湊かなえ『豆の上で眠る(新潮社)』あらすじと感想!タイトルの意味とは!?

 

今回ご紹介する一冊は、

湊かなえ

『豆の上で眠る』です。

 

『告白』や『Nのために』など、

メディア化された作品も

たくさんある湊かなえさんの作品。

 

湊かなえさんの作品は、

読んだら嫌な気持ちになる

ミステリー小説の略、

イヤミスと呼ばれる作風

のものが多くあります。

 

読んでいる間も、

読み終わった後も、

陰鬱とした気持ちになる作品

が多いですが、

その世界観に惹かれる読者も数多く、

ミステリー小説ファンの間では

「イヤミスの女王」とも呼ばれ、

人気を集めています。

 

もちろんそんな嫌に気持ちになる

作品ばかりではありませんが、

今回ご紹介する

『豆の上で眠る』は、

イヤミスと呼ぶに

ふさわしい作品です。

 

 

陰鬱とした世界観の中に隠された、

解き明かせない謎と、

イヤミスの中でも湊かなえさんが

伝えたいメッセージを

探りながら読んでみてください。

 

 

 

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湊かなえ『豆の上で眠る』 タイトルの隠された違和感

 

行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。あなたの「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎。私だけが、間違っているの? 13年前に起こった姉の失踪事件。大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。押さえつけても亀裂から溢れ出てくる記憶。そして、訊ねられない問い――戻ってきてくれて、とてもうれしい。だけど――ねえ、お姉ちゃん。あなたは本当に、本物の、万佑子ちゃんですか? 待望の長編、刊行!

 

 

小学生の頃に姉・万佑子を

誘拐された少女、結衣子。

 

様々な証言をもとに必死に

万佑子を探す結衣子と

その家族でしたが、

二年後、姉と名乗る少女が

帰ってきます。

 

しかし戻ってきた姉に、

大学生になった今でも

どことなく違和感を

感じる結衣子。

 

戻ってきた姉は本物の姉なのか。

その違和感の正体とは?

 

この作品は大学生になった結衣子が、

姉が誘拐された当時を

振り返るかたちで

話が進んでいきます。

 

現在の結衣子と子どものころの

結衣子の視線が、

交互に繰り返され、

私たちは過去と未来を

行き来することになります。

 

その中で結衣子は改めて

姉の違和感に向き合うのです。

 

文庫版のあとがきにもあるのですが、

『豆の上で眠る』というタイトルに、

「なんのことだろう」と

思われることでしょう。

 

これはマイナーな

アンデルセン物語

『えんどうまめの上に寝たおひめさま』

をもとにつけられた

タイトルです。

 

読み終わって、

もう一度タイトルを見たとき、

この豆が結衣子が

ずっと感じていた違和感の

モチーフなんだろうな、

と私は思いました。

 

 

 

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湊かなえ『豆の上で眠る』 誘拐事件の渦中にいる子どもの視線

 

「何が本物なのか…?」

 

この作品では、

終始疑いを持ちながら

進んでいきます。

 

それは姉が本物なのか、

というテーマはもちろんですが

捜査が進むにつれて、

発覚する事実や証言に

ついても同様です。

 

それは結衣子という

子どもの視点から物語を

見ているからだと考えられます。

 

事件の渦中の人物にも関わらず、

子どもというだけで

蚊帳の外に追いやられる結衣子。

 

それでも事件の影響は

確実に結衣子に降りかかり、

結衣子の不安は

どんどん増幅していきます。

この人を信じても

いいんだろうか。

 

結衣子の視線を通して、

様々な人間の言動や思惑が

疑わしく、

誰が姉を誘拐した犯人でも

おかしくない、

とまさに疑心暗鬼。

 

誰も信じられない状況に、

本当にいやな気持になります。

 

危うい、子どもの視線で見た

誘拐事件を描くという点で、

稀有な作品と言えます。

 

 

 

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湊かなえ『豆の上で眠る』 湊かなえ作品は決して解けないミステリ

 

事件発生から二年後、

姉は発見されますが、

その姉に違和感を感じる結衣子。

 

しかし示される証拠は

どれも自分と姉が姉妹だという

事実ばかりとなってしまいます。

 

では自分の抱える違和感の正体

とは何なのか?

一切の謎は解き明かされないまま、

物語は怒涛のクライマックスへ。

 

改めて感じますが、

湊かなえの作品は

普通の謎解きミステリ

ではありません。

 

なぜならどれだけ推理しても

犯人が分からないからです。

 

ですからこの作品を読むときは

謎が解けた喜びよりも、

登場人物の心理描写が重要なのです。

 

読み終わったあと、

この終わり方には

無理がないだろうか、

とか読者が納得できない

としても、作品の中では、

間違いなくそれが真実なんです。

 

だから湊かなえさんの作品を

読んですっきりしようと

思わないでください。

私は決して光の見えない沼の中を、

不安いっぱいで

かき分けていくホラー小説

だと思って読んでいます。

 

この作品ではすべての謎を

解き明かした時、

私たちが求めていた

「本物」とは何だったのか、

ということを問うてきます。

 

ぜひこの夏、

湊かなえさんのイヤミスの世界

に飛び込んでみませんか。

 

 

 

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