七月隆文『君にさよならを言わない』切なくピュアで感動するラノベ短編集!

著者の七月隆文(ななつき たかふみ)は、

大阪府生まれ、「Astral」(電撃文庫)でデビューしました。

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(宝島社)が

10代から20代の口コミで大ヒットし、人気作家となった方です。

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」は、累計100万部を超え、

福士蒼汰主演で映画化もされています。

今回ご紹介する「君にさよならを言わない」は、

同じ宝島社から2015年に出版された本で、

事故で幽霊が見えるようになった主人公の明が、

そのことがきっかけで知り合った女性の幽霊の生前の悩みや

未練を解決していく物語です。

幽霊となった女性たちの想いが繊細に描かれ、

切ないけれど心温まる連作短編になっています。

2016年には続編である「君にさよならを言わない2」が出版されており、

非常にオススメの一冊です。

 

 

 

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「君にさよならを言わない」あらすじ

 

 

 

普通の高校生だった「ぼく」、須玉明が得た力は、この世に留まる霊の姿が視えるというものだった。
初恋の幼なじみ、画家を目指していた元クラスメイト、通り魔殺人の犠牲者、大会前に病死してしまった陸上部の少女。
未練を残した少女たちと出会った明は、視ることと話すこと以外、特別な力を持たなかったが、
彼女たちの事情を知り、その魂を救おうと奔走する。

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』の著者が贈る、切ない幽霊譚。

 

 

事故がきっかけで、幽霊が見えるようになった主人公の明は、

六年前に死んだ幼馴染であり、初恋の相手である桃香の幽霊と再会します。

もちろんほとんど周りの人に幽霊は見えず、寂しい想いをしていた桃香ですが、

明と話し、この世でやり残していたことを果たして、

「ありがとう」と言いながら成仏します。

明はその姿を止められないとわかっていながら、引き止めたい、

でも、桃香の望みを叶えてあげたいと葛藤します。

しかし、成仏する時の桃香の満足したような微笑む顔を見て、

涙を浮かべながらやってよかったと思うのでした。

その後、幼馴染と絵の合作を行っていたが、

最後の作品の制作中に事故で亡くなってしまい、

最後の合作を仕上げたくて幽霊となった同級生の妙名さん。

一番の親友と仲違いをしたまま通り魔に刺されてしまい、

親友としての感謝と変わらぬ想いを伝えたくて幽霊となった川名さん。

陸上部でリレー仲間と全国大会を目指していたのに、

急性白血病で亡くなってしまい、残された仲間が仲違いしてしまう。

彼女らと一緒に最後のリレーを走りたくて幽霊となった野田さん。

彼女らと出会い、彼女らの想いを叶えるために明が奔走する連作短編集です。

 

 

 

 

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女性たちの心情を描いた繊細な表現

 

七月先生の最大の魅力は、何といっても繊細で情緒豊かな表現です。

その時の登場人物の想いや感情、様々な描写が読者によく伝わり、

思わず感情移入させられてしまいます。

幽霊となった女性たちだけでなく、残された幼馴染、親

友たちが、彼女たちのことをどう想っていたのか、

そして、彼女らの関係性や想いを知った明自身の想いも深く描かれています。

本作は4つの短編から構成されているのですが、

筆者は、毎作どこかのシーンで泣いてしまいます。

高校生らしい不器用で真っ直ぐな想いや、

真っ正面からぶつかっていく素直さに触れ、

自分の青春時代を思い出す読者の方も多いのではないでしょうか。

一方、ありふれた日常はほっこりする雰囲気で描かれています。

時には、高校生のユーモア溢れるやり取りや、心の中のツッコミに、

読んでいて思わず笑ってしまう場面もあり、切なさだけでなく、

面白くも読める作品となっています。

そういった日常風景も、心情描写に負けず劣らず丁寧かつ繊細な表現

で描かれており、登場人物の想いがより伝わってくるなと思う作品です。

 

 

 

 

 

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主人公である明の魅力

 

明自身は特に目立ったところもなく、ごく平凡な高校生です。

でも、根が優しく、幽霊に頼まれては嫌とは言えない性格で、

何だかんだで幽霊たちに巻き込まれます。

しかし、巻き込まれたのにも関わらず、

「救われた幽霊と、残された人の喜びを見てきたから(引用)」

と協力していく明の人間性に魅かれます。

困っている他人のために何かしてあげたいと思うような、

優しく穏やかな明ですが、どうやら恋愛には疎いようです。

明は義妹の柚と一緒に住んでいるのですが、

柚が明のことを好ましく想っている気持ちに全く気づきません。

でも、お互いのことを、家族として思いやっている。

そんな柚とのやり取りも魅力の一つです。

筆者個人としては、

「義妹とはいえ、一途で可愛らしい柚の気持ちに気づけよ! この朴念仁!

と思ってしまいますが。

これに、共感してくださる読者の方も多いのではないでしょうか。

というように、本作は、登場人物とその想いを繊細に描いた切なくも温かい作品

となっています。

是非一度、本屋さんでお手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

 

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