
どのようなものか
その片鱗だけでも
お伝え出来たらと思います。
目次
千早茜『ガーデン』 あらすじ
放っておいて欲しい。それが僕が他人に求める唯一のこと――
ファッション誌編集者の羽野は、花と緑を偏愛する独身男性。帰国子女だが、そのことをことさらに言われるのを嫌い、隠している。女性にはもてはやされるが、深い関係を築くことはない。
羽野と、彼をとりまく女性たちとの関係性を描きながら、著者がテーマとしてきた「異質」であることに正面から取り組んだ意欲作。
匂い立つ植物の描写、そして、それぞれに異なる顔を見せる女性たち。美しく強き生物に囲まれた主人公は、どのような人生を選び取るのか――。
雑誌の編集者である
主人公羽野は
帰国子女であることに
限ったことではないが
他人との関係に一線を
画す達人で、
それなりのつきあいの
距離を保ちながら
自らは植物を愛して
やまない草食男子。
まわりに女子がいないわけ
でもなく変人扱いされて
いるわけでもないが
自分と同じように
色々なことを考えている
女子がいたりで
その変貌を見るうちに
自らの変化にも気付いていく。
千早茜『ガーデン』 羽野君
正直羽野君が近くに
いたら苦手なタイプです。
同じように当たり障りなく
接するに留まると
想像するので
羽野君の方でも
そうするだろうと思います。
だからといって
羽野君が自身のことを
思うような評価はしません。
だいたい自分でする
自己評価など
自己満足にしか過ぎないし
評価は他人がすること
だと思うからです。
いつでも自分が
判断ばかりして
選択できると
思ったら大間違いです。
それがまかり通っているから
あなたは人と深く
関われないのです。
かといって羽野君が
嫌いなわけではありません。(え)
まず帰国子女だから
何だというのだろう。
誰も羨ましがったり
するばかりではありませんし
偏見も個人的にですが
持ったことはありません。
どうしてそんなに
こだわるのか
全くわかりませんでした。
踏み込まれたくないので
自分も踏み込まない
という姿勢は
悪くないと思います。
とてもスマートで
当たり障りのない接し方は
逆に優しくてベストですし
自分もそうされたいと
思いました。
作中の女性たちが
どう感じたかは
各々紹介していきます。
千早茜『ガーデン』 対美人
羽野君はそれなりに女性と
関わり自分のガーデンに
春夏秋冬四季折々の
女性の花を咲かせている
光源氏さながらのモテ度
を誇ります。
ちょっと言いすぎましたが
モデルの女性は
そのガーデンに華をそえる
存在にすぎません。
にもかかわらず
その美しさがあれば
自分ではない誰かが
慰めてくれるよと
おざなりですが
思いやりをみせるのです。
千早茜『ガーデン』 対ヒナ
自分の部屋に入れたり
植物の世話を頼んだり
羽野君としては相当気を
ゆるしていた相手だと
思います。
それだけに成長も
みたかったし
どんな花を咲かせるか
見届けたかったのでは
ないかと思います。
彼女の羽野さんは
内に入らせないという意見に
「それは違うよ…」
と返答した羽野君。
何を言おうとしたのか
最後まで聞いてみたかったです。
最後までヒナには
優しい返答でした。
千早茜『ガーデン』 対タナハシ
他の人はどうなの?
とたいして聞きたくもない
風を装いながら
もしくは本気なのでしょう
けれども素直に彼女には
聞けたし
気をゆるした方の人
なのではないでしょうか。
結局羽野君は
冗談交じりのプロポーズ的な
発言に間違っ答えを返した
誰でもの中の1人になって
しまったわけですが、
それでいいのだよ羽野君。
いきなり切羽詰まった
テンションに
合わせられる人なんて
存在しないから。
ましてや正答もありません。
千早茜『ガーデン』 対理沙子
羽野君は結論的には
理沙子に惹かれていた
と考えます。
帰国子女であることを
見抜かれて言わなかった
理由を述べる時も
何よりボーイフレンド(?)が
お手上げで理沙子を
羽野君に押し付けた夜も
これ以上ないくらい
見事な対応でした。
人の思い出や記憶には
誰も干渉することはできない
そう信じていた羽野君が
その心地よい記憶のかけらを
さらけ出したのです。
語りのシーンがこの作品で
一番美しかったです。
千早茜『ガーデン』 感想
理沙子が去ったと聞いて
ボーイフレンドに怒りを
覚える羽野君ですが
うらはらにうっすら
笑いながらそつない対応を
とります。
珍しくムキになる一面を
見せますが
ボーイフレンドの方が
羽野君に見切りをつけて
去っていきます。
理沙子に自分から連絡を
取ろうと考えること
理沙子に会おうとすること
羽野君の成長と言えば成長です。
あえて言いますが
羽野君きみは
そのままで十分魅力的です。
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