野中ともそ『宇宙でいちばんあかるい屋根』小説あらすじと感想!映画化おすすめ本

 

今回ご紹介する一冊は、

野中 ともそ

『宇宙でいちばんあかるい屋根』

です。

 

小説すばる新人賞を

受賞した野中ともそさん

の作品です。

 

刊行は2003年ですが、

映画やドラマで活躍中の

清原果耶さんと、

誰もが知る女優の

桃井かおりさんが演じる

映画化作品として

いま注目を集めています。

 

 

 

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野中ともそ『宇宙でいちばんあかるい屋根』 書道教室の屋上で出会った星ばあと中学生

 

 

「十四歳ってとても不便だ」平穏でも悩みはあって、時々息苦しくなる中学生のつばめは、満天の星が輝くある夜、派手な身なりで底意地の悪い、キックボードに乗ったあやしい老婆「星ばあ」と出会う。いつしか二人は、お互いの心のどこかに空いた穴を埋め合うように距離を縮めていく。
つばめの心をゆさぶる事件やほのかな恋の行方、最後に明かされる謎めいた星ばあの正体は?
ひと夏の大切な何かを探す、二人のキュートで愛おしい感動のファンタジードラマ。

『新聞記者』で話題をさらった藤井道人監督と、実力派の若手女優、清原果耶の主演を始めとする豪華キャスト陣により待望の映画化! 2020年9月に全国公開される『宇宙でいちばんあかるい屋根』オリジナル原作小説。

 

 

主人公のつばめは中学生。

 

星の輝く夜に、

通っている書道教室の屋上で

ひとりのおばあさんと

出会います。

 

どこからどう見ても

大人のはずなのに、

つばめに食べ物を

くすねてくるよう

お願いするおばあさん。

 

口を開けば嫌味と

ダメ出しのオンパレード、

そうかと思えば空を飛べる

だとか変なことを言いだします。

 

でもときどき、

とても本質的なこと

を言ったり、

つばめのことを

勇気づけてくれたり。

 

そんなおばあさんを、

つばめは「星バァ」と

名付けて仲良く

なっていきます。

 

つばめの父親は、

つばめが生まれてすぐに離婚。

 

3歳のときに

再婚してからは、

家族3人揃って

「家族らしくいよう」

と努力してきました。

 

それは見せかけの家族

のように見え、

つばめは本当の自分を

出し切れずに毎日を

過ごしてきました。

 

それは学校でも同じで、

仲の良いクラスメイトにも

どこか自分を

さらけ出せない日々。

 

そんなつばめに、

星バァは何も取り繕わず

ありのまま接してきます。

 

その様子に、つばめも

少しづつ自分を

出せるようになり、

強くなっていくのでした。

 

 

 

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野中ともそ『宇宙でいちばんあかるい屋根』 中学生らしい文体の辿々しさ

 

本作品は、中学生である

主人公の目線で書かれています。

 

あえて漢字ではなく

ひらがな表記されてる

箇所があったり、

体言止めや倒置法など

口語体に近い物言い

だったりします。

 

描写も、さすがに本物の

中学生ならここまでは

なかなか書けないだろう

というレベルではありますが、

 

表現レベルとしては

子供が理解できる程度

に抑えられています。

 

この中学生っぽさ、

まだボキャブラリーが

あまり多くなく、

 

しかも自分の気持ちを

どう表現して良いか

分からない中での戸惑いが、

 

辿々しい表現として

表れているように感じました。

 

情緒豊かな描写表現が

読みたい方には

物足りないかもしれません。

 

その分、読み手自身が

子供の頃を振り返りながら

共感する、というには

良い形だと思います。

 

言葉にできない思いを

何とか言葉にして

綴ったところに共感する

読者が意外に多かったと、

あとがきにも書かれていました。

 

 

 

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野中ともそ『宇宙でいちばんあかるい屋根』 自分をまるごと受け入れてもらえる安心感

 

個人的に、読んでいて

印象に残ったシーンが

あります。

 

主人公が星バァから

頼まれたミッションを

こなしていく中で、

クラスメイトから言われた

セリフに気づきを

得るシーンです。

 

主人公は人付き合いが

あまり得意でなく、

仲の良いクラスメイト

でさえも距離感を縮めきれず、

自分を出せずにいました。

 

ですがそんな主人公が

夏休みを境に変わったこと

を感じ取ったクラスメイトは

主人公に

「今まではアンニュイな雰囲気だったけど、今は生き生きしている」

というようなことを

言います。

 

そのセリフに、主人公は

「今まで一定の距離感を取っていたことを気付いていて、まるごと受け入れてくれていたんだ」

と気付きます。

 

クラスメイトの優しさと、

その優しさに気付いた

主人公の安心ぶりに、

読んでいて心が

温かくなりました。

 

読み返すと、主人公が

お父さんやその再婚相手

のお母さんと話すシーンでも、

 

「受け入れられている安心感」

を感じ取れるような

描写があります。

 

ストーリーの前半では、

まるで上辺だけを

取り繕うような会話シーン

もありましたが、

 

実はお父さんもお母さんも

真剣に向き合おうと

していたというような

エピソードが出てきます。

 

悩みを抱え、誰かに

相談することも出来ず、

自分に自信を持てなかった主人公が、

 

ありのままの自分でいいんだ

と気付く瞬間。

 

派手な描かれ方は

していませんが、

何となく嬉しくなったシーンです。

 

 

 

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野中ともそ『宇宙でいちばんあかるい屋根』 星バァは存在するのか?

 

こういうストーリーに

ありがちなのが、

主人公の前に突然現れた人物

が実は実在しておらず、

主人公にしか見えていない

という設定。

 

本作品も、星バァは

もしかしたら、

何か心残りを残したまま

亡くなってしまった人

なのではないかと、

途中からは思いながら

読んでいました。

 

おそらく著者自身も、

読み手はそう予想するだろう

と考えながらストーリーを

綴っていったのではないか

と思います。

 

実際、それを匂わせるような

描写もありました。

 

その謎は、

最後の最後に分かります。

 

でも、星バァが実在しても

しなくてもいいや、

と思うくらいに、

主人公自身がだんだん

成長していきます。

 

その様子を追いかけつつ、

最後の種明かしを楽しみ

にしてほしいなと思います。

 

 

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