アレン・エスケンス 『償いの雪が降る』書評とあらすじ!バリー賞他3冠受賞作

 

今回ご紹介する一冊は、

アレン・エスケンス 著

『償いの雪が降る』

です。

 

作者のアレン・エスケンス氏

は25年間、

刑事専門の弁護士でした。

 

現在は引退し、

本書がデビュー作と

なります。

 

原作は、アメリカでは

刊行直後から話題となり、

 

2015年にバリー賞

ペーパーバック部門最優秀賞、

レフトコースト・クライム・ローズバッド賞

デビュー作部門最優秀賞、

シルバー・フォルシオン賞

デビュー作部門最優秀賞

という3冠に輝きました。

 

また、amazonの

「2014年・

私たちの大好きな本

(Books We Loved 2014)」

の中の1冊としても

選ばれており、

 

翻訳家の務台夏子さんが

この作品を見つけ出して

日本語訳に取り組んで

くださったおかげで、

 

ようやく2018年、

日本語版が発表され、

私たち日本人も読むことが

できるようになりました。

 

このような素晴らしい小説

が海を越えてやってきて、

日本語に生まれ変わった幸運を、

 

私たちはみすみす

逃したりしては

絶対にもったいないです。

 

ぜひ一度手に

取ってみてください。

とても読みやすい

日本語訳です。

 

 

 

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アレン・エスケンス 『償いの雪が降る』 あらすじ

アレン・エスケンス (著), 務台夏子 (翻訳)

 

余命わずかな殺人者に、僕は雪を見せたかった。
バリー賞ほか3冠! 心揺さぶるミステリ

母子家庭で育ったジョーは実家を出て念願の大学進学を果たす。授業で身近な年長者の伝記を書くことになり、祖父母も父親もいないため介護施設を訪れたところ、末期がん患者のカールを紹介される。カールは三十数年前に少女暴行殺人で有罪となった男で、病気のため仮釈放され、施設で最後の時を過ごしていた。カールは臨終の供述をしたいとジョーのインタビューに応じる。話を聴き、裁判記録を読むうちにジョーは事件に疑問を抱くようになり、真相を探り始めるが……。バリー賞など三冠、エドガー賞最優秀新人賞最終候補となった衝撃のデビュー作!

 

主人公のジョー・タルバート

は21歳。

ミネソタ大学の学生です。

 

アル中の母親と自閉症の弟

が住む家を離れ、

大学のそばのアパートで

一人暮らしを始めたばかり

なのですが、

 

安易な理由で選択した

授業の課題に、

思ってもいなかった

苦戦を強いられる

こととなります。

 

その課題とは、

身近な年輩者に

インタビューをし、

その人の伝記を書く

というものでした。

 

しかしジョーには

身近に年輩者がいません。

 

インタビューできる

対象人物として

ようやくたどり着いたのは、

 

なんと30数年前に

14歳の少女をレイプ殺人し、

その遺体を物置小屋で

焼いたとされる

元受刑者、

カール・アイヴァソンでした。

 

カールは終身刑に

処せられていましたが、

癌で余命数か月となったため、

 

仮釈放されて

老人ホームで最後の時を

過ごしていたのです。

 

ジョーはカールの元を訪ね、

インタビューを重ねます。

 

しかしジョーは、

目の前のカールが

そんな極悪殺人犯だ

ということに、

 

どうしても引っ掛かりを

覚えるのでした。

 

そこから、ジョーの本気の

闘いが始まります・・・。

 

 

 

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アレン・エスケンス 『償いの雪が降る』 さすがアメリカ!スケールの大きさは半端なく

 

息をもつかせぬ展開とは

このことかというぐらい、

もうページをめくる手

が止まりませんでした。

 

ジョーは自分とアル中の

母親との問題や、

自閉症の弟ジェレミーの心配、

 

ジェレミーを虐待する

母親の恋人ラリーに

対する憎しみを抱えつつ、

 

一方でアパートの隣に住む

女子大生ライラに

淡い恋心を抱き、

 

バイトをし、大学の単位や

学費の心配をするいった

普通の大学生の一面も

当然持ちながら、

 

それらの日常を

バックグラウンドに

物語は、ジョーが

インタビューする

元受刑者で末期がん患者

であるカール・アイヴァソン

の過去へと遡ります。

 

ヴェトナム戦争で

彼が受けた衝撃や

そこで形成された人格、

戦友ヴァージルとの深い友情。

 

そこからさらに、

カールが起こしたとされる

レイプ殺人事件の真相を

究明すべく、

 

その被害者である

当時14歳だった

クリスタル・ハーゲンと

継父ダグラス・ロックウッド、

 

そしてその息子

ダン・ロックウッドとの関係

やクリスタルの恋人

アンディ・フィッシャーのこと

へと迫ります。

 

もう本当に盛だくさんで、

飽きさせることなく、

どこを取っても目が離せない

事柄ばかりなのですが、

 

特に後半からの、

日記の暗号の解明や、

ジョーのサバイバルシーンには、

息を飲み手に汗にぎること

間違いなしです。

 

 

 

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アレン・エスケンス 『償いの雪が降る』 人との繋り方で人生は左右される

 

大なり小なり、

人は誰しも何かを背負って

生きているのだなぁと

痛感しました。

 

それが理不尽なもので

あろうと自業自得の結果であろうと、

 

まだそれが背負えるうちは

それと向き合い、

いつか昇華することもあり、

 

しかし背負っているものが

背負いきれなくなった時、

人は絶望を見、

この世に諦めをつけて

あの世に期待し、

 

この世で生きる意欲を

失っていくのでしょうか。

 

世知辛い世の中で、

そういうことは残念ながら

いくらでも耳にしてしまう

のが現状です。

 

しかし本書を読んでいると、

大学の単位取得のために

仕方なく首を突っ込むこと

になった他人の人生に対して、

 

ここまで真摯に関わっていく

ジョーという人物の描かれ方は

素晴らしく、

 

人は人を繋ぎ、人は人によって

救われるということが、

読む者を心から

安堵させてくれます。

 

凄惨なストーリーを随所に含み、

かなり過激な場面設定で

ありながら、

 

そういった暴力的な激しさ

だけに目を奪われることなく、

人の温かみをしっかり

感じさせてくれる小説であり、

 

生きることの意味を

じっくり教えてくれる小説

であると思いました。

 

最後は涙なしでは読めません。

 

アレン・エスケンス (著), 務台夏子 (翻訳)

 

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