寺地はるな『今日のハチミツ、あしたの私』あらすじと感想!おすすめ文庫本

 

今回ご紹介する一冊は、

寺地はるな(てらち はるな)

『今日のハチミツ、あしたの私』

です。

 

先日、偶然にも、

ハチミツをつくる部活

があるという高校の様子を

テレビで観たばかりでした。

 

彼女たちのお話は

とても興味深く、

言われてみれば

当然のことなのですが、

 

蜜蜂の行動範囲というのは

巣から2~3kmほどで、

蜜蜂はその範囲に

咲いている花の蜜を

集めてくるわけですね。

 

そうすると、

そこの巣で作られた

ハチミツというのは、

その周辺に咲く花の蜜

から作られるわけで、

 

ハチミツというのは、

そのハチミツの元

となる蜜を運んできた

蜜蜂たちが住んでいた

地元の味ということ

になるわけです。

 

部活でハチミツを

つくっている高校生たちは、

環境破壊によって

地元の植物が減っているために、

 

蜜蜂の数も減少していること

を嘆き、

蜜蜂が生きやすい地域

というのは、結局、

人間が幸せに暮らせる地域

というものにつながっている

と考えたようでした。

 

ハチミツづくりを通じて、

人間の幸せについて

社会の人々に発信していきたい

と語っていた彼女たちの

生き生きとした顔が、

 

彼女たちとはまったく関係

のない本書からも

浮かんでくるようで、

ハチミツは今、

 

私のちょっとした

マイブームになっています。

 

 

 

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寺地はるな『今日のハチミツ、あしたの私』 あらすじ

 

 

蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる──。
「明日なんて来なければいい」と思っていた中学生のころ、
碧は見知らぬ女の人から小さな蜂蜜の瓶をもらった。
それから十六年、三十歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園の手伝いを始めることに。
頼りない恋人の安西、養蜂家の黒江とその娘の朝花、
スナックのママをしているあざみさん……
さまざまな人と出会う、かけがえのない日々。
心ふるえる長篇小説。

 

 

中学の時、いじめを受けて

生きる意味を

失いかけていた碧は、

 

ある日見知らぬ女性から

声をかけられ、

蜂蜜を舐めさせられます。

 

それはその人が作った

蜂蜜のようで

「蜂蜜をもうひと匙足せば、たぶんあなたの明日は今日より良くなるから」

 

とその人は言い残し、

蜂蜜をひと瓶、

碧に手渡すとその場を

去っていきました。

 

そのことが忘れられず、

碧は食品会社に就職。

 

30歳になる現在は、

同棲を始めて2年になる

安西という彼氏もいます。

 

しかし、

結婚へとその暮らしが

いまだ結びついていかないのは、

安西の生い立ちや人間性の

問題などもあるわけですが、

 

仕事に就いてもちょっと

嫌なことがあると

すぐに辞めてしまって

長続きしたことの

なかった安西は、

ついに実家に帰ると

言い出します。

 

実家の家業を手伝うこと

にするから、つ

いてきてほしいと

懇願された碧は、

 

これをプロポーズと受け取り、

仕事も辞め、

アパートも引き払い、

安西の実家で共に暮らすべく

安西の故郷へと向かいます。

 

しかし、なんということか、

安西は何一つ碧のことを

親に話してはいないのでした。

 

いきなりのことに父親は

碧を認めるはずもなく・・・、

しかしそこから碧の人生が

大きく動き始めます。

 

 

 

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寺地はるな『今日のハチミツ、あしたの私』 包容力は誰かの未来を明るくする

 

30歳。

結婚を心に決めた彼氏、

安西の弱すぎる心と

身勝手な態度のせいで、

 

何も知らない安西の父親に

無能呼ばわりされて

奮起した碧が、

物語の主人公なのですが、

 

個人的には「スナック あざみ」

の店主あざみさんが

大好きです。

 

碧は、あざみさんに

よって救われ、

この町で生きていく気持ち

にもなれました。

 

特別に、何をすごいことを

してもらったというわけ

ではないのですが、

 

つらい時や何かあった時に、

ふっと立ち寄りたくなる場所、

安心したくなる居場所、

それが、あざみさんが

いつもいる

「スナック あざみ」

なのです。

 

あざみさんの適度な包容力

というのでしょうか、

とても憧れます。

 

そして、この物語に

この人なくしてはありえない、

養蜂の黒江さん。

 

彼の渋くて怖い

嫌われキャラも強烈で、

非常に魅力をそそられますが、

 

その黒江さんに、

体当たりで果敢に

挑んでいく碧もまた、

ある意味、

包容力でもって、

黒江さんを変えていった

ように思います。

 

全く何の縁もなかった

赤の他人同志が、

どうしてもそれを

しなければならなかった

理由はないのに、

 

こうして繋がって

誰かの未来を明るくし合って

いくことは、

本当に素晴らしいことですね。

 

 

 

 

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寺地はるな『今日のハチミツ、あしたの私』 知られざる蜜蜂の生態とハチミツの魅力が満載

 

生涯かけて、

一つのことを

突き詰めるという、

その対象がある人は

どんなに幸せだろう

と思います。

 

好きだから、

興味を持ったから、

そのことにこだわって

突き詰めていくのでしょうが、

 

ましてや、それを

仕事にまでできている人は、

一体どのくらいいるでしょう。

 

碧はまさしく

そのひと握りの人たちの中に

入ったわけですが、

 

その碧だって

最初は何も知らないところ

からのスタートでした。

 

しかも最初から

ハチミツ作りを

目指していたわけではなく、

 

偶然が偶然を呼んで、

それを自分のものに

するべく行動したからこそ、

そうなったわけです。

 

本書には、碧が考案した、

ハチミツを使ったレシピ

の数々があちこちに登場します。

 

それを活字で読んで

想像するだけでも、

口の中がじんわりと甘く、

とろりとした美味しさに

占められて、

 

まったく幸せな気分に

浸れてしまうのですが、

その効能というのが

またすごいのですね。

 

ハチミツは健康によさそう

だとはなんとなくわかっていても、

 

具体的にどう体によいのか

と説明されると、

その万能性に感心させられ、

 

さらに、そのハチミツを

もたらしてくれる

蜜蜂の生態について、

それに触れている場面が

また随所に出てくるのですね。

 

これがもう私には

たまりませんでした。

 

自然界に生きる、

蜜蜂という昆虫の一つの種の、

知識として知らなった

彼等の生き様を読むと、

 

感動で胸が熱くなったり、

涙が出てしまうような思い

にも駆られました。

 

 

 

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