目次
『首ざぶとん』(著者:朱雀門 出/すざくもん いづる)
華道教室に通うまりかの先生・龍彦の趣味は、なんと怪談蒐集。龍彦に惹かれ蒐集を手伝うまりかだったが、図らずも怪異に巻き込まれてしまう…。新たな怪談の旗手が描く、日常に潜む怪異の世界。傑作連作短編集!
華道の先生とその生徒が
怪奇な世界に引きずり込まれていく短編集です。
京都を舞台にその物語は展開されていきます。
日常に潜む犯してはいけないタブーを
私たちはいつの間にか犯してしまっているかもしれない、
日常から非日常へ足を踏み入れて
しまったらどうなってしまうのか、
そんな恐怖が描かれています。
つい何気なく言ってはいけない言葉を
言ってしまったらどんな痛い目にあうか
ゾワッとじわじわ恐怖が這い上がってきます。
「おざぶ・・・・・」
この続きは本書で確かめてみてください。
『青蛙堂鬼談』(著者:岡本 綺堂/おかもと きどう)
夜ごと人間の血を舐る一本足の美女、蝦蟇に祈祷をするうら若き妻、井戸の底にひそむ美少年、そして夜店で買った目隠しされた猿の面をめぐる怪異――。ひとところに集められた男女が披露する百物語形式の怪談十二篇に、附録として単行本未収載の短篇二篇を添える。
青蛙堂の主人が集めた人たちが
怪談を順番に話していく百物語形式を
とっているお話です。
大正時代に発表されたものですが、
文章は難しくなくすんなりと
読み進めることができます。
「龍馬の池」は心霊写真のお話です。
今の時代でも心霊写真は話題になるもの
ですが綺堂が書く時代にも、
霊にまつわる写真はあったのだと実感します。
全編通して語り口調は穏やかで
まるで昔話を聞いているようです。
真相や謎が解明されることはないのですが、
そのことが情緒や余韻に浸れる
読後感につながっているのかもしれません。
『ぼっけえ、きょうてえ』(著者:岩井 志麻子)
「教えたら旦那さんほんまに寝られんよになる。……この先ずっとな」時は明治、岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた……。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。
全編岡山弁で語られる短編集
『ぼっけえ、きょうてえ』は岡山の方言で
「とても、怖い」という意味です。
「きょうてぇ夢を見る?」と
岡山弁で話す女郎の語り口で物語は始まります。
女郎が問われるままに客に語る自分の出生の秘密、
両親の村八分など聞いて
不気味さと不快感が増していきます。
この表題作『ぼっけえ、きょうてえ』の他にも
田舎の息詰まるような閉塞感と陰湿さ、
近親相姦などリアルな描写で描かれています。
対して風景などの描写は美しく描かれており、
人の陰湿さと風景の美しさの対比が見事で
物語の闇をみごとに際立たせています。
ねっとり陰湿で嫌味で闇な世界を体験したい方は
ぜひとも読むことをお勧めします。
『仄暗い水の底から』(著書:鈴木 光司)
巨大都市の欲望を呑みつくす圧倒的な〈水たまり〉東京湾。ゴミ、汚物、夢、憎悪……あらゆる残骸が堆積する湾岸の〈埋立地〉。この不安定な領域に浮かんでは消えていく不可思議な出来事。実は皆が知っているのだ……海が邪悪を胎んでしまったことを。「リング」「らせん」「ループ」の著者が筆力を尽くし、恐怖と感動を呼ぶカルトホラーの傑作。
「リング」というタイトルは、
誰でも一度は聞いたことがある
のではないでしょうか。
リングもゾクゾクと怖いですが、
この『仄暗い水の底から』も
期待を裏切らない恐怖
に満ち溢れたものになっています。
「水」にまつわる短編集で
「水道水の水」や「湖」など
身近な「水」がものがテーマと
なっていますので、
イメージがしやすく怖さ倍増間違いなしです。
夏は特に水とかかわる機会が多くなります。
映画の原作ともなった
「浮遊する水」は
「貯水槽」「女の子」「死」
がキーワードとなります。
このキーワードだけでも
不気味さを醸し出しています。
ジワジワと迫る恐怖感を
本書でぜひ体験してみてください。
『ほぼ日の怪談。』(著者:ほぼ日刊イトイ新聞)
ウェブサイトほぼ日刊イトイ新聞の、人気連載のひとつです。読者のみなさんから、「自分が経験した」または「経験した本人から直接聞いた」怪談のみ、と募集して、夏に期間限定で更新しています。2004年から連載し、すでに掲載数は500を超えました。怪談好きなファンからは毎年の連載開始をたのしみに待たれている一方、こわいので絶対読みません、と宣言されることもあり、好きと苦手がはっきり分かれる、「ほぼ日」の中ではめずらしい連載です。
「ほぼ日刊イトイ新聞」で
募集された怪談を集めた作品です。
日常で私たちが遭遇するであろう出来事が満載で、
タイトル「私からの留守番電話」では
「いや、そこで聞いちゃだめだよね、でも聞きたいよね」
と突っ込みながらも読みすすめてしまい、
投稿者と同じ体験をしたようになり、
携帯電話の留守電を再生するときは
思い出してしまうに違いない。
と思ってしまいます。
ひとつひとつ短くさらりと読むことができますが、
その淡々とした文章から不気味さ、
気持ち悪さが感じられ、
なんとも読後感がすっきりしない気色の悪さです。
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