池井戸潤【書評】半沢直樹 アルルカンと道化師「あらすじと感想」(講談社)

 

今回ご紹介する一冊は、

池井戸潤

『半沢直樹 アルルカンと道化師』

です。

 

半沢直樹シリーズの

第五弾です。

 

今年は以前の作品が

TVドラマで放映されていて

ドラマは七年ぶりと話題ですが、

 

小説としての半沢直樹も、

2014年の『銀翼のイカロス』

以来六年ぶりです。

 

この物語は、

『半沢直樹1オレたちバブル入行組』

の前日譚です。

 

融資課長時代の、

原点である銀行員としての

半沢が描かれます。

 

敵役の支店長浅野匡や、

同期で融資部企画

グループ調査役の渡真利忍

といった仲間たちも登場します。

 

 

 

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池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』 仙波工藝社買収

 

★★★「半沢直樹」シリーズ6年ぶりとなる待望の最新作!★★★

東京中央銀行大阪西支店の融資課長・半沢直樹のもとにとある案件が持ち込まれる。大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収したいというのだ。大阪営業本部による強引な買収工作に抵抗する半沢だったが、やがて背後にひそむ秘密の存在に気づく。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどりついた驚愕の真実とは――。

***

半沢直樹が絵画に秘められた謎を解く――。江戸川乱歩賞作家・池井戸潤の真骨頂ミステリー!
「やられたら、倍返しだ」。
明かされる真実に胸が熱くなる、シリーズの原点。
大ヒットドラマ「半沢直樹」シリーズ待望の最新刊、ついに登場!

 

 

東京中央銀行

大阪西支店融資課長、

半沢直樹が担当する

出版社である

仙波工藝社を買収したい

という企業が現れます。

 

それは、

インターネット関連の

新進企業である

ジャッカルでした。

 

社長である田沼時矢が

美術好きで絵画のコレクター

でもあり、

とくに画家である

仁科譲の作品については

圧倒的なコレクションを

誇っています。

 

来春、

美術館をオープンするときに

仁科譲作品は

目玉となっています。

 

専門誌を出している

仙波工藝社は

同社にとって魅力的

なのかもしれませんが

買収理由の決め手は

はっきりしません。

 

社長の仙波友之は

買収に反対し

半沢に融資をお願いしたい

と言います。

 

しかし、

半沢の上司である

浅野をはじめ

業務統括部長の

宝田信介は強引に

買収を進めてきます。

 

半沢は仙波工藝社の

担保になるような資産

を探すことになります。

 

友之社長の叔母である

堂島政子がビルを所有しており、

そのビルを担保に

お願いしようとするのですが

政子はこれを断ります。

 

仙波と堂島の間には

深い深い因縁の物語

があったのです。

 

 

 

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池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』 お祭り委員会

 

東京中央銀行大阪西支店

の屋上には、

赤い社があります。

 

東京中央稲荷と

名づけられたその社に

月初め行員全員で

お参りするのは

大阪ならではの慣習です。

 

それとともに、

主要取引先を集めて

パーティーが催されます。

 

この祭りに合わせて

取引先に営業支援を

お願いするのが定例

となっていました。

 

その準備のための

お祭り委員会は

重要な会なのですが、

本来出席すべきである

支店長の浅野は

所用があると言って

代理に半沢を参加させます。

 

半沢は浅野の欠席を詫びますが、

取引先をなんとも

思っていない浅野の態度に

皆激怒し、

委員会の会長である

本居竹清は企業側から

融資の打ち切りを

言い渡します。

 

「逆選別」略して

逆選と呼ばれる行為で

百億円近くの融資が

一気に吹き飛びます。

 

本来は浅野が

出席しなかったために

起きた失態ですが、

浅野はこの責任をすべて

半沢に擦り付けようとします。

 

かくして半沢を取り調べる

査問委員会が開かれること

になるのですが、

査問委員長を務めるのは

本部時代から

対立している宝田でした。

 

半沢はいかにして

この査問委員会を

乗り越えるのか。

 

 

 

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池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』 アルルカンとピエロ

 

仙波工藝社の壁には

「アルルカン」が

かかっています。

 

ピエロとともに

伝統的なイタリア喜劇に

登場する人気の

キャラクターです。

 

この絵は画家であった

仁科譲のリトグラフで、

作中で大きな意味を

持つものです。

 

そして絵画の裏には、

二人の画家が夢見た

切ないストーリーが

ありました。

 

半沢はこの絵を巡る様々な

謎を解き明かしていきます。

 

最終的に堂島政子から

担保を得ることができた

半沢ですが、

融資部は難癖をつけ

買収を押し通してきます。

 

この買収案件を銀行全店に

広報するモデルケースとして

調整していました。

 

理不尽な理由で

融資が受けられない

半沢は言います。

「基本は性善説。

だが――やられたら倍返しだ」

と。

 

仙波社長は買収を拒否し、

その責任がまたしても

半沢に降りかかります。

 

人事も絡み半沢は

窮地に立たされます。

 

しかし、何のために、

誰のために仕事をするのか、

 

ぶれない半沢の精神は

人を動かします。

 

全店会議で買収案件の

成果発表が行われる、

 

そのトリを飾るのは

買収が成立しなかった

半沢でした。

 

 

 

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池井戸潤『半沢直樹 アルルカンと道化師』 一級のエンターテイメント

 

まず、半沢直樹シリーズ

という世界観が

しっかりとあります。

 

そこに大阪という街を舞台に、

魅力的な登場人物たち

との人情溢れる人間模様

が描かれます。

 

さらに取引先の会社に

まつわる因縁の物語があり、

 

「アルルカンとピエロ」

という絵画にまつわる

二人の画家を目指した

青年のストーリーが加わり

物語に厚みがでます。

 

半沢がいくつもの謎を

解き明かすミステリーの

要素も楽しめます。

 

そして最後には鮮やかな

「倍返し」が展開され

読後感もすっきりです。

 

著者の見事な構成力で、

いつもながら

一気読み必死です。

 

 

 

 

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