今回ご紹介する一冊は、
松岡 圭祐 著
『万能鑑定士Qの事件簿 0』
です。
シリーズ10周年を
記念して出版された
本作品は、
「0(ゼロ)」と銘打ち
前作までよりも
前のエピソードが
描かれています。
シリーズのファンも多く、
帰ってきたことに
喜ぶ声多数の作品です。
目次
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿0』 とある鑑定をきっかけに展開していくストーリー
シリーズ10周年記念、完全新作!
2009年、都内でバンクシー作とおぼしきステンシル画が見つかった。真贋判定を依頼された「万能鑑定士」の凜田莉子は、都庁に赴きその絵を鑑定。これにて一件落着かと思われたが、その場は序章に過ぎなかった――。ゴッホの真作、漢委奴国王印を巡る謎に次ぐ謎、そしてまさかの真実! 舞台は熱海、福岡、そして日本を飛び出しグアムまで! 再び帰ってきた莉子の知られざる大勝負。シリーズ最後にして最初、最大の事件に挑む!
主人公の凜田莉子は、
「万能鑑定士」を
名乗りつつも
ちょっと自分に自信を
持てない鑑定士。
ある日、凜田莉子の元に
ステンシル画の
真贋判定依頼が
舞い込みます。
正解がない中で
堅実な鑑定結果を披露し
一定の評価を得た莉子は、
そこでいくつもの
お誘いを受けます。
そのひとつ、
熱海のレプリカ博物館館主
からの鑑定依頼に乗るため
現地へ向かう莉子。
そこでの仕事を終えると、
次は福岡から
鑑定依頼が来ます。
次々に来る鑑定依頼。
自分自身の判断に
自信が持てないながらも、
求められれば放っておけない
性格の莉子は
正式な依頼であれば
すべて受けていきます。
ひとつひとつを
確実にこなし、
結論を出し切って
次に進んでいるはずなのですが、
どこか手落ちの感覚
が否めない。
ふと考えると目の前の
鑑定がひとつ前の判断と
どこかつながりが
あるように感じられる、
そんな現象が
あちこちで起きます。
「どこか見落としが
あるのではないか」
とまた自信を
なくしていく莉子。
そんな莉子の周りには、
顧客のために何とか
役に立ちたいと健気に
頑張る莉子を
応援する人がいます。
その人の言葉に
ヒントをもらい、
莉子は自らの行動で
この状況を打破し、
ひとつの真実に
たどり着きます。
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿0』 ネタが次から次へと出てくる面白さ
本作品は、
結末を推理市ながら
読み進めていく、
いわゆるミステリー小説
に分類されます。
ですが普通の
推理小説とは違い、
どれがメインの事件
なのかが分からないまま
話が進んでいきます。
これが読んでいて
歯がゆいようで、
でも新鮮で楽しく
読めたように思います。
例えば殺人事件なら、
メインの事件はもちろん
「殺人」であり
「この殺人の犯人を
探すのだな」
と分かります。
ですが本作品の場合、
次から次へと鑑定の話が
出て来るので
「どれがメイン事件なの?」
とつい戸惑いながら
読んでしまいます。
どれが結末に大きな影響
のある情報で、
どれは伏線レベル、
あるいは結末に
影響のない情報なのか。
それが読み進めないと
分からないように
なっています。
私自身がそうなのですが、
登場人物や出てくる情報を
覚えるのが苦手な人は
読みながら
「どれを覚えて
おけばいいのか」
と戸惑いながら
読むことになる
と思います。
ただ展開はサクサク進むので
とても読みやすいですし、
どれがメイン事件なのか
分からない所がまた
気が抜けなくて面白い、
というように捉えて
読めるのであれば、
殺人事件以上に
楽しめる作品だと
感じました。
松岡圭祐『万能鑑定士Qの事件簿0』 主人公の成長に自分も頑張ろうと思える作品
主人公は鑑定士として
活躍していますが、
何か鑑定士として
学校に通ったり学んだり
している過去はなく、
実地経験のみで
ここまできたという設定
で描かれています。
そのせいで莉子は
自分の鑑定になかなか
自信を持つことができず
「こんな私で顧客の役
に立てるのか」
といつも悩んでいます。
主人公のコントロール外で
起きた事件やトラブルでも
「私がきちんと
鑑定できていたら
防げたかもしれないのに」
と自分を責めてしまいます。
ですが、そんな主人公を
周りの人たちは励まします。
「あなたの経験と知識が
あれば大丈夫だ」
と応援する人もいれば、
「自信を持てないなら
自分で動けばいい、
裏付けをとればいい」と
具体的なアドバイスで
主人公に自信を持たせよう
とする人もいます。
こうした周りの人たち
のおかげで、
主人公は大胆に
動くことができ、
他の誰もがたどり
着けなかったような
真実にたどり着きます。
確かなスキルを
持っているはずなのに
自信を持てない主人公の姿は、
周りからの期待が
プレッシャーになっている
ような人なら自分を
重ねたくなると思います。
そしてそんな主人公が、
周りからの応援を得て
自分でその状況を
変えていく姿は
「自分もできる所まで
頑張ってみよう」
と思わせてくれます。
鑑定という、
自分が好きなことに
周りが見えなくなるほど
打ち込んでいる姿には、
「好きなことを仕事に
するっていいな」
とちょっと
うらやましくなるほどです。
作品を読みながら
主人公に励まされ、
読み終わった頃には
「自分も明日からまた頑張ろう、
やれるところまでやってみよう」
と思わせてくれる、
そんな作品になっている
と思います。
この記事を読んだ方はこちらもオススメです↓