今回ご紹介する一冊は、
リー・チャイルド 著
『葬られた勲章』です。
主人公のジャック・リーチャーは
頭の中で11の項目を復唱していた。
場違いな服装、前方に固定された視線、
祈りのつぶやき、、、。
そして、目の前にいる、
その全ての特徴を備える女から
目を離す事ができなくなっていた。
なぜなら、それは自爆テロを
起こす人間の特徴だったからー。
リーチャーの目の前で
起こった凄惨な事件は、
彼が巻き込まれていく
壮大な事件の序章に過ぎなかった。
連邦捜査官、FBI、遺族、
謎の美女、、、。
彼に近づいてくる様々な人物
とのやり取りの中で、
リーチャーはこの事件を
深く知っていく。
そして、この事件の裏に潜む
黒幕と激しい闘いを
繰り広げるのだった。
だいたい毎年一作品発表されていく
ジャック・リーチャーシリーズ
の13作品目にして傑作といわれる
『葬られた勲章』。
読んでみた感想を書いていきます。
目次
リー・チャイルド『葬られた勲章』 観察力、洞察力、推理力
深夜、ニューヨークの地下鉄。ジャック・リーチャーの目前で絶命した女は、国防総省に勤める民間の事務員だった。事情聴取を終えて、弟の警官と死の真相に迫ると、副大統領候補への指名も噂されているサンソム下院議員の存在が浮かび上がる。謎が謎を呼ぶ展開に一気読み必至の傑作アクション・サスペンス。
アマゾンプライムで新作が進行中のジャック・リーチャー・シリーズ、待望の最新邦訳!
主人公のジャック・リーチャーは
元憲兵隊指揮官であり、
鋭い観察力、洞察力、
推理力を兼ね備えています。
本作品ではその能力を
遺憾なく発揮し、
多くの不利な状況を覆し、
巨大な組織たちと対峙していきます。
例えば、この物語のキモとなる、
あるデータの有り拠。
多くの人間が、
リーチャーが手にしていると考え、
彼と接触し、取引を持ちかけたり
脅しつけたりすることで、
そのデータを手に入れようとします。
リーチャーの凄いところは、
そんな恐ろしい人達に対して、
電気屋で購入したただのUSB
を見せつけ、
「これにそのデータが入っている」
とハッタリをかけるのです。
そしてこのデータを
追いかけてくる人間と話をし、
その中で自分が持っている
USBの中にどのようなデータが
入っているはずだと思っているか
を探りだしていくのです。
他にも、相手が電話を
かけてくる時間の間隔から、
相手が自分の位置を
どのタイミングで掴んでいるか
を計算することで、
逆に相手の居場所を見つけたり、
相手がした昔話から、
今の相手がどんな戦術を用いて
自分を追い詰めようとするか
を推測したりします。
読んだ後は、自分も頭が良くなったり、
鋭くなった気になれました笑
ぜひ読んでみて、面白いと思った所を、
私生活でも参考に
してみてください。
そうすることで、
意外と本格的な探偵ごっこ
を楽しめると思います笑
リー・チャイルド『葬られた勲章』 ハラハラドキドキの連続
上下巻構成の本作品における
最大の盛り上がりと言えるのが、
下巻の謎解きパートです。
推理物の謎解きといえば、
犯人が誰か、どうやったのか、
証拠は何か、といったものを
明らかにし、逮捕するものが多いです。
しかし、本作品ではあらゆる
小さな要素から、
見事に事件の全容を
明らかにした後は、
元憲兵の能力を生かして
黒幕とアクションを
繰り広げるのです。
狡猾な犯人との臨場感溢れる
駆け引きはとても
見応えがありました。
お互いの手札のカードを
互いに切っていくように
火花を散らし、
更に終盤における切り札の
ぶつかり合いを読む時には、
本を握る手と肩に自然と力が
入ってしまいました。
敵は組織を形成しています。
対して、リーチャーは
たった一人で立ち向かわなければ
なりません。
彼は敵対する人間一人一人に対して、
身に付けてきた技術と多くの知恵
をぶつけることで撃破していきます。
そして勝つのは不可能と言われた
相手を、一つまた一つと
追い詰めていくのです。
リーチャーのかっこよさと
頼もしさがふんだんに
描かれていて、
読む人を虜にしてくれます。
もしこの作品を読んで、
他のジャック・リーチャーシリーズ
も読もうと決めた人がいるなら、
その中には少なからず、
この終盤の盛り上がりの、
リーチャーの華麗な手際に
魅了されたからだという人が
居ると思います。
それぐらい面白かったです。
リー・チャイルド『葬られた勲章』 小ネタ
本格的なミステリーとして、
骨太な魅力のある本作品ですが、
更に違ったテイストの魅力として、
小ネタがとても面白い事が
挙げられます。
序文に書いてある、
自爆テロを起こす人間に
みられる11項目の特徴や、
様々な種類の銃の長所と短所、
人の追跡の仕方など、
知恵が絞られているなぁと
感じてとても面白かったです。
特に面白かったのは、
ニューヨーク市で一晩50ドルで
熟睡する方法です。
余談ですが、50ドルといえば
日本円で5000円強の価値になりますが、
それだけ払って一晩泊まれるのが
凄いことになるなんて、
ニューヨークの物価は
本当に高いんですね笑
さて、主人公はどうやって
そんなに格安でホテルに泊まるのか。
まずはフロントに行き、
空いてる部屋があるかを尋ねます。
そして部屋の様子を
確認したいと言い、
フロント係に部屋まで
案内してもらいます。
フロント係が部屋を開けて、
主人公は内装を確認し、
フロント係に50ドルを
渡して目配せします。
最初は何のことかと
目を丸くしますが、
意図を理解すると
明日の7時30分までには
退出するように言って、
50ドルを自分の懐に収めます。
彼はこうして、
たった50ドルでニューヨーク市で
一晩熟睡することができたのです。
真似したくなるほどに
面白い手口だと思いませんか?笑
こんな小ネタがたくさんあるので、
読んでいて退屈を感じることが
少なかったのも、
本作品の魅力の一つだと思いました。
自分の生きている世界とは違う、
この世界の裏側のような所で、
リーチャーみたいな人が知恵を
絞って暮らしている浮浪者が
居るんじゃないかなという期待
のような幸せな空想を
抱かせてくれました。
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