星新一『ボッコちゃん』ショートショート神様による魅惑の作品!あらすじと感想

 

「ボッコちゃん」は、

SF作家星新一(ほししんいち)さんの

ショートショート集です。

星新一さんの作品量は1000を超えるほどで、

どれもクオリティが高いことで知られています。

そのことから、「ショートショートの神様」

と呼ばれるほどです。

また、筒井康隆、小松左京と並んで

「SF御三家」とも呼ばれています。文

豪・森鴎外とは遠い親戚でもあります。

星新一さんはSF作家として知られていますが、

「ボッコちゃん」には、

それ以外にも様々なタイプのショートショート

収録されています。

風刺が効いていたり、

自分の身にも起こりそうなことだったり……。

読んだ方なら誰でも、

好きなエピソードが必ず1つは

見つかるのではないでしょうか。

代表的なところを紹介しながら、

作品の魅力に迫っていきます。

 

 

スポンサーリンク

 

 

短く、リアリティのあるSF譚

 

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。

 

SFといえば、

壮大な世界観や緻密な設定の

長編小説を想像しますが、

星新一さんのショートショートは、

その名の通り短く、

それでいてリアリティがあるところが魅力的です。

「SFはあまり読んだことがない」

「理系じゃないから、設定が理解できないかも」と、

SFを読むことにためらいのある方でも

気軽にチャレンジできます。

たとえば、「来訪者」は、

地球に宇宙人がやってくるところから始まります。

地球人たちは、

宇宙人たちが何を目的にやってきたのかわかりません。

お金やら技術やら、いろんなものを見せますが、

宇宙人たちはいい反応を示しません。

彼らの目的とは、いったいなんなのでしょうか。

「生活維持省」は、タイトルの通り、

生活維持省に勤める役人の1日を描いたお話です。

上司からたくさんのカードをもらい、

そこに書いてある行き先を回るのが仕事です。

このお話の世界は、戦争も生存競争もない平和な世界。

その鍵を握るのが生活維持省なのですが、

その仕事内容とは……。

「ボッコちゃん」を読みながら、

ディストピアや宇宙ものなど、

自分の好きなSFの傾向を見つけてみるのも

面白いのではないでしょうか。

 

 

スポンサーリンク

 

 

ぴりっと辛い風刺

 

社会風刺も、星新一さんの作風のひとつ。

人間の愚かなところや、

社会の普遍的な問題を鋭く見抜き、

親しみやすい作品にしてしまうところが、

すごいのです。

表題作の「ボッコちゃん」は、

とあるバーが舞台。

マスターは、美しい女性型のロボット・ボッコちゃん

店で働かせています。

ボッコちゃんは酒に酔わず、

客あしらいにも絶妙に冷たいところがあり、

彼女のおかげでバーは大繁盛。

しかしある日、ボッコちゃんに

入れあげる青年が出てきて……。

「おーい でてこーい」では、

台風が過ぎたあとの村に、

大きな穴が見つかるところから始まります。

 

「おーい、でてこーい」
若者は穴にむかって叫んでみたが、底からはなんの反響もなかった。彼はつぎに、そばの石ころを拾って投げこもうとした。
「ばちが当るかもしれないから、やめとけよ」
と老人がとめたが、彼は勢いよく石を投げこんだ。
(星新一『ボッコちゃん』「おーい でてこーい」新潮文庫)

 

やがて人々は、

穴にいろんなものを捨てるようになります。

原子炉から出たゴミや、

不要になった機密文書、

浮浪者の死体……。

読み進めるうちに自分たちのことのように

思えてきて、ページを繰る手が止まりません。

 

 

スポンサーリンク

 

 

ぞっとしながらも笑ってしまう

 

星新一さんの作品を読んでいると、

「こんなことはありえない」と

「でも、もしかしたらどこかで起きているかも……」と

いう気持ちが交互に訪れます。

星新一さんは個人や特定の社会を

感じさせない作風ですが、

その中でも、

個人的な事情や設定を扱った作品も

いくつか収録されています。

「殺し屋ですのよ」では、

会社の経営者であるエヌ氏のもとに、

殺し屋だという女性が訪ねてきます。

それも、目的は殺すことではなく、

エヌ氏の殺してほしい人物を聞き、

依頼を引き受けることだというのです。

エヌ氏は女性をなかなか信用しませんが、

ついに殺人を依頼します。

その結果はいかに……。

また、「暑さ」は、夏の日の午後、

交番に1人の男が訪ねてくるところから始まります。

男は「自分を捕まえてほしい」と言います。

何もしていない人を捕まえるわけにはいかないという巡査に、

「自分は何かをしそうなのだ」と話す男。

どうやら、そう考える理由には、

夏の暑さが関係しているらしいのですが……。

ぞっとするけれど面白い、

いや、ぞっとするからこそ面白いのかもしれません。

「ボッコちゃん」は、

星新一作品の入門としておすすめの

ショートショート集です。

 

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

おすすめの記事