今回ご紹介する一冊は、
柴田 勝家 著
『アメリカン・ブッダ』です。
この本を書いた柴田勝家さんは
SF作家として有名で、
この武将のようなお名前は
ペンネームとなっております。
ハヤカワSFコンテストで
大賞を受賞され、
以後、第49回星雲賞日本短編部門
を受賞しており、
これからの活躍を
応援したくなるような作家さんです。
1987年生まれで、まだ若く、
とても期待の持てる
SF作家とも言えますね。
この『アメリカン・ブッダ』
という本では、
VR技術だけで生きる人々のことや、
遠野物語に出てくるようなものを
「記憶子」として書いたり、
タイトルの
「アメリカン・ブッダ」でも
時間軸が交錯していくような
短編を書いています。
特にメインの
「アメリカン・ブッダ」では、
もしかしたらこれから先
なにか災害などで起こるかもしれない
「大洪水」ということについても
書かれていて、
遠く離れた話のように
思えないのが特徴です。
まだSFに触れたことがない、
これから面白いSFを読みたいと
思っている人には読みやすい
1冊かもしれませんよ。
目次
柴田勝家『アメリカン・ブッダ』 民俗学とSFが合わさった6篇の短編小説たち
もしも荒廃した近未来アメリカに、 仏陀を信仰するインディアンが現れたら――未曾有の災害と暴動により大混乱に陥り、国民の多くが現実世界を見放したアメリカ大陸で、仏教を信じ続けたインディアンの青年が救済を語る書下ろし表題作のほか、VR世界で一生を過ごす少数民族を描く星雲賞受賞作「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」、『ヒト夜の永い夢』前日譚にして南方熊楠の英国留学物語の「一八九七年:龍動幕の内」など、民俗学とSFを鮮やかに交えた6篇を収録する、柴田勝家初の短篇集。解説:池澤春菜
『アメリカン・ブッダ』は、
表題作ももちろんですが、
「ブッダ」のような、
あまり海外のSFでは
見られない言葉や、
民俗学のような要素を
含んだ6篇の小説で
できています。
星雲賞を受賞した
『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』など、
洗練された小説から始まり、
現実世界で生きることの
できなくなったアメリカで、
インディアンの青年が
語り続ける短編小説など、
楽しめる要素が
たくさんあります。
仮想空間の短篇から、
最後も仮想空間で
締めくくられるという、
現実世界と仮想世界について
考えさせられてしまう1冊です。
あなたは仮想空間だけで
できた世界を
想像できるでしょうか。
VRゴーグルをつけて、
リアルでは体験できない世界
を見て感じたり、
スマホはもしかしたら
その先駆けなのではないかと
思ってしまいそうです。
この短篇集は、
柴田勝家の初めての
短篇集です。
まだ若手の作家さん、
と聞くと、
とても期待が持てますよね。
柴田勝家『アメリカン・ブッダ』 将来ないとは言い切れない可能性のある短編たち
VR技術はいまや私たちの
身近にあるような、
優れた技術ですよね。
そのVR技術しか使わない民族がいる、
という設定の短編がありますが、
なんとなく私たちも
バーチャル世界でだけで
生きていくのだろうか、
と思ってしまうような感じがします。
スマホが当たり前の生活に
なりましたが、
もしかしたら仮想空間だけ
が当たり前で、
夢だけを見続ける生活が
増えるのかもしれません。
かと思えば、
遠野物語のような不思議な現象と、
登場人物の過去を「記憶子」
という粒子で起きる現象だと
いうように書いた短編もあります。
もしかしたら、
不思議な現象もこの先解明されて
いくのではないかという気がしますね。
アメリカン・ブッダでは、
ひとりのインディアンが、
違う時間軸でありながら、
人々に「公聴会」を開いています。
SFあるあるかもしれませんが、
その分、身近に感じられる1冊
かもしれません。
柴田勝家『アメリカン・ブッダ』 日本に根付いた文化をSFとして取り上げている
この本の短編のうち、
何本かは、
日本の土俗的な文化を
取り上げています。
遠野物語の「オシラサマ」や、
また別の短編では
「隠れキリシタン」や
「マリア観音」という単語
も挙げられています。
どんなSFのイメージでも、
日本文化でしかない独特のSFって
あまりないような気がしますよね。
アメリカン・ブッダの
「ブッダ」という言葉も、
SFでは聞きなれない言葉
かもしれません。
ブッダの言葉を借りたSF
というのも、
なかなかほかに見ないような
気がします。
でも、それが日本だけでの
SFになることだって
あるかもしれませんよね。
日本でしか生まれなかったかも
しれないような言葉や文化を
取り入れた短編もあり、
ただSF特有の難解な言葉の連続で、
SFはとっつきづらかったという人
にもおすすめしたい1冊です。
SFが大好きなあなたも、
そうでないけれど興味を
持ったあなたも、
ぜひ手に取ってみてください。
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