中村文則『逃亡者』あらすじと感想!「理不尽」に立ち向かう姿勢に希望を抱く

 

「逃亡者」は、

中村文則さんの新聞の連載を書籍化した作品です。

中村文則さんは、

2005年に芥川賞を受賞している作家で、

海外の賞も受賞するなど国内でも

海外でも人気の作家になります。

この作品は、「悪魔の楽器」と呼ばれる

美しきトランペットを隠し持ち、

逃亡する主人公と、

そのトランペットにまつわる過去の話で構成されています。

そのトランペットは、第2次世界大戦時に、

ある作戦を不穏な成功に導いたとされる楽器で、

そのトランペットを巡って政治的な様々な思惑や主人公の思い、

過去のトランペットの所有者の意志が交差しています。

現代の政治問題から、宗教歴史問題まで

踏み込んでいる作品で、

現代の政治のあり方などについて、

深く考えさせられる作品でした。

 

 

スポンサーリンク

 

 

中村文則作品の醍醐味である「理不尽」について

 

「一週間後、君が生きている確率は4%だ」
突如始まった逃亡の日々。
男は、潜伏キリシタンの末裔に育てられた。

第二次大戦下、”熱狂””悪魔の楽器”と呼ばれ、ある作戦を不穏な成功に導いたとされる美しきトランペット。あらゆる理不尽が交錯する中、それを隠し持ち逃亡する男にはしかし、ある女性と交わした「約束」があったーー。
キリシタン迫害から第二次世界大戦、そして現代を貫く大いなる「意志」。中村文学の到達点。

信仰、戦争、愛ーー。
この小説には、
その全てが書かれている。

いつか書くと決めていた。ーー中村文則

 

中村文則作品の醍醐味は

「理不尽」に直面する主人公です。

過去の作品でも、政治や巨大な悪の団体、

宗教、戦争などの「理不尽」に

主人公は直面しています。

代表的な作品では、

「教団X」は宗教や性、悪について、

「土の中の子供」はあらがえない過去

について書かれています。

この作品でも「理不尽」は多く表現されており、

主人公やその他の登場人物は

「理不尽」に直面します。

物語の最初から、

複数の巨大な悪の人物や集団に直面して

逃走する主人公が書かれており、

個人で立ち向かうことができないほど

巨大な組織に対して抗っています。

その他にも、詐欺の様な制度で日本に留学して

貧しい生活を強いられ、

ヘイトスピーチに遭遇するベトナム人女性や、

日本政府のキリスト教の弾圧に立ち向かうが

虐待や殺害にあう隠れキリシタン

第二次世界大戦時のせいで

やりたい音楽ができない

「悪魔の楽器」のトランペット保有者、

などについての「理不尽」が書かれています。

登場人物がその「理不尽」に立ち向かう姿勢や

立ち向かうことで見えた希望によって、

少し前向きな思いになることがあり、

それは中村文則さんの作品の魅力だと思います。

 

 

スポンサーリンク

 

 

政治や社会問題の切込み

 

「逃亡者」では、

政治や社会問題について

深く切込んで書かれています。

「逃亡者」の主人公はジャーナリストで、

「戦争で稼ぐ人々」という本で有名になり、

戦争批判や政権批判の記事などを執筆していました。

しかし、その中でも政権批判の記事が

なかなか採用されなくなり、

別の記事を書くように言われるなど、

言論弾圧やSNSなどでの誹謗中傷

苦しんでいる姿が描かれています。

主人公に関係のあるベトナム人女性は、

日本への憧れから詐欺まがいの制度で

日本に留学してしまい、

貧困の生活を強いられます。

そして、その女性がヘイトスピーチの対象になり、

苦しむ姿が描かれています。

その他にも、政府に取り入ろうとする宗教団体や、

右翼や左翼などについてのSNSでの論争、

政治の黒い部分などが多く表現されています。

読者にこのままの日本の制度でいいのか

変えていかなければいけないのではないかと、

問いかけているように感じました。

 

 

スポンサーリンク

 

 

キリシタンの迫害と第二次世界大戦

 

「逃亡者」では、

豊臣秀吉や明治政府から迫害される

キリスト教徒の姿が描かれています。

キリスト教が広まれば、

危険なものになると言う建前で多くの人が

暴行を加えられる様子や、

殺害されている様子が出てきます。

学校の歴史の授業で学習した

キリスト教弾圧のことが

これほど残酷なものだったのかと驚きました。

そこでも明確な悪や理不尽さが如実に書かれており、

私が無事に生きていることへの安心感と日常への

感謝の感情が溢れてきました。

第二次世界大戦の描写は、

トランペット奏者の木村が体験した出来事を

中心に書かれています。

陸軍学校の理不尽さや戦争に対する反発からの葛藤、

フィリピンで体験した慰安婦などについての回想など、

戦争について再び深く考えさせられました。

これらの日本が過去に犯した残虐な歴史についての描写は、

迫力があり残酷さが強く心に刻まれるので、

学校の勉強では学べない大切なことを

読書を通じて学べたと思います。

 

 

 

この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓

 

 

 

スポンサーリンク

 

 

おすすめの記事