【感想】吉田修一『湖の女たち』あらすじと書評!(新潮社)

 

今回ご紹介する一冊は、

吉田修一

『湖の女たち』です。

 

著者の吉田修一氏は

芥川賞など様々な賞を受賞され、

作品も映画化されたりと

売れっ子作家であります。

 

作品の印象から犯罪小説だけ

とはいいきれませんが

何かしら犯罪が絡むものが

最近多い気がします。

 

そのせいもあって(?)

嫌ミスの王と勝手に

呼ばせてもらっています。

 

問題を投げかけられたり、

共感させられたり、

映像から入ったり

吉田氏の作品に触れる方法や

思うところはたくさんあるかと

思いますが

とっかかりの一つとして

この様な感想もあったなと

思い出していただけたら嬉しいです。

 

 

 

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吉田修一『湖の女たち』 あらすじ

 

『悪人』『怒り』を超える愛の衝撃! 吉田修一史上「最悪の罪」と対峙せよ。琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が殺された。捜査で出会った男と女―謎が広がり深まる中、刑事と容疑者だった二人は、離れられなくなっていく。一方、事件を取材する記者は、死亡した男の過去に興味を抱き旧満州を訪ねるが……。昭和から令和へ、日本人が心の底に堆積させた「原罪」を炙りだす、慟哭の長編ミステリ。

 

 

湖畔付近の介護施設で

100才にもなる老人が殺害される。

 

捜査で出会い関係を持つ男女、

犯人を追ううちに広がる謎の波紋。

 

また事件を多方面から追う記者

にも違うほころびが見つかる。

 

一つの事件が男女の偏愛を生み

捜査の執着と執念を掘り起こし

社会のしがらみに対する諦めと慣れ

これらが織り交ざった内容です。

 

 

 

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吉田修一『湖の女たち』 男女の機微

 

吉田氏の得意とするところです。

性描写が特異でもあるので

意見も分かれるところですが、

圭介と佳代の関係を

書いているところは

明らかに官能小説です。

 

大半の人間は誰かに従うことで安心する。ー  大きな存在の下で生きることを望んでいる。

 

この一文に尽きます。

 

作品に登場する圭介と佳代は

追突事故で捜査とは別に

再会するわけですが

後にこの時に惹かれたと

告げあうのです。

 

二人は圭介を主とし佳代は

隷属する絡み方をしますが

タイトルから女としての

心情を思うと誰でも持ちうる

気持ちだと思うのです。

 

誰かに対する言葉ひとつとっても

常に選択を迫られています。

決めなければならないのです。

 

その選択によっては

その後の事象に責任を

もたなければならなくなります。

 

これはジャン・ジュネの言葉から

得たことですが

吉田氏はこの選択の責任から

逃れたがっている人物として

佳代を描いたと解釈します。

 

確かに楽です。

回帰本能に近いとすら思いますが

それにしては佳代は若いので

そこまで選択決定を

積み重ねてきている程

疲れているのかという疑問

はありますが、

女はその点で優遇されているな

とも思うのです。

 

羞恥も尊厳も捨てて目の前に現れた

憧れの天狗が「楽」という快楽を

くれたのにあまりにも

突然に終わりにされたら

佳代でなくても

落胆の気持ちは深いです。

 

明らかに言葉通り「ずるい」のです。

 

後半佳代は挨拶を交わす程度の

異性と出会いますが

もうあの蜜を求めていなければいいな、

なんの根拠もないけど

その人は天狗ではない気がする

と言いたくなりました。

 

 

 

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吉田修一『湖の女たち』 湖

 

印象深い記憶に残る背景として

効果的に使われています。

 

季節的に寒々しい描写が

美しいだけでなく

厳しさを感じさせて凛烈なさに

読む側も気持ちが律するようです。

 

世界はただ完璧なほどに美しかった

 

本当に美しい風景を描いているのと

間違いだと理解しているのに

抗えない何かを神聖化するような

そんな力強さを感じました。

 

だからこそ松江は涙し、

知りながら止める事が

できなかったのだと

思い当たりました。

 

平安の貴族たちを狂わせた色を世界は惜しむことなく

 

まるで一個性を持つかの様に

湖面は多様な変化を禁断の色を

持ってみせつけます。

 

八塩という先に引用した色とは

対になる色合いを

表現することによって

鮮やかでありながら

揺るがない信念のために

さらに濁ることのない

 

さながら人間の多面性を薄い線で

堺なく訴えていると解釈しました。

 

 

 

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吉田修一『湖の女たち』 動機

 

全く思いもよらぬところから

ミステリーは

紐解かれていくわけですが

ネタバレになってしまうのと

どうしても違うところが

気になってしまったので

そちらに目を向けてみます。

 

罪を償わなければならないのは、事件や犯罪を犯したからではない。

金や権力を自分が持たなかったからなのだ。

 

こんなことがまかり通ったら

法が持つ意味も正義も倫理も

なくなってしまう。

 

動機は自分だけが納得のいく理由

であって

共感したところで

何も変えられないために

法があると思っています。

 

実際はこの通りなのだとしたら

怖いことだなとぞっとしました。

 

 

 

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吉田修一『湖の女たち』 読後の感想

 

吉田氏の頭には

常に何枚かの絵画があって

それに沿った物語を

描いてくれているのだなと

今回特に思いました。

 

美しい絵画が『湖の女たち』を

苦い記憶に留めて

ただの官能小説だけ

にはしていないと感じるのです。

 

 

 

 

 

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